
新社会人やZ世代について、さまざまな調査や分析が発表されているが、先輩となるビジネスマンにとっては新人の価値観などは気になるところ。
富とお金のメンタルトレーナーである三凛さとしさんは、新入社員が社会人生活をスタートさせて1か月が過ぎた2025年4月15日から2025年4月21日の期間に、18歳以上24歳未満の令和7年度新社会人140名を対象に「会社選びとお金のリアル」についてのアンケート調査を実施して、その結果と分析を発表した。
調査結果によると、給与は会社選びの重要な要素だが、働きがいや教育制度といった成長できる環境も同等に重視しており、約6割が「将来獲得したい年収は1000万円未満」と回答。堅実な金銭感覚を持つ世代だと考えられるという。
新社会人の会社選びの決め手のトップ「給与」だが「働きがい」の関心も高い
令和7年度の新社会人140名に「入社した会社を選んだ基準」を質問すると、「給与」(30.7%)が最多だった。「働きがい(福利厚生・教育制度)」(28.6%)や「社風・社員の魅力」(26.4%)が僅差で続き、単純な「稼ぎ」だけが就職先決定の要因ではないことも傾向として見えた。
Z世代と言われる若い社会人は、給与という基本的な安全基盤を確保しながらも同時に自己成長や人間関係の質も重視しているという。この傾向は、物質的な豊かさだけでなく精神的な充足を同時に求める令和時代の複合的なキャリア観を反映しているのだろう。
将来希望する年収は「1000万円未満」が最多
「結婚相手に求める年収」については、「500万円~600万円未満」(19.3%)がもっとも多く、次いで「400万円~500万円未満」(14.3%)、「気にしない」(12.9%)、「600万円~700万円未満」(11.4%)というランキングだった。
また「自身が将来獲得したい年収」については、「700万円~1,000万円未満」(25.7%)がもっとも多く、「500万円~700万円未満」(22.1%)、「1,000万円~1,200万円未満」(20.0%)が続いた。注目点は、全体の57.1%が1000万円未満の年収を希望しており、現実的な将来設計を考えていること。経済成長の鈍化や社会保障の先行き不安など、若い世代が育ってきた社会環境が現実的な期待値形成に影響していると思われる。
初任給の使い道のトップは「貯金」
「初任給は何に使う予定か?」という質問には、「貯金」(50.0%)が半数を占めて、続いて「親・家族へのプレゼント・食事」(46.4%)、「生活費」(35.0%)だった。消費より貯蓄を優先する姿勢は、コロナ禍や物価高などの経済的不確実性を経験したZ世代の特徴といえるだろう。
「お金の教養」が高く、将来への備えを若いうちから意識しており、不安定な雇用環境や年金問題など将来の不確実性への防衛反応として堅実な金銭管理志向が根付いていると思われる。
一方で親や家族へのプレゼントや食事が2位なのは、身内への感謝の気持ちが強くて実家からの自立を思わせる、Z世代の考え方を考察するための興味深い回答といえるだろう。
欲しいものはモノより経験指向が鮮明
「ゆくゆく欲しいもの・買いたいもの・やりたいことは何か?」についての質問には、「旅行」(41.4%)が最多回答となり、続いて「車・バイク」(35.7%)、「家・マンション」(34.3%)、「ブランドもの」(31.4%)、「資産運用・投資」(29.3%)というランキングだった。
物質的な所有よりも体験や経験を通じた充実感を重視する傾向がみられる結果となった。SNS全盛時代に育った新社会人は、経験の共有や思い出の蓄積が自己表現やアイデンティティ形成につながっていると推測される。「車・バイク」が高い割合を占めるのは、移動の自由や行動範囲の拡大への憧れを示唆しているという。
■三凛さとしさんが「Z世代新社会人の価値観とその背景にある心理」を解説!
「今回の調査結果から、現代の新社会人の価値観について興味深い発見がいくつか見えてきます。まず注目すべきは、「給与」と「働きがい」の関係性です。どちらか一方ではなく、両方を重視する傾向が強く表れています。
これは基本的な生活の安全を確保しながらも、自己実現や成長も同時に追求したいという複合的な価値観の表れでしょう。新社会人たちは、単純な二者択一ではなく、より現実的な視点を持っていると言えます。
また、初任給の半数が貯金に回されるという結果からは、将来への備えを意識する堅実さが見て取れます。これは私たちの世代が育った社会経済環境を考えれば納得できる現象です。
景気の低迷、就職氷河期の話題、コロナ禍など、経済的不確実性を数多く経験してきた世代だからこそ、将来への不安に対する防衛反応として貯蓄を重視するのでしょう。
さらに興味深いのは、欲しいものとして「旅行」がトップに来ている点です。これは物質的所有より経験的消費を重視する価値観の表れです。研究でも、モノを買うよりも経験にお金を使った方が長期的な幸福度が高まることが示されています。SNS時代に育った新社会人たちは、「所有する喜び」より「経験する喜び」とその共有価値を重視しているのです。
企業側にとって重要なのは、若者のこのような価値観の変化を理解し、対応していくことでしょう。単なる高給与だけでなく、自己成長の機会や充実した経験を提供できる職場環境を整えることが、優秀な若手人材の獲得・定着につながります。
新社会人の堅実な金銭感覚は、批判されるべきものではなく、むしろ彼らが育ってきた環境への合理的な適応戦略です。企業には若手社員の将来不安を軽減する長期的キャリアパスの提示や、安定と成長の両立を支援する制度設計が求められています。
「給料」と「働きがい」。この二つは対立するものではなく、相互に支え合う関係にあるのです。適正な報酬があってこそ、心理的充足も得られる。この現実的な視点こそ、令和時代の新社会人が持つ賢明な知恵なのかもしれません」
三凛さとし(さんりん さとし)プロフィール
富とお金のメンタルトレーナー。親子関係心理学の専門家。YouTubeチャンネルの登録者は27万人。各SNSの総フォロワーは45万人を超え、講座受講生は延べ15万人以上にのぼる。著書には、親子関係について真の問題解決法を綴った『親子の法則 人生の悩みが消える「親捨て」のススメ』(KADOKAWA)や『金のなる本 誰でも再現できる一生お金に困らない方法』(KADOKAWA)などがある。
■調査概要
調査期間:2025年4月15日~21日
調査手法:インターネット調査
調査対象:18歳以上24歳未満の令和7年度新社会人の男女全国
有効回答者数:140名(男性:61名、女性:79名)
調査機関:Freeasy
出典:合同会社serendipity 調べ
構成/KUMU