
後継者不足の解消や競争力の強化など、企業の可能性を広げるM&A。一方で、売る側、買う側双方が納得できる条件を整えるのはなかなか難しいものだ。
そこでAIを活用した売り手特化のM&Aサービス『RISONAL(リソナル)』を運営するオーナーズは、M&Aの経験がある経営者を対象に「M&Aトラブルと情報格差に関する調査」を実施し、523名から回答を得たので、結果をお伝えしよう。
M&A後の後悔1位は「契約交渉」、トラブル内容のトップ2は「経営者保証の解除拒否」と「価格の引き下げ要求」
過去にM&Aを経験した人に、何かしらのトラブルに遭ったことがあるか尋ねたところ、51.8%が「ある」と回答した。
ここからは、過去にM&Aでトラブルに遭ったことがあると回答した人の中から、200名にアンケートを実施した。
M&A後に後悔した点について尋ねたところ、「契約書の内容をもっと丁寧に確認し、十分な契約交渉を行えばよかった」が34.0%、「もっと多くの支援者や専門家の意見を聞いておけばよかった」が31.0%、「買い手企業の情報をしっかり調べておけばよかった」が25.0%と続いた。
M&Aで経験したトラブルについて尋ねたところ、「経営者保証を解除してもらえない」が29.0%で最も多くなっている。
「最終交渉の土壇場で価格の引き下げを要求された」が23.5%、「取引後に損害賠償請求を受けた」が19.5%と続いた。
7割超が売り手と買い手の情報格差を実感、情報不足を実感した項目最多は「契約条件・条件交渉」
M&A実施時に十分な情報が得られていたかを尋ねたところ、63.0%が不足していたと感じていることが判明。
情報が不足していたと感じる項目を尋ねたところ、「契約条件・条件交渉」が37.3%で最も多く、「買い手情報・買い手探索方法」が34.1%、「法務・税務・財務面」が24.6%と続いた。
M&Aの交渉過程において売り手側と買い手側の情報の格差を感じたか尋ねたところ、73.0%が格差を実感していることが判明。
情報格差を感じた点について尋ねたところ、「買い手側は過去にM&A経験があり、交渉に慣れていた」が34.9%で最も多く、「専門的な知識で差を感じた」が32.2%、「仲介者と買い手側に以前から関係性があった」が30.8%で続く。
<情報格差を感じたエピソード/一部抜粋>
・先方は大手企業で知識があり、中小の当社が条件で不利だった
・相手の経営者に誠意がなく、詐欺師まがいだった
・買収の対価として買い手企業の株式を受け取ったが、米国証券取引法の規制により、自由に市場で売却できず、結果、現金化ができず損失が発生した
知識不足で判断に迷ったことは「買い手企業の信頼性」が最多、情報収集の手段は「専門家」や「知人・経営者仲間への相談」が中心
知識不足によって判断を迷ったことがあるかを尋ねたところ、「買い手企業が信頼できるかわからなかった」が31.5%で最も多く、「契約条件に不安があった」が31.0%、「従業員への影響が読めなかった」が26.0%と続いた。
M&A検討時の情報収集方法について尋ねたところ、「顧問税理士や会計士、弁護士などの専門家に相談」が27.5%で最も多く、「知人・経営者仲間に相談」が27.0%、「インターネット検索」が21.0%という結果に。
M&A検討開始時に相談した相手を尋ねたところ、「税理士・会計士」が33.5%で最も多く、「知人・経営者仲間」が26.0%、「銀行・証券会社」が25.0%となった。
税理士・会計士:33.5%
知人・経営者仲間:26.0%
銀行・証券会社:25.0%
仲介業者:21.0%
弁護士:14.5%
FA(売り手支援):14.0%
民間の経済団体(商工会議所等):9.5%
その他:1.5%
いなかった:8.5%
M&Aに関する知識の情報源として信頼できるものを尋ねたところ、「専門家(税理士・弁護士など)への相談」が42.5%で最も多く、「セミナー・講演会」が27.5%、「同業者の体験談」が27.0%と続いた。
オーナーズ株式会社 代表取締役社長 作田 隆吉氏のコメント
今回の調査では、M&Aの実行にあたって多くの経営者が情報不足や経験格差に悩まされており、それが契約トラブルや売却後の後悔につながっている実態が明らかになりました。
特に、「契約条件の交渉」「買い手企業の信頼性」「専門家の活用」に対する後悔の声は、売り手にとって情報の非対称性が大きなリスク要因であることを物語っています。
M&Aは本来、企業の可能性を広げる前向きな選択肢ですが、買い手主導で進む交渉の中では、情報を十分に持たない売り手が不利な立場に置かれがちです。契約条件を正しく理解し、適切に交渉するためには、売り手の立場に立った専門的なサポートが不可欠です。
オーナーズでは、こうした構造的な「情報格差」を埋めることこそが、経営者の意思決定を支え、後悔のないM&Aを実現する第一歩だと考えています。今後も売り手の利益を守る仕組みを社会に広げ、健全なM&Aの定着に貢献してまいります。
調査概要
調査名称:M&Aトラブルと情報格差に関する調査
調査機関:Freeasy
調査対象:M&Aトラブルを経験したことがある経営者
調査方法:Webアンケート
調査期間:2025年5月20日~5月24日
有効回答数:523件
出典元:オーナーズ調べ
※各回答項目の割合(%)は、端数処理の関係上、合計が100%にならない場合がある
関連情報
https://risonal.com/
構成/Ara