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なぜ今になって爆売れ?累計販売数15億袋のロングセラースナック「スコーン」が若者を虜にする理由

2025.05.28

■連載/ヒット商品開発秘話

湖池屋の『スコーン』といえば1987年10月に発売されたロングセラーのコーンスナック。2022年3月に実施したリニューアルが奏功しコーンスナック市場で売上ナンバー1になった。

『スコーン』といえば、本格的かつ濃厚でやみつきになる味わいと“カリッ”と“サクッ”とした軽い食感が特徴。現在、〈やみつきバーベキュー〉〈とろけるクアトロチーズ〉〈海老のとりこ〉〈絶品焼きとうもろこし〉の4種をラインアップしており、これまでに累計約15億袋を販売している。

湖池屋のコーンスナック『スコーン』。コーンスナック市場の売上ナンバー1ブランドで、現在4フレーバーを販売している(写真は〈やみつきバーベキュー〉と〈とろけるクアトロチーズ〉)

軽快な食感と濃いめの味付けの両立

1987年当時の日本のスナック菓子市場は現在同様、ポテトチップスの存在感が大きいものの、現在ほど基材が多様ではなかった。しかし、スナック菓子の最新トレンドが発信されるアメリカでは、日本ではまだなじみが薄かったコーンスナックが一般的で広く親しまれていた。

『スコーン』が企画された当時、主力であるポテトチップス製品は競合が登場していた中でも順調に売れていたが、スナック菓子市場が成長するにしたがって消費者がポテトチップス以外のものを求めるようになると同社は予測。マーケティング本部マーケティング部第2課 課長代理の岸田亮氏は『スコーン』の開発を決めた理由として、次の2点を挙げる。

・ポテトチップスとは違う独特の食感が魅力的なコーンスナックに参入することでスナック菓子市場を盛り上げる
・さらなる成長を目指すためポテトチップス以外のスナック菓子に参入して総合スナック菓子メーカになる

同社として初のコーンスナックへの挑戦のため、『スコーン』が誕生するまでにはクリアしなければならない壁がいくつもあった。最大の壁は量産設備と生産ラインの構築。設備をどう調達するのか?どの工場で生産するのか?といったことを検討しなければならなかった。このため、開発から発売まで数年単位の時間を要した。

開発当初からこだわり、現在も受け継がれているのが濃いめの味付け。市場からつねに求められていることと、コーンスナックならではの軽快な食感との相性がいいと考えられたことから、味付けは濃くすることにした。濃厚さを表現できるものとして採用されたフレーバーが、現在も発売されているバーベキューとチーズの2つだ。

食感については、先行して発売されていたコーンスナックとの差別化もあり、現在にも受け継がれている独特の“カリッ”と“サクッ”とを追求していった。「味付けも含め、何度も試作を重ねたと聞いています」と岸田氏は話す。

印象深い『ドはまりスコーン』と『スゴーン』

需要が不確かな中で発売された『スコーン』はスタートダッシュに成功し、予想を大幅に上回る売上をあげた。人気を決定づけたのは、1988年に始まったテレビCM。軽快な手拍子に合わせて社交ダンスを踊るシーンに、「スコーン スコーン 湖池屋スコーン スコーン スコーン 湖池屋スコーン カリッとサクッとおいしいスコーン」のフレーズが重なった。

1987年10月に発売された『スコーン』和風バーベキュー味

同じく1987年10月に発売された『スコーン』チーズ味

これまでに発売したフレーバーは軽く150種類を超えると言われている。新フレーバーが発売される数は年によりバラバラ。10フレーバー近く発売される年もあれば、1フレーバーや2フレーバーしか発売されない年もある。

「調子がいい時ほど新フレーバーの発売は少ないです」

こう明かすのはマーケティング本部マーケティング部第1課 課長の清水拓巳氏。実際売れ行きが好調の2023年と24年を見ると、23年に発売された新フレーバーは3つ(至福の濃密ごま、チョベリグ!!スパイスカレー、絶品焼きとうもろこし)で、24年は発売されていない。

湖池屋
マーケティング本部マーケティング部第2課
課長代理 岸田亮氏(右)
マーケティング本部マーケティング部第1課
課長 清水拓巳氏

150を超えるフレーバーの中で強く印象に残っているものは何か?岸田氏、清水氏にそれぞれ聞いてみた。

岸田氏が挙げたのは2017年7月に発売された『スゴーン』。『スゴーン』は『スコーン』をつくる技術に素材のこだわりを掛け合わせたもの。〈海老まるごと〉〈鶏炭火焼〉などのフレーバーを発売している。「パッケージの形状やデザインからして高そうに見えますが、見た目と味の両面から新しいチャレンジをした商品です。個人的には味のクオリティーの高さに衝撃を受けました」と振り返る。

2017年7月に発売された『スゴーン』。写真の〈海老まるごと〉と〈鶏炭火焼〉のほか、〈和牛すき焼き〉〈黒糖きなこ〉〈帆立浜焼き〉〈燻製サーモン〉を発売している

いっぽう清水氏が挙げたのは、2014年9月に全国のコンビニエンスストア限定で発売された『ドはまりスコーン』。「思わず指まで舐めたくなるほどの濃厚さに“ドはまり”しちゃう」をコンセプトに開発された『スコーン』で、〈濃厚カルボナーラ味〉などが発売されている。「お客様に嫌がられてしまいがちな指が汚れてしまうことに対し、発想を転換して“指までおいしい”と伝え、味が濃いという『スコーン』の特徴をうまく届けることができたと思っています」と明かす。

