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性を肯定することがウェルビーイングを高める、TENGAが挑んだ20年を辿る

2025.06.18

自分の性を受け入れ、快楽を得ることはウエルビーイングに繋がる。かつて“後ろめたく恥ずかしいこと”とされていたセルフプレジャーが表舞台に立ったのは、専用グッズを展開する『TENGA』の存在が大きい。2005年に創業してから20年、現在では73の国と地域で販売され、売上高115億円の企業に成長した。旗艦店『TENGA LAND』は、トレンドの最先端をいく商業施設・『東急プラザ原宿「ハラカド」』にあり、連日、多くの人で賑わっている。TENGAグループの製品は世界的に注目されており、現在、73の国と地域で展開。多くの国から出店の依頼が殺到している。前編ではビジネスについて、後編ではウエルビーイングについて、プロジェクト推進室・橘涼太さんに伺った。

株式会社TENGA プロジェクト推進室、橘涼太さん(左)と店舗事業部 部長、水谷佳史さん(右)。

性と向き合うことは、自分を大切にすること

「『TENGA LAND』がオープンして1年、国外のお客様からの問い合わせが増え、性を戒める文化で知られる国との商談ほか、セルフプレジャーの裾野の広がりを感じています」というのは、『TENGA』プロジェクト推進室・橘涼太さんだ。

セルフプレジャーグッズを展開するTENGAグループは、2005年の創業から躍進を続け、2023年に売上高100億円を突破。世界展開と並行して、国内の販売店舗も増え続けており、現在は2万3809店舗だという。

女性向けブランド『iroha』シリーズ含め、商品のバリエーションも多く、グループ総プロダクト数は1137個、それらはデザイン面でも評価され、世界3大デザイン賞のひとつ、ドイツの『Red Dot Design Award(レッドドット・デザイン賞)』を2012年から17回受賞(TENGA、iroha)している。

「セルフプレジャーグッズでは初の受賞です。2021年には『TENGA GEO』で、最高賞の“ベスト・オブ・ザ・ベスト”をいただきました。私たちのアイテムは、プロダクトとして美しく、さらに機能が高い。だからこそ、認められたのだと感じています」(橘さん・以下「」同)

TENGA社の創業からのミッションは、“性を表通りに誰もが楽しめるものに変えていく”であり、ここが揺らぐことはない。そこには、創業者・松本光一さんの狂おしいほどの情熱が反映されている。彼は、長く自動車整備士としてキャリアを積んできた。勤務先は長時間労働に加え、給料の未払いもあるという経営難の企業だったという。

「厳しい生活の中、精神的に追い詰められていくなかで、食や性がとても大切で、ここに人間の根源的欲求があると松本は気付いたのです。食欲については、多様な文化やサービス、製品があるのに、性欲のそれは、背徳的で淫猥なものしかない。それどころか、教育現場ほか公的な場では“ないもの”として扱われていることに、違和感を覚えます」

それもそのはず、TENGAが登場するまで、アダルトグッズはアンダーグラウンドな存在だった。セルフプレジャーグッズは、男女用ともに、性器を模したグロテスクなデザインのみ。おそらく、ユーザーは使用した後、虚しく、そして恥ずかしくなり、自分を否定したくなってしまうことも想像できる。

「安全性と製造責任も不透明でした。セルフプレジャーグッズを使用するところは、生命にも関わる性器です。それにもかかわらず、メーカー名、問い合わせ先などもなく、安全認証を得ていないものがほとんど。それを知った松本は、安心・安全に使えるセルフプレジャーグッズの開発に取り組み始めたのです」

彼が目指したのは、“一般プロダクトとしてのアダルトグッズ”だ。“この世にない”ジャンルをゼロから開拓することは、非常に難しい。寝食を忘れるほど没頭し、3年近い準備期間を経て、TENGA5種類を販売する。

「当時、アダルトグッズは月に5000個売れればヒットと言われていましたが、TENGAは1年間で100万個を販売しました。この大ヒットにより、生活に浸透する定番のアイテムとしての地位を確立します」

松本さんの執念とも言える開発の背景については、6月20日より開催される、TENGA20周年記念企画 TENGA誕生の足跡、開発者・松本光一の半生を辿る展覧会 『松本光一展』に詳しい。ひとりで製品開発に没頭した開発デスク、図面、道具、メモなど“この世にない”アイテムを生み出す思考をたどることができる。

