【個人向け】ピーターの法則を回避するための方法
組織の人事やマネジメントを担当する方向けに「有能人材が無能化する」現象を回避する方法を解説したが、個人の場合はどうであろうか。主に次のようなものがある。
■マネジメントスキルを先回りして学ぶ
昇進の際に最も大きなハードルとなりやすいのが、マネジメントスキルである。そのため、普段からマネジメント経験を意識的に積むとよい。例えば、会議のファシリテーターを務めたり、後輩育成に積極的に関わったりと、チャンスはたくさんあるだろう。
■知識やスキルの幅を広げる
専門分野にとどまらず、他の分野の知識やスキルを習得することもおすすめである。例えば、エンジニアがマーケティングを学ぶ、営業職がITリテラシーを高めるといった取り組みがある。昇進後のあらゆる役割に対して柔軟に対応できるようになるであろう。
■昇進にこだわらない
ピーター氏はあえて昇進しないという選択肢も推奨している。趣味に打ち込む、友達との時間を大切にする、家族を第一に考えるなど、昇進以外にも人生を充実させるアプローチはある。昇進にこだわらなくなれば、ストレスやトラブルも少ないであろう。
まとめ
有能な人材が昇進によって「無能化」してしまう――身近でそのような現象が起きてはいないだろうか。もし、そのような現象が起きている場合、その背景には偏った組織文化や柔軟性のない人事システムといった問題があると考えられる。
「無理に昇進しなくても良い」。組織としても個人としても、そのような考えを持っていたほうが、健全なのかもしれない。人が本来の能力を最大限に発揮できるのは「自分にあった場所」にいるときであることを忘れてはならない。
ご自身の働き方を考える上で、あるいはご自身が所属する組織の人事を考える上で、本記事の内容がご参考になれば幸いである。
文/松下一輝(まつしたいっき)
千葉大学大学院修了後、大手システムインテグレータに入社。通信キャリアを担当する部署にて、業務システムやWebアプリケーションの設計・開発業務に携わる。その後、フリーのライター/ジャーナリストに転身。現在、ITやビジネス、言語などの分野を中心に、各種メディアで記事を執筆している。