2014年9月に発売された『ドはまりスコーン』。全国のコンビニエンスストア限定で発売されたもので、〈濃厚カルボナーラ味〉のほか、〈濃厚デミハンバーグ味〉〈濃厚チキン南蛮味〉〈濃厚台湾まぜそば味〉などが発売されている

発売32年目で初のフルリニューアル

『スコーン』は発売以来、ユーザーの嗜好の変化を捉え生地の配合や味付けなどを絶えず見直してきたが、発売から32年目の2019年2月に初のフルリニューアルが実施された。フルリニューアルが実施された背景を岸田氏は次のように話す。

「『スコーン』は発売から時間が経つにつれて若年層との接点が弱くなってきたところがありました。昔ながらのイメージが強い懐かしの定番品というイメージを現代にマッチするように改め、若年層との接点をもう一度強固にするためにリニューアルを実施することにしました」

フルリニューアルは若年層に『スコーン』は自分たちの食べ物と思ってもらえるよう、濃厚な味わいを強化し食感も見直したほか、パッケージデザインも現代風のイメージに刷新。とくに食感は、若年層が満足感を得られるよう “カリッ”“サクッ”というよりも“ザクッ”とさせることにした。

初のフルリニューアルを実施し2019年2月に発売された『スコーン』。写真の〈憧れのクアトロチーズ〉〈がっつきバーベキュー〉〈どはまり濃いもろこし〉のほか、〈禁断のシーフード〉などが発売されている

フルリニューアルはユーザーの拡大に寄与。懸案となっていた若年層の獲得も、若者を意識したテレビCMの放映などもあり増やすことができた。

原点回帰した中身とテレビCM

ただ、フルリニューアルの効果は長く続かず課題も見えてきたことから、同社は再び大幅なリニューアルを行なうことにした。清水氏は次のように話す。

「2019年のフルリニューアルは若年層のユーザーが獲得できるなど成果をあげることができましたが、思ったほど勢いが持続しませんでした。味の濃厚さと食べ応えを強化したことで、味のくどさや連食性が課題として見えてきました。『スコーン』が大事にしてきた軽快な食感と味の濃厚さのうち、味の濃厚さがやや先行して伝わってしまった面がありました」

中身の見直しでカギを握ったのは生地。軽快な食感になるよう口溶けを良くした。これに合わせ、味付けも後切れが良くなるように改良した。フレーバーは〈やみつきバーベキュー〉〈とろけるクアトロチーズ〉〈カリサク濃密海老〉の3つ(カリサク濃密海老は現在、〈海老のとりこ〉にブラッシュアップ)。食感、味、パッケージのすべてが生まれ変わった。

現在販売されている〈海老のとりこ〉。2022年3月に発売された〈カリサク濃密海老〉をブラッシュアップする形で誕生した

リニューアル前の『スコーン』はコーンスナック市場で売上第4位。商品は原点回帰を志向したものになったが、販促でも原点回帰する。1988年に初めて流したテレビCMを現代風にアレンジしてリバイバルさせたのである。CMキャクターに中島健人さんを起用し、88年と同じ場所で社交ダンスを踊ってもらい同様のシーンを再現。おなじみのあのフレーズも生かした。テレビCMのリバイバルは話題を呼び、1988年当時のテレビCMをリアルタイムで見ていた世代はもちろんのこと、『スコーン』のことを知らない若年層の獲得につながった。

『スコーン』の中で一番売れているのは〈やみつきバーベキュー〉だが、直近だと2023年11月に発売された〈絶品焼きとうもろこし〉がもっとも勢いがある。発売開始後1週間で100万袋を売り上げたほどで、清水氏も「『スコーン』ブランドのシンボルになるぐらいのポテンシャルを感じているところです」と話す。

2023年11月に発売された〈絶品焼きとうもろこし〉。不動のレギュラーであるバーベキューの存在を脅かすほど、現在販売中の『スコーン』で一番売れ行きに勢いがある

〈絶品焼きとうもろこし〉の売れ行きは不動のレギュラーであるバーベキューの存在を脅かすほど。岸田氏は〈絶品焼きとうもろこし〉について「濃厚でおつまみ需要が高かった『スコーン』の喫食シーンを広げ、3時のおやつなどいろんなタイミングで食べられるイメージにしてくれたところがあります」と話す。

取材からわかった『スコーン』のヒット要因3

1.飽くなき味の追求

はっきりした濃い味わいが特徴だが、濃いだけでは飽きがくる。飽きがこないようつねに味を追求し続けてきた。1987年の発売時からあるバーベキューやチーズが現在も支持を集めているのは、こうした背景による。

2.課題への素早い対応

嗜好の変化などを敏感に捉え生地や味わいを細かく見直してきたが、2019年にフルリニューアルで課題だった若年層を取り込んだ。その一方「重たい」「くどい」といった課題も見えたことから、3年後の2022年に食感と味わいを変えてリニューアル。課題を認識したら素早く手を打ち続けてきた。

3.原点を大切にしている

2022年のリニューアルで1987年に発売された当時のような軽い食感と濃厚な味わいを両立させたほか、初のテレビCMを現代風にアレンジしてリバイバルさせた。中高年層には懐かしいが若年層には新鮮で、性別・世代を問わず幅広い支持を獲得している。原点回帰はコーンスナック市場で売上ナンバー1を実現する大きな要因になった。

2025年は現在のところ、定番フレーバーの差し替えなどは予定されていない。既存の4フレーバー、とくに〈絶品焼きとうもろこし〉をさらに知ってもらい手に取ってもらうことを最優先で考えている。現在の『スコーン』の調子の良さは、こんなところにも表れている。

製品情報
https://sucorn.koikeya.co.jp

取材・文/大沢裕司

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