新商品開発を進めるうえで、マーケティングはしない

セルフプレジャーに特化した製品は、ユーザーと使い方で無限の広がりがある。だからこそ、TENGAは新製品開発に余念がない。

「人により、嗜好は異なります。自分でも気づかないような“あっ!と驚く”使用感を目指し、現在は200種類以上を展開しています。内部構造の違いに加え、ゲルの弾力や質感、多彩な刺激パターンなど、“更なる快感”に向け、開発を行っています」

通常、商品開発は、マーケティングリサーチを行い、ユーザーのニーズを開拓する。しかしTENGAはそれを一切しないという。

「“この世にない”ものを作るには、他者からのアイデアをなぞるのではなく、自分たちから新たな価値を提示することが必要です。そのため開発担当者は、どうすれば気持ち良くなるか、ひたすら思考を深め、新たな技術をTENGAの形状に落とし込んでいます」

プロトタイプが完成したら、社内にいる3人のTENGAソムリエが試用する。そこで合格したものだけが、製品化されるという。

「使ってくださる方に喜んでいただきたい、楽しんでもらいたいという気持ちが、製品から溢れています。そういう想いが伝わるから、国や言語を超えて、多くの方に選ばれていると確信します。TENGAのアイテムを使うと、共感のようなものを感じる人が多いのは、開発者がプロダクトに込めた、オープンでフレンドリーな想いがあふれているからでしょうね」

想いを実現するには、技術も必要だ。ゲルの配合、内外部の設計、金型や成型など、多彩な刺激を得るための技術を磨き続けてきた。

「この想いは、旗艦店の『TENGA LAND』にも強く刻まれています。店舗中央部にそそり立つシンボルツリーは生命を表しており、その周りをベルトコンベアーが周り、その上にTENGAが流れています。生命活動を支える性と、そこに寄り添うプロダクトとしてのTENGAを表現しました」

このベルトコンベアーは近畿地方の奥地にある、国内でも数少なくなったメーカーによるオーダーメイドだ。松本代表自ら、回転速度ほか仕様について足を運び、依頼したものだという。

「明るくポップに楽しめる空間なので、多くの方が立ち寄り、SNSなどで発信してくださっています」

取材当日、外国人観光客のほか、大学生カップルや、買い物中の親子などが立ち寄っていた。ここにはTENGAシリーズの他、女性向けのirohaシリーズも置いてある。irohaもまた、女性の開発チームが「自分らしい性の楽しみ方を見つけよう」という思いを込めて、開発している。このシリーズがあったから、女性は自らの性欲を認め、オープンに語れるようになっていった。

性を肯定し、多様性を認めるという今のカルチャーへのTENGA社の貢献は大きい。TENGAがこの世に登場するまでの世界、セルフプレジャーアイテムは、路地裏の奥、人目につかないところで、こっそりと販売されていた。親子や恋人同士でセルフプレジャーを語ることは少なく、”オナニーなんて恥ずかしい“などと忌避される行為でもあった。

その時代を知る人は、スタイリッシュな商業施設に、グッズ売り場があり、多くの人が訪れていることに、時代が変わったことを感じるはずだ。そこに、あなたの今後のビジネスのヒントがきっと見つかるだろう。

TENGA開発者『松本光一展』

2025年6月20日(金)から25日(水)、TENGA創業20周年を記念し、同社の創業者であり、TENGAを生み出した、松本光一の軌跡を辿る展覧会。本邦初公開となる初期のTENGAデザインスケッチをはじめ、松本の思考の痕跡、そしてプロダクトに込められた想いを展示。
■開催期間:2025年6月20日(金)~6月25日(水) 11:00~21:00(※最終日は18:00まで)
■会場:東急プラザ原宿「ハラカド」3F BABY THE COFFEE BREW CLUBギャラリースペース(東京都渋谷区神宮前6丁目31−21 )
■入場料:無料
― 「松本光一展」開催記念 松本光一トークイベント
■開催日時:2025年6月20日(金) 19:00~20:00
■会場:東急プラザ原宿「ハラカド」3F BABY THE COFFEE BREW CLUB
■入場料:先着50名まで無料 / 以降はワンドリンクオーダー制にて入場可能

公式サイト https://tenga-store.com/news/3015/

プロジェクト推進室、橘涼太さん 1993年生まれ、2020年入社。コミュニケーション本部 マネージャーを経て現職。コーポレートプロジェクトやTENGAブランドの広報PR業務に従事。

取材・文/前川亜紀 撮影/杉原賢紀(小学館)

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