
U-NEXT HOLDINGSの業績が堅調に推移しています。
2025年8月期上期は2割を超える増収。通期売上計画に対する進捗率は52%に達しており、予想通りに着地をすると4期連続の2桁増収となります。
好調なのがU-NEXTを主軸とするコンテンツ配信事業。足元ではスポーツ配信に注力しており、Netflixを上回るシェアを獲得できるかに注目が集まっています。
圧倒的なコンテンツ量で他社と差別化
U-NEXT HOLDINGSは音楽配信のUSENなどBtoBビジネスに強みを持っていました。しかし、U-NEXTの成功によってBtoCの売上が全体の3割を超えるまで成長しています。
BtoBビジネスにおいては、コロナ禍で飲食店やホテルなどの得意先が軒並みダメージを受けました。しかし、巣ごもり特需でU-NEXTが急成長し、負の影響を補完します。今では会社の成長を支える事業として期待されるまでになりました。
2025年8月期上期におけるコンテンツ配信事業の売上高は前年同期間比17.7%増の624億5500万円。力強く成長しています。
※決算説明資料より筆者作成
U-NEXTは2025年2月時点で映画やドラマなどの動画作品が36万本以上、マンガや小説などの電子書籍が114冊以上、雑誌は200誌以上をラインナップしています。Netflixは非公開ですが6000程度と言われており、コンテンツ量においては競合のサービスを大きく引き離しています。
U-NEXTには自社制作のオリジナルコンテンツはありません。月額2000円を超える高めのサービスであっても、仕入力にこだわったことでユーザーを惹きつけることに成功しました。ここは自社制作コンテンツに注力するNetflixと大きく異なる点です。
ナイルの「VOD STREAM(ブイオーディーストリーム)」によると、U-NEXTの満足度は3.47で5位。Netflixは4.06でトップに立っています。dアニメストアが2位でAmazon Prime Videoが3位、TVerが4位となっていますが、Netflix以外はいずれも低料金または無料のサービス。月額2189円のU-NEXTがDisney+やHuluなどを押しのけて上位に食い込んでいることからも、コンテンツ量に振り切ったU-NEXTの戦略が奏功していると言っていいでしょう。
なぜU-NEXTはゴルフに注目したのか?
U-NEXTが足元で力を入れているのがスポーツ配信です。2024年8月からイングランドのプレミアリーグ、FAカップ、スペインのラ・リーガ、コパ・デル・レイ、スーペルコパ・デ・エスパーニャ、イングランドにおける女子サッカーの最上位リーグウィメンズ・スーパーリーグなど、世界中のプロサッカーリーグの配信を楽しむことができる、「サッカーパック」の提供を開始しました。月額2600円のサービスです。
2025年2月末時点の課金ユーザー数は466万人で、前年比9%増加しています。サッカー以外にもRIZINなどの格闘技にも注力しており、2025年からはゴルフ中継を強化しました。
海外男子メジャー全4大会、および国内女子ツアーの独占配信権を取得。海外メジャー全大会の単一プラットォーム配信は史上初の取り組みとなります。サッカーとは異なり、追加料金なしの見放題コンテンツとして配信しています。
ゴルフに注目したのは、極めて戦略的なものと言えるでしょう。先ほどのナイルの調査によると、U-NEXTの40代の利用者は15.0%、50代は10.6%ほど。Netflixは40代が21.5%で、50代は13.5%。U-NEXTのユーザーは若年層が中心であり、中高年の獲得が進んでいないのです。
ゴルフは40代以上に好まれるスポーツであり、U-NEXTの欠けているピースとぴたりと一致します。
スポーツの強化はNetflixも急ピッチで進めています。世界最大のプロレス団体ワールド・レスリング・エンターテインメント(WWE)の配信を開始。F1や米大リーグのドキュメンタリーも制作しています。
スポーツや格闘技は固定ファンが多く、映画やドラマのように大金をかけて大コケするリスクがほとんどありません。計画を立てやすいのです。
主要な動画配信サービスは緩やかにシェアを落とす
U-NEXTの国内シェアは18%で、Netflixは22%。Netflixは緩やかにシェアを落とす一方、U-NEXTは猛追しています。
そうした中、U-NEXTは音楽サブスクリプションサービスを追加する予定だと発表しました。980円で競合のサブスクサービスと同等のラインナップが聴き放題になるというもの。更なるコンテンツの拡充で顧客の囲い込みを狙っているのです。
そしてそろそろ、動画配信サービスの再編も視野に入ってくるのではないでしょうか。U-NEXT HOLDINGSは2023年3月に「Paravi」を運営していたプレミアム・プラットフォーム・ジャパンとの経営統合で合意しました。「Paravi」はテレビ東京、WOWOW、TBSが共同で運営していたサービス。ドラマやバラエティ番組の見逃し配信などを行っていました。統合後もParaviのプランは残りましたが、コンテンツが内包されるU-NEXTへの移行が進んでいます。
国内ではDAZNのシェアが9.4%、Disney+が9.0%、Huluが6%、旧dTVのLeminoが5%ほど。DAZNやHulu、Leminoはかつてシェア10%を超えていましたが、緩やかに縮小しています。
Huluの日本事業は2014年に日本テレビが買収しました。買収当時は安定収益に期待ができるとしていましたが、2024年4-12月は4億円近い営業損失を出しています。一方、キー局が共同出資して運営しているTVerは好調。テレビ局は主力のテレビ産業が斜陽化しており、選択と集中を進める局面に入りました。今後動画配信サービスの大再編が起こってもおかしくはないでしょう。
文/不破聡