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累計販売数は7万4000個超!ドンキで売れまくっている柔軟剤「メロウチャーム」の正体

2025.05.14

■連載/ヒット商品開発秘話

香りは商品購入の強い動機になるもの。香りの良さに惹かれて、つい何かを買った経験を持っている人も多いことだろう。

いま、ドン・キホーテとその系列店で香りの良さから売れているフレグランスブランドがある。リベルタが2024年10月に立ち上げた『MELLOW CHARM(メロウチャーム)』のことだ。

『メロウチャーム』のブランドコンセプトは「この香り、想い出になる」。香りを通して生活に豊かさをプラスすること、香りに素敵な想い出を呼び起こすきっかけになる記憶のスイッチになってほしいという想いからつくり上げた。柔軟剤をはじめフレグランスUVミストとファブリックミストを展開。第1弾で発売した柔軟剤〈ラッキーピンクフラワーの香り〉は累計販売数が7万4000個を超えた。

2024年10月に立ち上がったフレグランスブランド『MELLOW CHARM』。第一弾の柔軟剤〈ラッキーピンクフラワーの香り〉は、摘みたてのジャスミンとイリスに、爽やかなグレープフルーツが重なった上質で華やかな香りがする。価格は1099円(600mL)/1648円(詰め替え用1800mL)

いい香りのするものはヒットしやすい

構想されたのは2022年。きっかけは、ドン・キホーテと商談を重ねる中で、時代背景やSNSでのバズりといった特別な要因がなくても売れたものは香りにまつわるものだということに気づいたことからだった。常務取締役の筒井安規雄氏は次のように話す。

「ドン・キホーテには特別な要因がなくてもヒットしている商品がカテゴリー問わずあるのですが、その中でも香りにまつわるものはカテゴリーを問わずよく売れていることが販売実績データから見えてきました。実際、ドン・キホーテの本部バイヤーからも、香りに特徴があり誰が嗅いでもいい香りだと評価する商品は比較的、どのカテゴリーでもヒットしやすい傾向があるという話がありました」

第1弾の商品を柔軟剤にしたのは、コロナ禍だった2022年当時は衛生に対する関心が高く洗剤や柔軟剤といった洗濯用品が非常によく売れていたことと、洗濯は面倒臭かったりつまらなかったりする行為の代表であるからだった。「つらくて面倒臭い洗濯をハッピーな気分にさせるものはニーズがあります」と筒井氏は話す。

開発に着手したのは2024年に入ってから。構想から開発着手まで2年近く空いたのは、新型コロナでダメージを受けた主軸の化粧品事業の立て直しが優先されたためであった。角質ケアの『ベビーフット』をはじめとした化粧品ブランドの販売を回復させることが国内/海外市場で急務であったことから、同社は経営資源を化粧品事業に集中させた。化粧品事業の立て直しにある程度メドがついたことで、開発に経営資源を振り向けることができるようになったのが2024年だったわけである。アフターコロナで人流が戻り対面コミュニケーションが復活していたので、開発のタイミングとしては香りの重要性が高まっていた時だった。

洗濯物から香るエレガントな香り

初の柔軟剤に採用した〈ラッキーピンクフラワーの香り〉は、世界的に人気がある香りをモチーフにした。企画開発者をはじめとした製造サイドは、元になったその香りの再現を目指すことになった。筒井氏は香りづくりについてこう振り返る。

「香りは際限なくコストをかけることができればすごくいいモノができます。ただ、ハイブランドならともかく私たちがつくるものは市場価格の相場を超えるわけにはいかないので、開発・製造にかけられるコストには限りがあります。制限がある中で再現するのはかなりタフなことだったはずです」

〈ラッキーピンクフラワーの香り〉は完成までに半年ほどかかっており、20回近く調香をやり直した。いったんは申し分ないものができたが、実際洗濯に使ってみたところ、せっかくの香りが飛んでしまい、再び調香を見直すことになったことから時間を要した。

「洗濯物が仕上がった時にフレグランスをかけたようなエレガントな香りがしないと意味がありません。香りを『心の喜びにつなげたい』という想いが強くあったので、調香は妥協しませんでした」と振り返る筒井氏。化粧品の香りと同じく3、4回程度の試作で決まると考えていたが、思った以上に時間を要したため、2024年春に上市する予定が同年10月にずれ込むことになった。

スクエアボトルにビビッド調の配色

香り以外では原料とパッケージデザインにもこだわった。原料についてはオーガニックエキスを配合するなどコストをかけ、衣類の繊維に対してやさしく赤ちゃんの衣類にも使えるようにしたほど。付加価値として静電気の発生や花粉の付着を抑える成分を配合している。

パッケージデザインについてはプラスチックのスクエアボトルに香りをイメージさせる配色を施した。

「華やかさのない売場に1つのビビッド調の芸術作品を完成させたいという想いがありました。通りかかった際に目を奪われるような売場をつくりたかったので、ボトルのカラーはビビッド調にこだわりました」

パッケージデザインについてこのように明かす筒井氏。色合いを決めるだけで10回ほど見直しているが、ボトルの形状が決まった後のモックアップの検証だけで5回はやり直している。カラーチップ(色見本)通りにならないことがあったからだ。営業を担当したプロダクトソリューション部 部長の篠宮兼吾氏は「つくったモックアップを並べ、女性社員に好きな色を選んでもらうこともしました」と振り返る。

