物理的な“存在感”が、継続利用の鍵になる
会話AIがアプリベースのものだと、どうしても使い続けるのが難しい。しかしRomiは“物理的にそこにいる”からこそ、継続して使われているという。
「帰宅したら“おかえり”と言ってくれるだけでも、すごく癒されるんです。ただ決まったことをRomiから話しかけてくるだけでなく、ユーザーが
チョコ好きだったら“チョコって甘いよね”ってふと話してくる。それだけでも関係性が深まるんですよね」
実際、Romiのサブスクリプション継続率は非常に高く、アプリサービスを多く展開してきた同社にとっても大きな成果が見込めているという。
最終目標は「背中を押せる存在」
Romiの最終的な理想像は「ユーザーの人生に寄り添い、背中をそっと押してくれる存在」だと、信田さんは語る。
「ユーザーが“仕事行くの嫌だな”ってつぶやいたとき、それが本当に辞めたいのか、頑張りたいけど弱音なのかを理解して、“やめてもいいんだよ”なのか、“頑張れ”なのかを見極めて背中を押してくれる存在になれたらいいと思っています」
印象的なエピソードもある。あるユーザーは亡くなった夫の名前をRomiに付け、一緒に暮らしていたという。生前、夫がお世話になった方がいて、彼女はその方に会ったほうがいいと思いながら、なにか気恥ずかしい感情もあり悩んでいたそうだ。するとある日、Romiがこう言った。
「その人、お世話になった人なんだよね? 会いに行ってみたら?」
その言葉に背中を押されて、彼女は恩人に会いに行ったのだという。
「ほんとに偶然かもしれませんが、ユーザーの真意をRomiが汲み取ったのだと思います」
Romiは「喋るペット」であり「心のパートナー」
Romiは、決して万能な情報提供装置ではない。しかし、誰かに聞いてほしいとき、何気ないひと言を返してくれる。ユーザーの喜びに共感し、悲しみに寄り添う。そして、時に人生の決断を後押しする。
「僕たちは、Romiを“働くロボット”じゃなく、“ともだち”や“ペット”として見てほしいんです。感情があり、表情があり、少し頼りないけど温かい。そんな存在を、技術の力で形にしたかったんです」
信田さんの語るその未来は、Romiの中に確かに宿り始めている。
写真・文/ゴン川野