裁判所のジャッジ
裁判所は「こりゃ違法だね」と判断。会社に対して30万円の賠償を命じました。
▼所持品検査できるケース
裁判所は概要以下のとおり述べました。「所持品検査できる旨の就業規則などが必要。そういう就業規則があったとしても、所持品検査を必要とする合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で、しかも制度として、職場従業員に対して画一的に実施されるものでなければならない」と判示(これは最高裁で示されている基準です<西鉄事件:最高裁昭和43年8月2日判決>)。
▼本件について
裁判所は即切りでしたね。「そもそも所持品検査できる旨の就業規則ないよね。この点で既に違法と言わざるをえない」と判断。所持品検査の必要性や相当性の検討に進む前にバッサリ切りました。
▼ 会社側の反論
おそらく会社側の証人ですが「Xさんの身の潔白を証明するために所持品検査をしたんです」と証言しましたが、裁判所は受け入れず。
また会社は「会社の信用を守り、顧客Aさんを納得させるためだった」と主張しましたが、裁判所は「所持品検査は常に従業員の人権を侵害するおそれがある。なのでそれだけの理由では違法性を否定することはできない」と判示しました。
▼Xさんのどんな権利を侵害?
・ 名誉毀損および信用侵害
〈理由〉
所持品検査されているところを他の従業員にも見られたなど
・プライバシー侵害
〈理由〉
身体検査によって腰痛防止ベルトの着用を暴露された
・ 自由権の侵害(身体的自由)
〈理由〉
Xさんの承諾がないのに身体検査および所持品検査
▼ なぜ30万円?
Q.
なんで慰謝料の金額が30万円なんですか?
A.
よく聞かれるんですが裁判官の采配なんです。裁判官の脳内でいろんな事情がミックスされて金額がはじき出されます。今回の裁判官がいうには「Xさんが社内で受けていた評価、本件身体検査を含む所持品検査の目的・態様・その後の営業所長Yらの対応など、諸般の事情を総合考慮」したら30万円とのことです。
まぁココは出たとこ勝負なんですが、腰痛防止ベルト暴露が加算ポイントになったことは間違いないと思います。あとは、Xさんは勤続約23年で優秀な社員だった(無事故表彰を受けたこともあった)要素などが考慮されたと思います。
さいごに
「プライバシーへの踏み込みが過ぎない?」と感じたら、社外の労働組合か弁護士に相談してみましょう。今回は以上です。これからも働く人に向けて知恵をお届けします。またお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
「ムズイ法律を、おもしろく」をモットーにコンテンツを作成している弁護士
YouTube:https://www.youtube.com/@saiban_LABO
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