
本記事では、免罪符という言葉の意味や、ビジネスシーンにおける具体的な活用例などを解説する。
自分の失敗や責任から目を背けるとき、言い訳や言い逃れをしたくなることがあるだろう。しかし、言い訳や言い逃れをすると、周囲から「免罪符にしている」という批判的な意見を受けかねない。
また、組織全体の成長や発展を目指すためには、何かを免罪符にして努力や工夫を怠るのは避けなければならない。
今回は、免罪符という言葉の意味や、具体的に使用するシーンなどを解説する。
免罪符(めんざいふ)とは

免罪符とは、悪い意味で使われる言葉であり、自分自身に対して使われるのは好ましいことではない。
まずは、免罪符という言葉の意味や語源について確認しよう。
■免罪符(めんざいふ)の意味
免罪符とは、「何か悪いことや問題のある行為をしても、それを許してもらえる特別な言い訳や権利」という意味で使われる。
「彼は社長の息子という立場を免罪符にして、会社のルールを守らない」「病気であることを免罪符にして、他人に厳しい言葉を投げかける」のように、批判的なニュアンスで使われるケースが多い。
本来なら責任を取るべき状況や批判されるべき行動に対して、それを免除してもらうための理由や特権のようなものを指す。
■免罪符(めんざいふ)の語源
「免罪」は「罪を免除する」という意味で、罪の責任や罰から解放されることを意味する。また、「符」は「証明書」や「証書」を指す。
免罪符とは、キリスト教のカトリック教会が発行していた、罪の許しを得るための証書を指す。中世のヨーロッパにおいて、「教会に寄付をすれば、代わりに罪が許される」という形で発行されていた。
日本語としての「免罪符」は、このようなキリスト教の概念を表す宗教用語として始まり、のちに比喩的な意味で広く使われるようになった。
■免罪符(めんざいふ)の関連用語
免罪符との関連用語や、似たような意味を持つ言葉はいくつかある。
- 贖宥状(しょくゆうじょう):カトリック教会での免罪符の正式な呼び方
- 特赦(とくしゃ):法律用語で、罪を犯した人の刑罰を特別に免除すること
- 赦免(しゃめん):「赦し」と「免除」を組み合わせた言葉で、罪や過ちを許すこと
- お目こぼし:本来なら罰せられるべき行為に対して、罰を与えずに許すこと
- 言い逃れ:言葉巧みに責任や非難から逃れようとすること
- 口実(こうじつ):ある行動を正当化するための表向きの理由
- 聖域(せいいき):批判や追及が及ばない特別な地位や領域を指し、免罪符的な文脈で使われることがある
それぞれの言葉は文脈によって微妙にニュアンスが異なるが、いずれも「本来なら責任を取るべきことから逃れる」という意味合いを持っている。
ビジネスシーンにおける免罪符(めんざいふ)の使い方
ビジネスにおいて、免罪符とは主に比喩的な表現として使われる。「責任逃れの言い訳」や「不適切な行動の正当化」という意味合いで使われることが多く、批判的なニュアンスを含んでいる。
ビジネスシーンにおける免罪符の使用例は、以下のとおりだ。
場面 | 例文 |
役職や地位に関すること | 部長という肩書きを免罪符にして、部下に無理な残業を強いている |
業績や成果に関すること | 前月の売上達成を免罪符にして、今月の努力を怠っている |
会議やプレゼンに関すること | データ不足を免罪符にして、具体的な戦略を提示していない |
組織文化に関すること | 『前例がない』ということを免罪符にして、新しいアイデアを却下する |
責任回避に関すること | コロナ禍を免罪符にして、業績不振の真の原因分析を避けている |
このように、何らかの問題行動や失敗を正当化するための言い訳や手段を指したり、責任回避のために用いる形式的な対応や手続きを批判するニュアンスで使われることが多い。
また、本来であれば必要な努力を省くための口実として使われることもある。もし自分自身が環境を変えるための努力や成長するための工夫を怠っている場合、「何かを免罪符にしているかもしれない」と疑ってみるとよい。
まとめ
「免罪符」という言葉は、宗教的概念が語源になっており、現代社会では批判のツールとして用いられている。本来あるべき責任から逃れるための言い訳や特権を指しており、好ましい場面で使われることはほとんどない。
失敗を責任転嫁したくなったり、仕事がマンネリ化して努力を怠ったりする場面は、ビジネスパーソンとして出てくるかもしれない。しかし、何かを免罪符にして努力や工夫を怠ると、周囲からの信頼を失ってしまうリスクがある点に留意すべきだろう。
文/柴田 充輝(しばた みつき)
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。 FP1級と社会保険労務士資格を活かして多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。