
持続可能な宇宙環境を目指して、軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングスの日本子会社である株式会社アストロスケールは、軌道上サービスの一つである衛星への燃料補給の実現に向け、給油口接続システムを本田技術研究所(以下「Honda」)と共同で開発を行なうことを発表した。
共同開発に至る経緯と背景
Hondaは輸送用機器開発やロボティクス分野で数多くの知見を有している。この強みを活かして、給油口接続システムの開発を担当する。
一方、アストロスケールはHondaと共同で給油口接続システムの開発に携わるとともに、これを、これまで獲得してきたRPOD(Rendezvous, Proximity, Operations, and Dockingの略称。ランデブ・近傍運用・ドッキング)技術と宇宙機開発実績を土台に、低軌道での化学燃料補給実証に結びつけていく。
本実証は、2029年頃の実施が見込まれている。なお、Hondaと共同開発した給油口接続システムは、アストロスケールが2025年1月に採択された下記のプロジェクト(※)で使用される予定だ。
※内閣府主導で創設され、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が推進する「経済安全保障重要技術育成プログラム(通称、K Program)」の研究開発構想「衛星の寿命延⻑に資する燃料補給技術」における、公募枠「協⼒衛星を対象とした宇宙空間における燃料補給技術の確立」の研究開発課題
地球周回軌道は衛星やスペースデブリの増加により混雑化が加速しており、このままでは長期的に軌道を利用することが困難になると考えられている。
■使い捨てを前提とした開発から脱却、循環型経済を宇宙空間で実現することが重要
この問題を解決し、宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)を実現するためには、使い捨てを前提とした衛星やロケット開発から脱却して、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Repair(修理)、Refuel(燃料補給)、Remove(除去)といった循環型経済を宇宙空間で実現することが重要であり、そのソリューションが軌道上サービスとなる。
軌道上サービスの一つである燃料補給サービスは、衛星運用者にとって、衛星の寿命を延長することで衛星機数や打上げ回数を低減することにつながる。
また、燃料の制約を取り払うことで衛星のミッションの範囲や柔軟性を拡大、新しい衛星の使い方も可能になる。
アストロスケール 代表取締役社長 加藤英毅氏は、今回の発表に際して次のようにコメントしている。
「燃料補給は、私たちが目指す軌道上サービス商用化に必要不可欠な要素です。そして、これを国産で開発することは我が国にとっても大きな意味を持ちます。このような状況において、この度Hondaとの共同開発に着手できることをうれしく思います。Hondaとは今後も戦略パートナーとして関係を構築していきたいと考えています」
関連情報
https://astroscale.com/ja/
構成/清水眞希