
この記事では、ビジネスにおける分水嶺の意味から使い方まで、例文も交えながら、できるだけわかりやすく解説する。いざという時に恥をかかないために、今のうちに押さえておこう。
目次
「分水嶺」とは、雨水が異なる方向に流れる境界線となる山のことだ。分かれ目や転機を表す例えとして、ビジネスシーンでも使われている。上司や目上の人の言葉として、聞いたことがある方もいるかもしれない。
この記事では、ビジネスにおける分水嶺の意味から使い方まで、例文も交えながら、できるだけわかりやすく解説する。いざという時に恥をかかないために、今のうちに押さえておこう。
分水嶺(ぶんすいれい)とは
まずは、分水嶺という言葉の語源と意味から確認する。
「分水嶺」は現在、日常生活においても普通に使われるようになったが、もともとは、山と川などの自然環境と人間との関係を学ぶ地理学の専門用語だった。
●山と川にまつわる意味の分水嶺
地理学において「分水嶺(ぶんすいれい)」とは、分水界になっている山稜(山の尾根)をいう。ちなみに「分水界(ぶんすいかい)」とは、地上に降った雨水が、2つ以上の異なる水系に分かれて流れる境界線のことで、山だけでなく平野にも点在している。
ちなみに、日本にある「分水嶺」では、「中央分水嶺(分水界)」が有名なもののひとつだろう。
中央分水嶺(分水界)は、北海道の宗谷岬から鹿児島県の佐多岬まで、日本列島を南北に通る境界線で、ここを境にして雨水は、太平洋側と日本海側の水系に分かれて流れる。
●「分かれ目」という意味の分水嶺
また、水系が分かれる境界線となる山という語源から、「分水嶺」は、物事の方向性や進むべき道が決まる「分かれ目」の例えとして、一般的に用いられるようになった。
その後の動向を決定づける転換点というニュアンスがあるため、ビジネスシーンで活用されることも多い。
●分水嶺の類語・英語表現
「分水嶺」の主な類語は、次の通りだ。
・転機
境遇・運命などが他の状態に変わるきっかけ
(例)海外に留学したことが人生の転機となった。
・分岐点
道路などが2つ以上の方向に分かれる地点、物事の分かれ目
(例)登山道の分岐点では、道を間違えないよう注意するように。
・ターニングポイント
状況が変わる決定的瞬間、節目。英語では「turning point」
(例)試合に負けたことがターニングポイントとなり、彼女は努力するようになった。
なお「分水嶺」を英語に訳すと、「川の流域、転機、分岐点」という意味の「watershed」となる。ほかに「分ける、分割する」という意味の「divide」という表現も使われることがある。
※出典:小学館 デジタル大辞泉「分水嶺(ブンスイレイ)とは?意味や使い方-コトバンク」
https://kotobank.jp/word/%E5%88%86%E6%B0%B4%E5%B6%BA-623339#goog_rewarded
ビジネスにおける分水嶺とは
次に、ビジネスにおける「分水嶺」の意味と使い方を解説する。
●ビジネスにおける分水嶺の意味と使い方
ビジネスシーンにおいて「分水嶺」は、会社や組織が、今後の方向性を左右する大きな岐路に立った瞬間を意味することが多い。
●ビジネスにおける分水嶺の例文
ここで、ビジネスにおける分水嶺の例文を3つ紹介しよう。具体的なシーンをイメージしながら読んでみてほしい。
・「当社では、コロナ禍をきっかけに導入したリモートワークが、働き方改革を推進するうえでの分水嶺となった。」
・「このプロジェクトの成否が、今後の会社の方向性を左右する分水嶺となる可能性がある。」
・「3年前に赤字部門を売却し、新業態にチャレンジしたことが、当社の成長の分水嶺となった。」
いかがだろうか。
「分水嶺」は、会社や組織の重大な転換点を表現するのに最適な言葉だといえそうだ。ここぞという場面では、それぞれの状況を、臨場感を持って伝えることができるだろう。
●分水嶺に立ったときに大切なこと
分水嶺に立つのは、企業だけではない。私たち個人の人生にも、望むかどうかにかかわらず、分水嶺に立つ瞬間が訪れる。
人生の分水嶺は、就職や転職、転勤、起業など、幸運な出来事や偶然とともにやってくることもあれば、倒産、解雇、病気など、ピンチや困難な状況で決断を迫られることもある。
私たちが分水嶺に立った際、まず大切なことは、自分が人生において重要な決断の時を迎えていると気づくことだ。
どんな状況にあっても、今起きている変化にできるだけ冷静に向き合い、目の前のことから、確実に取り組んでいく。
特に難しい状況で分水嶺に立った時には、今の自分の能力で対応可能かどうかの見極めも大切だ。場合によっては上司や先輩、家族など、他人の支援も必要になることもある。自分だけの力で解決しようと思わず、積極的に協力を求めるのもひとつの手だ。
その上で、分水嶺をうまく乗り越える方策を考え、実行に移そう。
例えば、資格取得のための勉強を始める、社会人大学院に行く、転職活動を始めるなど、自分を信じて具体的にアクションを起こすことが肝要だ。
まとめ
「分水嶺(ぶんすいれい)」とは、地上に降った雨水が、2つ以上の水系に分かれる境界線となる山のことだ。また、そこから転じて、物事の方向性が決まる「分かれ目」を指すようにもなった。会社や組織の未来を方向づける、重要な決断を伴うニュアンスもあることから、日常生活のみならずビジネスでも広く使用されている。
また、私たちが人生において分水嶺に立った時には、冷静に状況を見極め、自分を信じて行動を起こすことが大切だ。
今後、会社や人生で、どちらの道に進むべきか大きな決断が迫られた際は、「成長につながる分水嶺だった」と振り返ることができるよう、後悔のないように行動していきたい。
文/木戸史(きどふみ)
立命館大学文学部卒業後、営業、事務職、編集アシスタントなどを経て、社会保険労務士事務所で社労士として勤務。現在はライターとして活動しており、社労士として多くの中小企業に携わった経験を生かし、ビジネスマンに役立つ法律知識をできるだけわかりやすく発信している。