
リモートワークが一般化し、ビデオ会議は今や仕事の標準ツールとなった。オフィスでの対面会議が減少し、オンライン上でのやり取りが増えているが、世界各国におけるビデオ会議への向き合い方にはどのような違いがあるのだろうか?
英会話個人レッスンを提供するオンライン語学学習プラットフォームPreplyはこのほど、世界21ヵ国の男女29,538人を対象に「ビデオ会議」の実態調査を実施し、その結果を発表した。
日本のリモートワーク事情:3割以上がパジャマでビデオ会議に参加
「ビデオ会議でパジャマのままor上半身だけ着替えて参加したことはあるか」と質問したところ、日本の3割以上(32.2%)のビジネスパーソンが「ビデオ会議にパジャマや上半身だけ身なりを整えて参加したことがある」と回答した。日本ではビジネスシーンにおいて礼儀や身だしなみを重視する文化が根強い一方で、リモートワークの普及によって「快適さ」を優先する傾向も少しずつ広がりつつあるのかもしれない。
しかしこの数値は、調査対象国の中で最も低い水準だ。例えば、香港(63.2%)、トルコ(52.8%)、アメリカ(50.3%)では過半数が「パジャマ参加」の経験ありと回答した。
逆に、日本では「ビデオ会議中も常にきちんとした服装をする」と答えた人が57.6%に上り、タイ(66.9%)に次いで2番目に高い結果となった。オンラインでも服装に厳格な姿勢を持つ傾向が見られる。ただし、「機会があればカジュアルな格好で参加したい」と考える人の割合(10.2%)は調査対象国の中で最も高く、柔軟な働き方への関心が高まっていることもうかがえる。
この結果から、各国の働き方や文化の違いが浮き彫りになる。日本では「ビデオ会議でも対面と同様に礼儀を重んじる」一方で、海外では「リモートワークならではの快適さを重視」する傾向が強いようだ。
世界共通のビデオ会議あるある問題「ミュートのまま話し続ける」
ビデオ通話中に最も頻繁に起こるトラブルとして、54.1%の回答者が「自分がミュートのまま話し続けた」「誰かがミュートを解除せずに話し、会話が途切れた」と回答した。このミスは日本だけでなく、アメリカ・イギリス・フランス・イタリア・シンガポール・香港などでも半数以上が経験しており、世界共通の「ビデオ通話あるある」と言えるだろう。
また、国ごとの特徴が見られるトラブルもあった。
例えば、日本では「子どもの乱入」を経験した人はわずか6.3%で、調査対象国の中で最も低い結果に。一方、トルコ(21.1%)やブラジル(19.2%)では約5人に1人がこのトラブルを経験していた。
また、「ペットが突然映り込んだ」という経験も、日本は9.4%と低く、アルゼンチン(20.3%)やポーランド(17.2%)に比べて大きな差があった。ペットとの距離感や生活空間の違いが影響している可能性がある。
こうした「ビデオ通話あるある」に対し、各国ではどのような反応をしているのだろうか?
ビデオ会議中のハプニング対応、各国ごとに異なるリアクション
ビデオ通話中にペットや子どもが映り込んだ際の対応には、国ごとに大きな違いが見られた。日本(45.7%)、ブラジル(40.9%)、米国(41.0%)では「笑って軽く流す」人が多く、フレンドリーな対応が特徴的だった。
一方、香港(47.7%)、コロンビア(34.6%)、タイ(30.9%)は「無視して会議に集中する」傾向が強く、特に香港は圧倒的にこの割合が高いのが特徴だ。
また、「丁寧に状況の対応をお願いする」割合が高いのはシンガポール(22.0%)、タイ(21.9%)、香港(24.1%)で、ビジネスの厳格なルールを重視する文化が影響していると考えられる。
逆に、「気にしない」と回答した割合が最も高いのはスウェーデン(25.9%)で、北欧の寛容な働き方が表れていると言えそうだ。
こうした国ごとの文化の違いを理解することで、国際的なオンラインミーティングをよりスムーズに進めるヒントになるかもしれない。
ビデオ会議の効果、国ごとに評価が分かれる理由とは?
続いて、ビデオ会議について、効果的だと感じているか質問した。
「ビデオ会議は対面会議と同じくらい効果的」と考える割合が最も高かったのはブラジル(75.3%)、次いで香港(70.9%)、メキシコ(64.1%)となった。
日本は52.4%が「ビデオ会議は対面と同じくらい効果的」と回答し、デジタル化を受け入れつつも、急速な移行には慎重な姿勢を見せている。
この違いは、ビジネス文化や労働環境、さらには「人と対面で話すことの価値」をどれだけ重視するかによって左右されている可能性がある。 企業が国ごとのワークスタイルを理解し、最適なコミュニケーション手法を選択することが、今後のグローバルビジネスの鍵となるだろう。
では、ビデオ会議の頻度は、どのように感じているだろうか?
「ビデオ会議疲れ」日本も約3割が負担を感じる現状
調査の結果、「ビデオ会議が多すぎる」と感じる割合が最も高かったのは香港(64.9%)、次いでトルコ(53.5%)、シンガポール(50.3%)となった。特に香港では3人に2人が「ビデオ会議が多すぎる」と回答しており、頻繁なオンライン会議が負担になっている可能性が示唆される。
一方、日本では約3割(25.9%)がビデオ会議の多さに負担を感じていることがわかった。これは低水準ではあるものの、決して少なくはない。日本では対面会議の文化が根強く残る一方で、リモートワークの定着とともに、ビデオ会議が増えたことによる疲れを感じる人も増えていると考えられる。
ビデオ会議の増加が生産性向上につながるか、それとも逆効果になるかは、使い方次第。 リモートワークの拡大に伴い、適正な会議の頻度や形式を見直し、より効果的なコミュニケーションのあり方を模索することが求められている。
<調査概要>
調査期間:2024年11月20日~12月13日
サンプル数:29,538人
調査対象者:世界21ヵ国の男女
調査方法:インターネット調査
出典元:オンライン英会話レッスン Preply(プレプリー)調べ
構成/こじへい