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「叱る」と「指導する」の境界線は?部下の成長を促すフィードバック術

2025.05.17

はじめに

ビジネスの現場において、部下や後輩の育成はリーダーやマネージャーにとって避けて通れない重要な役割です。しかし、「部下を指導する」という言葉には、「厳しく叱ることも含まれるのか?」「どこまでが指導で、どこからが叱責になるのか?」といった疑問や戸惑いがつきまといます。

本稿では、「叱る」と「指導する」という二つの行為の明確な違いを確認し、相手の成長を真に促すための効果的なフィードバック、すなわち「指導する」ことに焦点を当てたコミュニケーションのヒントをご紹介します。

「叱る」とは何か?

まず、「叱る」という行為について考えてみましょう。「叱る」は、相手の過去の特定の言動や行為に焦点が当てられます。期日を守らなかった、ルールを破った、明らかなミスをしたなど、問題のある行動を指摘し、それを改めさせることを主な目的とします。

そこには、規範やルールを守らせる、危険な行為を止めさせるといった緊急性や、問題行動に対する明確な「非」の指摘が含まれます。感情が伴うこともありますが、本来は相手の今後のためを思い、冷静に問題点を伝えるべき行為です。

「指導する」とは何か?

一方、「指導する」は、相手の現在から未来にかけての成長に焦点を当てます。特定のスキルを習得させる、業務知識を深めさせる、あるいはキャリア目標達成に向けて能力を引き出すなど、相手の能力向上や目標達成をサポートし、より良い状態へ導くことを目的とします。

指導においては、単に問題点を指摘するだけでなく、その原因を共に考えたり、具体的な改善策や代替案を提示したり、必要な知識や情報を提供したりといった、教育的かつ建設的なアプローチが中心となります。対話を通じて、相手自身が気づきを得て、自ら考え行動できるよう促す側面が強いのが特徴です。

「叱る」と「指導する」の境界線

この二つの違いを明確にすると、その境界線が見えてきます。

  • 焦点: 叱るは過去の行為、指導するは未来の成長
  • 目的: 叱るは問題行動の改善、指導するは能力向上と目標達成
  • アプローチ: 叱るは指摘と是正、指導するは教育とサポート
  • 力点: 叱るは「なぜできなかったのか(いけなかったのか)」、指導するは「どうすればできるようになるのか」。

「叱る」は、いわば危険を知らせる警報や、誤りを正すためのブレーキのような役割を果たします。一方、「指導する」は、地図を示し、進むべき道を共に考え、必要なツールを提供するアクセルのような役割です。

 なぜこの違いが重要なのか

ビジネスシーンにおいて、この違いを理解し、適切に使い分けることは極めて重要です。

不適切な場面での「叱る」は、相手を精神的に追い詰め、萎縮させ、最悪の場合ハラスメントと受け取られるリスクを孕みます。これは、相手の成長意欲を削ぎ、組織全体のエンゲージメントを低下させることにも繋がりかねません。

逆に、「指導する」べき場面で「叱る」に終始してしまうと、相手は何をどう改善すれば良いのか理解できず、同じ過ちを繰り返したり、自ら考えて行動する力が育たなかったりします。

 成長を促す「指導」としてのフィードバック術

識学では成長を促す経験管理のことを『結果の完了』と呼んでいます。

結果の完了=結果の修正改善の手法のことで、内容は以下の通りになります。

  • 結果の明確化
  • 不足の明確化
  • 不足を埋める為の行動変化
  • 次の約束

全部話すと長くなるので、ここでは②③を中心に相手の成長を促す「指導する」ためのフィードバックはどのように行えば良いのか、いくつかのポイントをご紹介します。

 【不足を明確にする】

  1. 行為に焦点を当てる(人格を否定しない): 問題なのは相手という人間ではなく、その特定の行為です。「なぜあなたはいつもこうなんだ」ではなく、「今回の〇〇という行動についてなのだけど」というように、具体的な行動に限定して伝えましょう。
  2. 具体的に伝える: 何が、いつ、どこで、どのように問題だったのかを具体的に伝えます。「ちゃんとやって」ではなく、「〇〇の資料、日までに提出することになっていたけど、まだ提出されていないね」というように、事実に基づいて伝えましょう。
  3. その行為がもたらす影響を説明する: なぜその行為が問題なのか、その結果どのような影響(チームへの影響、顧客への影響など)が出ているのかを具体的に説明することで、相手は自身の行動の重要性を理解しやすくなります。

※人は認知バイアスや防衛本能から、自身の不足を正しく認識しにくい性質があります

 【不足を埋める為の行動変化】

  1. 改善策を考えさせる: 問題点を指摘するだけでは「叱る」で終わってしまいます。

「指導」に繋げる為には「では、どうすればいい?」と相手に投げかけることが重要です。「次はどうすれば同じことが起きないかな?」というように、解決策や今後の行動について考えさせ自分から言わせることが重要です。ここで安易に上司が示唆やアドバイスをしてしまうと、部下は自分で考えなくなってしまいます。ここで行動変化が出ない部下は不足が明確になっていないか(免責がある)、知識が足りないかです。

  1. 相手の状況や考えを聴く: フィードバックは一方的なものであってはなりません。なぜその行動をとったのか、現状をどう考えているのかなど、相手の言い分や状況もしっかりと丁寧に聴く姿勢が不可欠です。
  2. 期待と信頼を伝える(ゴールイメージの共有) フィードバックの最後には、相手の成長への期待や、今後の改善に対する信頼を伝えましょう。何故ならフィードバックの目的は「部下を成長させること」だからです。

部下は目標達成できるか不安を抱えていますが、上司が「達成している自分」を信じてくれている前向きなメッセージで締めくくることで、相手は次に向けて前向きな気持ちになりやすくなります。

まとめ

以前の職場で、「成績が良い時だけ大切にされ、悪くなったら見捨てられるのでは」と感じさせる上司が何人かいました。案の定、そういう上司のもとからは人が次々と離れていきました。

この経験から、マネジメントにはスキルだけでなく、部下の「未来の可能性を信じる」といった人間的な姿勢が不可欠だと強く感じています。そうでなければ、心からの「指導」は難しいと思うのです。役割を果たせない人に給与を払えないのは当然ですが、心の在りようとして、部下の可能性を信じるスタンスで向き合うことが重要だと学びました。

実は、厳格に見える識学にも通じる点があります。「姿勢のルールを守り、自らの役割を果たそうと努力している人は絶対に見捨てない」とお伝えしているのはそのためです。

これは、「人が悪いのではなく、成果に繋がる行動がまだできていないだけ」という考えに基づいています。チームの勝利に向けて、仲間の可能性を信じ行動を促すこと、それが真の成長に繋がるのです。

最後に、「叱る」と「指導する」は似て非なるものです。叱るは特定の過ちの是正に、指導するは相手の未来の成長にフォーカスしています。ビジネスの現場で求められるのは、単に問題行動を指摘するだけでなく、その経験を糧に相手がより大きく成長できるような「指導する」ためのフィードバックです。

今回ご紹介したフィードバック術を参考に、日々のコミュニケーションの中で「どうすれば相手の成長に繋がるか」を考えながら指導を実践してみましょう。その積み重ねが、個人の成長、そして組織全体の力になります。

文/識学コンサルタント 大賀達雄

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