
ビジネスの現場で交わす「グリーティング(greeting)」は、信頼関係の構築からトラブルの予防まで、大きな効果を秘めている。本記事ではグリーティングとは何か、その語源や種類を解説する。
目次
ビジネスの現場で何気なく交わす「グリーティング(greeting)」だが、実は信頼関係の構築からトラブルの予防まで、大きな効果を秘めている。本記事ではグリーティングとは何か、その語源や種類を解説する。
また、実践に向けては、ビジネスシーンにおける狙いと効果、信頼醸成やコンフリクト対策としての役割、そしてプロフェッショナルに効果的なグリーティングを実践するポイントやマナーについて解説する。
グリーティング(greeting)の意味
グリーティングとは挨拶や歓迎の所作全般を指す言葉であり、英語 “greeting” の音写である。ビジネスでは「おはようございます」「いらっしゃいませ」といった基本的な挨拶から、メールやチャットの冒頭文、オンライン会議での冒頭の一言まで、多彩な形式が含まれる。適切なグリーティングは、初対面の壁を取り払う鍵となる。
■グリーティングの語源
「グリーティング」は古英語 “gretan”(出会う、呼びかける)が語源とされる。中世には「言葉をもって相手に近づく行為」を指し、近代以降「挨拶する」の意味が確立した。18世紀後半には、カードに祝辞をしたためて送る文化が欧米で広がり、1876年頃には「グリーティングカード」として商業化された歴史がある。現代でも紙のカードに限らず、メールやSNSで送る電子カードもグリーティングに含まれるようになった。
■代表的なグリーティングの例
対面グリーティング:表情、動作を伴って行う交流や挨拶
ディズニーリゾートの「整列型グリーティング」が有名。ゲストが列を作り、キャラクターと順番に握手・撮影ができる。キャラクター演技の質が高く、顧客はアニメから出てきたような感覚を得られ、満足度が高い。ディズニーには「フリーグリーティング」も存在する。パーク内を歩くキャラクターに自由にサインや写真をお願いできる形式。顧客自身でキャラクターを発見する楽しみがある。
一般的なビジネスでは、朝礼での一声や受付スタッフの笑顔での来客対応が該当する。
遠隔グリーティング:オンライン会議でのアイスブレイク挨拶やチャット冒頭の定型文など
サンリオピューロランドの「オンラインキャラクターグリーティング」が有名。ビデオ通話で1対1交流を実現している。
その他でも、企業のウェビナー冒頭に行う参加者全員への一言歓迎メッセージも広義のグリーティングである。
サービス形式グリーティング:一定のパターンを持ったグリーティング手法
飲食店やホテルの「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」、レストランでのキャラクターダイニング。先のディスニーの例もサービスだが、パターン化しているかどうかが異なる。パターン化することで社員が増えてもサービス品質を担保することができる。企業ブランドの印象を左右する重要な要素である。
グリーティング(greeting)の狙いと効果
ビジネスにおけるグリーティングは単なる儀礼ではない。最初の一声や所作が「話しやすさ」や「また会いたい」という印象を生み、組織や顧客との関係を強固にする重要なコミュニケーション手段である。
■グリーティングの狙いと効果
信頼構築:笑顔と明るい声で挨拶するだけで、相手の警戒心が和らぎ「話しやすい相手」という先入観が生まれる。特に初対面時の約5秒以内で印象が決まるとされるため、冒頭の一声は信頼関係の土台を築く重要な役割を果たす。
チーム一体感の醸成:朝礼やミーティング開始時に全員で声を合わせる「おはようございます」は、心理的な連帯感を生む。共通の挨拶でスタートすることで、全員が同じ目的意識を持ちやすくなり、共同作業の効率向上につながる。
顧客満足度向上:受付での「いらっしゃいませ」や店舗スタッフの笑顔は、顧客に安心感を与え、再訪率を高めることを期待できる。
コンフリクト予防:日常的な挨拶習慣は、意見対立時の心理的緩衝材となる。「おはようございます」の一言があるだけで、相手の存在を認めるメッセージとなり、感情的な衝突を防ぎやすくする効果がある。
■効果的なグリーティングのコツ、ポイント
自分から先に実施する:相手が挨拶するのを待たず、自らが声をかけることで「自分から歩み寄る姿勢」を示す。ビジネスパーソンとしての積極性もアピールできる。
笑顔とアイコンタクト:柔らかな表情で相手の目を見ると、誠意が伝わりやすい。マスク越しでも目元の笑いシワが安心感を与えるポイントとなる。
適切な所作:すれ違いざまは軽い会釈、来客時は立ち止まって深めのお辞儀を行うなど、状況に応じた所作を使い分ける。これだけで印象の格差は大きくなる。
一言メッセージを添える:メールやチャットでは「お疲れさまです、◯◯です」と用件前に挨拶を入れる。文字だけの場面でも温かみを伝えられる。
継続的に習慣化する:一度きりでは効果は薄い。毎朝必ず声を出す、オンライン会議の冒頭に必ず一言入れるなど、ルーティン化することが鍵である。
まとめ
本稿ではグリーティングの語源やその効果について解説した。日々の「おはようございます」が、組織と顧客の架け橋となる。たかが挨拶、されど挨拶。 ビジネスの未来を切り拓く力は、最初の一声にこそ宿っているのである。
文/諏訪 光(すわ ひかる)
大手ネット系企業にて10数年に渡りプログラマーからプロダクトマネージャーまでを幅広く経験。新規事業から企業再生に至るまで様々な案件の開発に携わる。DX推進者や起業経験を経て現在は大手信託銀行でDX推進を行いながら、フリーランスの新規事業、DX、デジタルマーケティングのコンサルティングも行う。