
組織運営という観点では、料理店におけるレシピとは料理を作るマニュアルであり、料理を作る際のルールです。本記事ではレシピの活用がしっかり徹底されている料理店の組織として、企業としての強みをお伝えする事で、全ての業種・組織においてのルールの重要性をお伝えします。
レシピのない料理店の魅力とリスク
質問:あなたは「レシピのない料理店」と聞いてどのようなお店を想像しますか?
私はこんな想像をします。
メニュー表はなく、その日仕入れた最高の食材とシェフのインスピレーションで料理が組み立てられ、客はただ身を任せ、次に何が出てくるのかワクワクしながら待つ。画一的なサービスとは一線を画し、料理人の技術と感性、そして客との信頼関係によって成り立つ、非常に人間味あふれる場所だと想像します。それは、まるでシェフの自宅に招かれたかのような、心温まるおもてなしを受けられる、特別な隠れ家のような、そんな想像をしてしまいますよね。料理人の素晴らしい能力がそのような運営を実現し、訪れた人の満足度も上がっていきます。私自身もこんなお店は好きですし、非常にワクワクします。
質問:では、「レシピが全然整備されていない料理店」と聞いた時、どのようなお店を想像しますか?
私は、こんなお店を想像してしまいます。
・品質と味のばらつきがある:一番の不安要因です。前回美味しかった料理が、次に訪れた時には全く違う味になっている、あるいは期待外れの仕上がりになる可能性も十分にあります。料理人の腕やコンディションに大きく左右されるため、味の安定性には欠けるかもしれないという心配になります。
・サービス品質のばらつき:料理ごとの工程が標準化されていないため、調理に時間がかかったり、提供順がばらついたりする可能性があります。特に混雑時は、お客様を待たせてしまうことも考えられます。
・リピーター獲得が難しい:メニューの明確な情報がないと、初めて訪れるお客様は何を注文して良いか分からず、不安を感じるかもしれません。また、安定した品質を提供できないと、リピーターを確保するのが難しくなる可能性もあります。
つまりはレシピが無いという事は、サービスにおける属人性が大きくなってしまい、良くも悪くも不確定要素が大きくなり、企業の組織運営という視点でとらえると安定性を欠いた組織運営になってしまう可能性が非常に高いのです。
レシピの無い料理店とは?全くレシピが存在しないのか?
では、センスある料理人の属人性でお客様の満足を獲得している「レシピのない料理店」には、本当にレシピは存在しないのでしょうか?確かに正確に言語化されたレシピは無いかもしれません。しかし、「料理人の頭の中」「そして経験値から体が覚えている感覚」、そこにはレシピが存在していると思います。「このくらいの分量で、このくらいの温度感で、このくらいの時間で調理すれば美味しくなる。」という感覚的な情報は持っていなければ美味しい料理を作ることは出来ないからです。そしてその感覚的なレシピのみの状態は、他の人に再現性を求める事が難しく、自分自身が常に同じ感覚で料理を完成させる事の難易度も上げてしまいます。
ここで「レシピがない料理店」とは、料理を作るための言語化されたレシピ(マニュアル)が無いお店と定義しましょう。
レシピとはルールです
ここからは言語化され共有されたマニュアルの事を「レシピ」と表現します。
料理店にとってレシピとは、「この料理はこのように作りなさい」というルールです。このルール通り作れば、属人性に頼らず、誰が作っても期待通りの料理を提供できるという大事な大事なルールです。
例えば、あなたが自分の作るオムライスに絶対の自信があり、オムライス料理店を新規OPENしたとします。自慢のオムライスは評判となりどんどんお客様が訪れるお店に成長するでしょう。一人で作れる料理の品数には限界があります。行列が出来るようになり、中にはせっかく店を訪れたのに食べる事が出来ずに諦めるお客様も出てくるかもしれません。一人でも多くの人に美味しいオムライスを食べてほしいあなたは、店を広げたり、新しい料理人を雇い入れたりするでしょう。よし、これで多くのお客様に美味しいオムライスをお届け出来る!と思い、ワクワクすることでしょう。
ちょっと待って下さい。
レシピは整備されていますか?
あなたの頭の中だけにレシピがある状態ではないですか?
レシピを正しく整備してお客様の満足を獲得しましょう
レシピが有るお店とは、味や品質にばらつきが無いお店の事です。
お客様は、毎回期待通りの料理を食べ、満足して帰りリピーターになってくれる可能性が高まります。レシピというルールを整備しましょう。
レシピを作成する上での注意点は2つです。
(1) 明確に記してある事
→例えば「良く塩をふる」「しっかり火を通す」などの表現は好ましくありません。なぜならば人によって認識が違うからです。「〇gの〇肉に〇g塩をふる」「〇度のオーブンで表〇分、裏〇分焼く」といった表現をすることで味の再現性を取ることが出来ます。
(2) いつでも確認出来る場所にある事
→レシピとはマニュアルでありルールブックです。料理人が確認しようと思った時にすぐ確認できる場所にないと意味がありません、ましてどこを見れば確認できるかは、確実に全員が正しく認識していなければいけません。
この2点が正しく環境設定されていれば、味のバラツキは無くなり、お客様満足度の向上の可能性はグッと高まります。
まとめ 組織においてのルールは料理店におけるレシピです
あなたの所属している会社組織にはルールが存在していますでしょうか?ルール設定が曖昧で、サービスの品質にばらつきが生じているような状況にないでしょうか?
もしも、あなたが経営者や上司の立場で、部下に対して、「なんで求めている事が出来ないんだ」と感じているとしたら、それはルールやマニュアルの設定が不足しているのかもしれません。どうすべきか正確に伝わっていないなら、それを伝える事が出来ていないという自身の課題として捉えることが出来た時、組織の成長の大きな転機となります。
まずは、
・誰が見ても明確なルールがある状態
・メンバー全員がルールの確認方法を認識出来る状態
を作る事を、今日からでも実践してみて下さい。
ルールに不備があったら後から修正できます。確認方法が伝わらなかったら繰り返し伝えれば良いです。
さあ、動きましょう。
文/識学コンサルタント 熊谷康