
イノベーションワークスペースを提供するMiroはこのほど、職場におけるAI活用に対するナレッジワーカー(以下「知識労働者」)の意識や活用の実態、企業による対応の実状などに関するグローバル調査の結果を発表した。
AIスキルを高めたい従業員と企業の対応に溝
調査からは、一定数の知識労働者はすでにAIを活用しており、その多くが今後自身のAIスキルを高め、業務の満足感が高まることを期待している一方、企業側は十分な機会を提供しておらず、従業員のAI活用への支援が求められていることが明らかになった。
今回の調査では、AIに対する意識が複雑化している現状が浮き彫りになった。多くの知識労働者は、日々の業務での積極的かつ有意義なAIの活用に苦慮している。しかし、これはAIに対する意欲がないからではない。調査によると、従業員はAIが自身の健康や創造性にメリットをもたらすと期待しており、AIを日常業務に積極的に取り入れ、スキルを磨くことがキャリアにとって重要だと考えている。
多くの知識労働者にとっての最大の不満は、AIに関する誇大な報道が、職場の現実を反映していないことだ。経営層は計画や投資を従業員にとって有益な戦略に転換できておらず、結果として、多くの従業員がAIを自力で理解しようと奮闘する現状を招いている。
Miroの最高製品兼技術責任者(CPTO)であるJeff Chow(ジェフ・チョウ)氏は、次のように述べている。
「AIは、組織における創造的な問題解決の新たな方法を生み出し、かつてない水準のイノベーションを促進するでしょう。企業はAIを活用したいと強く願っており、従業員もAIを業務に取り入れることの重要性を理解していることが明らかになっています。しかし、AIによる変革を進めるにあたり、両者には明確な隔たりがあります。企業の投資と従業員の熱意の乖離は、真の組織変革とイノベーション加速に向けた大きな機会を逃していることを示しています」
オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、オランダ、英国、米国の知識労働者を対象に調査を実施
Miroは、世界7市場(オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、オランダ、英国、米国)の8,094人(うち日本1,007人)の知識労働者を対象に調査を実施した。日本の主な調査結果は以下のとおり。
●回答者の多くはAIを活用しているが、そのレベルは様々
・44%が、自身のAIに関する知識とスキルレベルを平均以上(平均、良い、エキスパートの合計)と評価しているが、37%は「全くない」と回答
・半数以上(59%)が、AIを最大限に活用する方法を学ぶ時間とリソースが不足していると回答
●回答者は他者に後れを取ることを懸念しており、多くはAIの利用をいつ公言すべきかわかっていない
・28%が職場で自身のAIスキルを誇張して伝え、30%は自身のAIスキルを過小に伝えている
・58%が、自身の業務においていつ、どのようにAIを活用したら良いか苦慮
・60%が自身のAIスキルに不安を抱いている
●回答者は、AIには健康増進、燃え尽き症候群の軽減、創造性向上などの効果を期待しており、従業員はAI活用に意欲的
・53%がAIによってワクワクしたり、活力を感じたりすると回答
・半数以上が、AIは従業員の健康を向上させ(59%)、仕事の満足度も向上させる(56%)と回答
・63%が2025年にAIスキルの向上を予定
●しかし、従業員のAI導入とその可能性への意欲を企業側の対応が阻害
・ほぼ半数 (49%) が、社内でAIについて多くの議論があるものの、企業からの具体的な行動は見られないと回答
・44%が自社でのAIの取り組みが途中で放棄されることがあると回答
・63%が自分の職務にAIが役立つと考える一方、58%がAIをいつ活用すべきかの判断に苦慮
●Z世代はミレニアル世代よりAIに消極的
・AIを「全く使用していない」と回答した割合は、Z世代は半数以上(58%)で、ミレニアル世代は40%
・同様に、自身にAIスキルが「全くない」と回答した割合は、Z世代が最も高く50%で、ミレニアル世代では34%
・今年中に職務でAIをより活用すると予測する割合は、Z世代が65%で、ミレニアル世代の69%に比べて低く、AIスキルをさらに向上させるためのコースを受講すると予測する割合もZ世代は57%で、ミレニアル世代の66%より低い
●従業員のAIに対するモチベーションを高めるために企業が取るべき3つの施策
・正式なトレーニングの提供(37%)
・AI導入に関する企業戦略の明確化(35%)
・AIの潜在的なビジネスメリットの伝達(32%)
ジェフ・チョウ氏は次のように結論づけている。
「AIは急速に進化しており、組織はバズワードや非現実的な期待に惑わされがちです。実際には、多くのAIソリューションはすべての知識労働者にとって十分使いやすいとは言えず、大規模かつ一貫した方法で導入することが困難です。したがって、リーダーはプラットフォームの展開からプロセスの導入へと移行し、チームがそれに伴う変化に対応できるよう万全の体制を整える必要があります。これは、人材のスキルアップ、プロセスの価値と導入の優先、そしてアクセスと再現性を最大限に高めるための製品統合の推進を意味します。AIによる変革は、チーム全体で取り組むべきものです」
<調査概要>
調査方法:2025年1月から2月にかけて、Miroは独立したオンラインパネルを通じて、フルタイムで雇用されている知識労働者8,094人を対象に調査を実施した。回答者の勤務先は多様な業界と企業規模、7つのグローバル市場(オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、オランダ、英国がN=1,000、米国がN=2,000)にわたる。
出典元:Miro
構成/こじへい