小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

データが無い時、どうやって意思決定を行なうべきか?不確実な現場でも迷わない判断軸の作り方

2025.06.30

データに基づいた意思決定は、客観性と精度を高め、より良い結果につながる可能性を秘めています。しかし、現実のビジネス現場では、常に十分なデータが揃っているわけではありません。 特に変化の激しい状況や、前例のない課題に直面した際、データ収集に時間を費やす余裕がないこともしばしばです。

データの有無にかかわらず、その扱い方を間違えれば大きなミスリードやロスタイムにつながります。だからこそ、データを意思決定へどう結びつけるかというフレームワークが非常に重要になります。本稿では、データがない不確実な現場で迷わないための判断軸をお伝えします。

「常識」の落とし穴:歯科医院の数よりコンビニが多い?

2024年の厚労省のデータによると歯科医院の数は凡そ6.6万件です。一方でコンビニの数は5.5万件とされています。よく「認知バイアス」に関わる説明で出される例ですが、人は自身の生活上の必要性や利用頻度をもとに物事を認識するため、「コンビニの数の方が圧倒的に多い」と認識しているケースがあります。もし、こうした個々人の感覚をもとに経営判断や組織内の会話を展開したら、どうなるでしょうか? 事実に基づかない感情的・感覚的な会話は、パーソナリティ同士のぶつかり合いとなり、「常識的に考えて」「普通はさぁ」といった言葉が多用され、個人対個人の論争になりがちです。このような認識の違いを解消するために多大なコミュニケーションや時間を費やしていては、本来進めるべき事業が停滞してしまいます。

組織において生産性を下げる要因の一つに、「誤解や錯覚」があります。感覚や経験に基づいた経営判断がデータによる裏付けがない状態では、舵取りを誤るだけでなく、組織内で共通認識を持つことも困難になります。データの裏付けも踏まえた経営戦略をチーム全体で共有し、誤解や錯覚を最小限に抑えた運営にしていくという意味でも、データや事実に基づくマネジメントは組織運営の必須条件と言えるでしょう。

しかし、常にデータが揃った状態からスタートできるわけではありません。特に中小企業においては、各業種でデータを収集・蓄積していくことから始めるケースも多く見られます。では、データが不足した状況下で、私たちはどのような決断・判断を下していけば良いのでしょうか。

データがないなら「“小さく” “すばやく”実験する」

データドリブンの重要性を認識しつつも、いざ新しい施策を行う際に判断材料となるデータが揃っていることは稀です。時にデータを揃えることが目的化し、データ収集に時間をかけすぎてしまうと、その間に外部環境が大きく変化したり、データ傾向が変わってしまったりして、ますますデータへの切り口が見いだせず、泥沼にはまってしまうケースもあります。

これは、既存事業の分析においても同様です。例えば、販売目標の未達を分析する際に、現状のPOS(販売時点情報管理)システムが必要な数値を拾えなかったり、分析項目が対応していなかったりする場合があります。

PDCAサイクルにおいて重要なのは、P(計画)に時間をかけすぎず、何がゴール(仮に売上)にインパクト(影響)を与える変数なのかを特定するため、D(実行)とC((評価)を素早く回し、次のA(改善)へつなげていくことです。計画に時間をかけるほど、DCAのサイクル回数が鈍化します。もし自分たちが一つの変数の影響を確かめている間に、ライバルが四つの変数を評価できていたとしたら、その差は歴然で、成長スピードの差に直結するでしょう。

だからこそ、小さなユニット(チーム)を実験台と設定し、たとえ根拠となるデータが揃っておらず、経験と勘に頼らざるを得なかったとしても(解像度が低かったとしても)、仮説を設定して実行に移してみることが重要です。

KPI設定とマネージャーの役割

データが揃っていない状況では、マネージャーはゴールを達成するための変数(KPI:重要業績評価指標)を設定する必要があります。ゴールと変数を結びつける責任者はマネージャー自身です。

つまり、部下が目標となるKPIの数字を達成したにもかかわらず、ゴールが未達だった場合、その責任は部下ではなく、変数を設定した上司側にあります。マネージャーが設定した変数の検証サイクルを速くするためにも、ゴールは未達であったとしても、上司が設定したKPIを部下が達成した場合は、適切に評価してあげる必要があります。

安易に関連性のあるデータに飛びつかない

真の変数を探す中で、ゴールと相関性の高いデータが見つかることがあります。データが十分でない段階において関連性の高い情報は貴重であり、一気にその方向へと舵を切りたくなるかもしれません。

ただし、安易に駒を進めてしまうと大きな罠に陥る場合があり、注意が必要です。データドリブンの考え方の土台として、得られたデータが「問題」「課題」「解決」のいずれに該当するかの判別が重要になります。

例えば、あるサービス提供者の売上が低いとします。これは目標と現状のギャップである「問題」です。次にデータを集めていく過程で、結果の出ていない人ほどサービス提供時間が長いという相関関係が得られたとしましょう。極端で安易な捉え方をしてしまえば、「サービス提供時間を強制的に短くすればよい」という発想になりますが、これは「解決」にはなりません。提供時間が長いという事実は、問題にあるギャップを埋めるための解決手段ではなく、あくまで相関関係のある現象にすぎないということです。

本来は、「なぜ提供時間が長くなっているのか」を深掘りする必要があります。例えば、提供の構成などに迷いがあり、内容が薄く引き伸ばされているのかもしれません。それを解決するためには、チームとしてサービス提供の型などの仕組みを整えていく、といった考え方につながっていくのです。

「撤退基準」を明確にする

新しい施策に取り組むと、人間は当然熱が入ってきます。望むような結果が得られていなかったとしても、「せっかく取り組んできたのだから、何かしら回収しないともったいない」という発想から、なかなか出口を決められず、損失を広げてしまうことがあります。人間の感情が入るからこそ、決断が鈍る面があるのです。

データが不足している状況で重要なのは、「何をもって成功とし、何を失敗とするのか」という明確な判断基準と、「いつまでにその結果を検証するのか」という期限を設定することです。そして、その結果が期限までに得られないのであれば、別の変数へ切り替える、ということを事前にルールとして決めておくことです。

そうしておかなければ、上司としても「頑張っているから、ここで打ち切りにするとモチベーションが下がるのではないか」など、余計なことを気にせざるを得なくなってしまいます。

最後に

データが不足している状況での意思決定は、ビジネスにおいて避けられない課題です。

限られた情報の中でも仮説を立て、実際に試してみて、その結果から学びを得るサイクルを高速で回すことが、不確実な状況下での意思決定を成功に導く鍵となります。そのためにも、本稿で紹介したことを一例としたデータを取り扱う判断軸が重要となります。「不確実な現場で迷わない判断軸」を組織全体で共有し、実践していくことが、変化の激しい現代ビジネスを勝ち抜くための必須条件と言えるでしょう。

文/識学コンサルタント 山口裕弘

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2025年6月16日(月) 発売

DIME最新号は、「40代からのメンズ美容入門」!スキンケアの基礎や、白髪、薄毛、加齢臭などこの世代ならではの悩みを徹底解説。さらに、読んですぐにスキンケアを実践できるウーノの豪華2大付録つき!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。