
総務省の「労働力調査(詳細集計)2024年」によれば、2024年の転職者数は約331万人で3年連続増加という状況だ。企業の人材の流動性の高まりから転職はキャリアの選択肢と考えられるようになっており、それは会社を辞めることが珍しくないことにもつながっていると考えられる。
転職や就職のためのジョブマーケット・プラットフォーム『OpenWork(オープンワーク)』を運用するオープンワークは、働く男女約540人を対象にした「会社を辞めたいと思う瞬間」を調査。キャリアアップが目的のポジティブな離職に対して、会社への違和感や諦めから「辞めざるを得ない」と感じる背景について発表した。
会社を辞めたいと考えるのは成長やキャリアパスが見えにくい時
会社を辞めたいと思う瞬間については、「成長やキャリアパスが見えにくいとき」が最多の24.8%だった。次いで「給与・評価に納得できなかったとき」が22.1%だった。「自分の市場価値を高めたい」や「どこでも通用する汎用的なスキルを身につけたい」という志向が強まっている働く人の意識変化もあり、明確な答えや展望がないことが離職の大きな理由になりうるようだ。
調査で挙がったコメントには、「『この会社の働き方はこの会社でしか通じない』というものが多くなってきた場合は転職します。もともと自分のキャリアパスは自分の意思で決断して選ぶ思考のため、これまで多くの転職を重ねてきました。どこの会社も多かれ少なかれ、その会社独自の仕事のお作法がありますが、それがあまりにも独自過ぎて他社で通じないものが自分の領域に増えてきたら転職を意識します(経営企画)」と現在の職場の状況と自分のキャリアアップを冷静に分析して離職を考えているというものがあった。
評価制度や企業文化などへの「諦め」が決断の鍵?
今回の調査では、自分の会社の評価制度や企業文化など「社員ひとりの力で容易に変えられないこと」への不満や諦めが共通点として挙がったという。「諦め」がきっかけになる背景には、「組織に貢献したい」という思いとのギャップや「声を上げても届かない」という経験の積み重ねなどがありそうだ。
経営方針の変更に対しても現場社員が「唐突」で「一方的」と感じることで不信感を抱くこともあるという。
コメントには「上層部のお気持ちで会社方針が年度毎に変わるのですが、その方針に振り回される現場がとても大変で、会社方針が迷走するために将来の展望がわからなくなってしまった(Webマーケティング)」という回答もあり、会社として方向転換が必要な局面では社員との間に一定の摩擦が生じることは避けられないが、上司と部下での対話や関係性の良さで「望まない離職」を減らすことを考えたほうがよさそうだ。
50代以降は「上司や同僚との人間関係が悪いとき」がトップ
調査結果を20代、30代、40代、50代以降の年代別に分類すると、50代以降を除く3つの年代の上位2つは「成長機会やキャリアパスが見えにくいとき」と「給与・評価に納得できなかったとき」に集中したという。
50代以降の世代で最多は「上司や同僚との人間関係が悪いとき」だった。ちなみに2位以下は、「給与・評価に納得できなかったとき」、「会社・経営陣の方向性に共感できないとき」となった。
50代以降が職場の人間関係に悩む背景には、一般的に管理職を担っていることが多く、上司からは経営目線や変革を求められて、部下からの多様な世代の価値観や期待に応えなければならないという板挟みというのがありそうだ。
若手との仕事観のギャップやマネジメントの変化に対応しなくてはいけないジレンマもあるだろうし、働き方に関する変化の過渡期ともいえる50代社員は、「今の自分にできることがまだある」と実感できるような職場環境が重要な要素なのかもしれない。
■「会社を辞めたいと思う瞬間」調査概要
調査期間:2025年4月28日~2025年5月12日
調査方法:コミュニティサービス『OpenWorkキャリア』にて実施(単一回答)
有効回答者数:OpenWorkキャリアユーザー543人
https://career.openwork.jp/question/abzdqui4e1kxj9
構成/KUMU