裁判所のジャッジ
Xさんの勝訴です。
裁判所
「解雇はダメです」
「Xさんに給料1015万円払いなさい(2年分)」
「あと慰謝料30万円もね」
順番にご説明します。
▼ 育児休業延長の申し出
―― 学校さんの言い分をどうぞ。
学校
「終了直前になって育児休業の延長の申し出があったんです。人事配置などに混乱が生じました。これは解雇事由である〈職務遂行能力または能率が著しく劣り、また向上の見込みがない〉に該当します」
裁判所
「いや、解雇事由にあたりません。Xさんが行った育児休業延長の申し出は適法です。育児休業の申し出を理由として労働者を不利益に取り扱うことは育児介護休業法10条に違反し許されません」
▼ 担任を外してほしい
―― 学校さんの言い分をどうぞ。
学校
「これを要望してきたのは2学期に入る直前ですよ。人事配置に混乱が生じました。なので解雇事由としました」
裁判所
「ダメです。『軽易な業務に変えてほしい』とXさんが請求したことを理由として不利益に取り扱うことは、雇用機会均等法9条3項で禁止されてます。解雇事由にできません」
▼ コロナ感染が怖い……!
―― 学校さんの言い分をどうぞ。
学校
「Xさんは私どもに事前に相談することなく母子健康管理措置として休業の申し出をしてきたんですよ。突如。この申し出によって人事配置に混乱が生じたんです」
裁判所
「別に相談しなくていいのよ。申し出時期もいつでもいい。突如でもいい。これを解雇事由とすることは雇用機会均等法9条3項に違反しています」
というわけで解雇は無効になりました。
▼ Xさんが得た金額
約1015万円です。内訳は以下のとおりです。
給料(R2.12~R5.1) 792万円(月額33万円×約2年)
冬のボーナス 3回 159万円(53万円×3回)
夏のボーナス 2回 64万円(32万円×2回)
これはバックペイと呼ばれています。解雇の裁判に勝てば、過去にさかのぼって給料がもらえるんです。具体的には【解雇された日から → 訴訟になって → 判決が確定する日までの給料】をもらえます(民法536条2項)。 今回のケースでは裁判が約2年続いたので2年分の給料です。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
「ムズイ法律を、おもしろく」をモットーにコンテンツを作成している弁護士
YouTube:https://www.youtube.com/@saiban_LABO
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