リベルタ
常務取締役 筒井安規雄氏(左)
プロダクトソリューション部 部長 篠宮兼吾氏

店頭をブティックのように演出

篠宮氏は、柔軟剤は従来扱ってきた商品と比べて製造ロットが大きく在庫を大量に抱えることになることから、販売面でプレッシャーを感じていた。「どのくらいのスピードで売れるかという試算は繰り返し実施しました」と明かす。

控え目に試算した結果では、リピートオーダーは2025年9月頃になると想定。しかし、発売してみたところ予想よりも売れ行きが良く、2025年1月にリピートオーダーをすることになった。

新規参入のブランドが来店客の目に留まり手に取ってもらうためには、店頭で目立つ工夫も必要。そこで、ブティックに行くようなワクワクする売場をつくることにした。VMD(視覚的に魅力のある店頭をつくることで消費者の購買意欲を喚起すること。ヴィジュアル・マーチャンダイジングの略)で黒を基調にしたブティックやハイブランドのコスメショップのような雰囲気を演出。ブランドコンセプトの「この香り、想い出になる」を中央のボードに明示するようなこともした。

InstagramやTikTokでインフルエンサーを活用した投稿も実施。発売から約1か月後から販促目的でSNSの活用を始めたが、TikTokで動画再生数が伸びたあたりから売れ行きが伸びていった。

ボトルの色が映えやすかったことがSNSでは奏功したが、これは店頭でも同じだった。篠宮氏は次のように話す。

「発売開始とともにVMDにこだわり店頭をつくってきましたが、ナチュラル系の商品が多い柔軟剤売場の中でパキッとしたピンクはかなり映えました。VMDだけではなくボトルの色と形もハマり、ドン・キホーテからも好評でした」

ドン・キホーテでの店頭陳列例

柔軟剤以外のアイテムを着々と拡大

『メロウチャーム』は2025年からアイテムの拡大が始まった。まず2月に、柔軟剤に〈エレガントブルーローズの香り〉を追加。〈ラッキーピンクフラワーの香り〉同様、世界的に人気のある香りをモチーフに調香した。開発自体は〈ラッキーピンクフラワーの香り〉と並行して行なわれており、発売時期をずらした。「柔軟剤は製造ロットが大きいので、もし売れ行きが思わしくなかったら私たちは在庫を抱えるというリスクが生じます。まずは〈ラッキーピンクフラワーの香り〉だけを発売し、様子を見ることにしました。初動が良かったので、自信を持って〈エレガントブルーローズの香り〉を発売することができました」と筒井氏は明かす。

2025年2月に発売された柔軟剤〈エレガントブルーローズの香り〉。フレッシュなローズとイリスに、柔らかなムスクが重なった爽やかで魅惑的な香りがする。価格は1099円(600mL)/1648円(詰め替え用1800mL)

3月には香りをまといながら保湿とUVケアができるフレグランスUVミスト、4月に香りをまといながら臭い対策ができるファブリックミストが発売されている。どちらも〈ラッキーピンクフラワーの香り〉〈エレガントブルーローズの香り〉が採用されているが、フレグランスUVミストに関しては、新たに〈フレッシュピュアシトラスの香り〉も使われている。

2025年3月に発売されたフレグランスUVミスト。ボディだけでなく髪の毛にも使え、紫外線対策がひと吹きで完了する。中央の〈フレッシュピュアシトラスの香り〉は、みずみずしいバーベナとオレンジに、ピュアでクリーンなスズランが重なった清涼感あふれる香りがする。価格は1100円で内容量は40mL

2025年4月に発売されたファブリックミスト。衣服やリネン類、ソファーやカーテンなどの布製品に吹きかけると、瞬く間に高級感あふれる香りが全体を包み込むほか、気になるニオイもしっかりケアできる。使いやすさを考慮し、プッシュしやすくなるようトリガーを大きめにしている。価格は748円で内容量は300mL

〈フレッシュピュアシトラスの香り〉はこれまでつくられた2つの香り同様、世界的に人気のある香りをモチーフに調香した。「ボディフレグランスは直接体に吹きかけるものなので、ユーザーがその日の気分などによって使い分けられるよう香りの選択肢を増やすことにしました」と筒井氏は話す。

取材からわかった『メロウチャーム』のヒット要因3

1.必要とされたタイミングで上市

アフターコロナで人流が回復し対面コミュニケーションが復活。人の印象を左右する香りの重要性が高まった。こういう背景もあり、フレグランスの新ブランドが受け入れられやすかった。

2.手に取ってみたくなる店頭づくり

レッドーオーシャンの柔軟剤市場に香りに特化した商品で参入したが、柔軟剤の香りは使わないとわからないのでトライアルの獲得がカギを握った。ブティックのような店頭を演出するVMD、情緒的な表現で示したブランドコンセプト、目を引くパッケージデザインが一体になり、トライアルの獲得につなげた。

3.妥協なきつくり込み

手に取らせることができても、肝心の商品力がなければ消費者の不評を買うだけ。特徴とすることにした香りは世界的に人気のある香りの再現を目指した。高価な香料を使うなど原材料にもこだわり、妥協しなかった。

今後の構想として「ありとあらゆる香りの商品を出そうと思っています」と明かす筒井氏。すでに新商品の発売がいろいろ計画されている。

ドン・キホーテ専売品として立ち上げたブランドではあるが、ブランドの所有者は同社であることから、商品のカテゴリーによっては他の小売店でも展開する可能性も残っている。香りの種類、商品アイテム、販路ともに、拡大の余地が大きく、今後のブランドの成長・発展が期待される。

製品情報
https://mellowcharm.com/

取材・文/大沢裕司

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