
電通は、企業が行なうさまざまなマーケティングのシナリオを事前に検証して、KGI(重要目標達成指標)達成に向けた効果的なマーケティングを実現する新たなシミュレーションモデル「People Simulator」を開発。2025年5月27日より顧客向けサービスとして提供を開始した。
プランニングの高度化やマーケティングのmROI最大化に貢献
昨今、企業のマーケティング施策においては適切な予算設定・配分が一層重要となり、mROI(マーケティングの投資対効果)の向上が求められている。
一方、生活者関連のデータは膨大で多種多様化しており、データを活用したマーケティング施策の高度化も進展しているが、生活者の意識や行動実態を十分に理解した上でのマーケティングは容易ではなかった。
このため電通では、2005年から「人」を基点とした各種データに基づくマーケット手法の開発を進め、自動車や飲料などの分野で検証を重ねることで、独自の手法を構築してきた経緯がある。
そして誕生した「People Simulator」は、「エージェント・ベース・モデル(Agent-Based Model)」(※1)に基づいて仮想市場を構築。生活者一人ひとりを「エージェント」としてモデル化することで、複雑な消費行動を再現するシミュレーションモデルとなった。
■「People Simulator」イメージ
■市場の把握に加え、セグメントごとのシェアや個人の購入意向などの検証も可能
独自調査に加え、同社が保有する生活者のパネルデータや広告統計データを掛け合わせることで、生活者一人ひとりの意識や行動を精緻に再現できるため、市場全体の把握に加え、セグメントごとのシェアや個人の購入意向などの検証が行なえるという。
時間軸を考慮したシミュレーションも可能で、自社ブランドや競合ブランドのコンディションに合わせて、伝えるメッセージや施策の最適な順番などのプランニングに生かすことができる。
プランニングの段階から、オフラインとオンライン、ブランドイメージの形成など、分断されがちな各マーケティング施策をシームレスなマルチシナリオとして比較検討することが可能なため、KGI達成に向けて最もmROIが高いと見込まれるプランを選択できる。
さらに今後は、同社グループの大規模調査データと生成AI技術を掛け合わせて構築した「1億人のペルソナ」を仮想的に再現した「People Model」(※2)との連携を行ない、さまざまなカテゴリーでモデル化を実現していくという。また同時に、「People Simulator」のAI化を図ることで、さらなる機能拡張も推進していく。
※1 複数のエージェントが同時に活動し相互に作用する状況をシミュレートすることで、複雑な現象を再現し予測するコンピュー タ・モデリングの一種。
※2 2025年5月19日発表:国内電通グループ、AIネイティブ化を加速する独自のAI戦略「AI For Growth2.0」を発表
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0519-010884.html
■「People Simulator」を活用したアウトプット例
関連情報
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2025/0527-010889.html
構成/清水眞希