
「順不同」とは、氏名や項目の並びに特定の基準がないことを示す表現である。参加者一覧や来賓名簿などに添えることで、並び順に意図がないことを明示し、誤解や不快感を防ぐ効果がある。記事では語源や類義語・対義語、英語表現、敬称略との違いまで網羅的に解説。ビジネス文書での使い方や注意点も具体例とともに紹介する。人間関係の配慮が求められる場面で、順不同をどう活用すべきかを解説する。
目次
「順不同」は、氏名や物事の並び方が一定の基準によらないことを表す。参加者一覧などに記載することで、並び方に特別な意図がないことを主張できるため、人間関係のトラブル回避に有効だ。そのため、上司や取引先との関係で失礼が許されないビジネスシーンでも、広く使われている。この記事では、「順不同」の意味や対義語などの関連語、使い方を例文を交え、わかりやすく解説する。
順不同(じゅんふどう)とは
まずは、意味や類語・対義語など、「順不同」の基本情報から押さえよう。
■順不同(じゅんふどう)の意味
「順不同(じゅんふどう)」とは、一定の基準による並び方ではないことを指し、一般的には「参加者一覧(順不同)」のように、括弧書きで添えることが多い。
事前に断っておくことで、優劣や取引規模といった特別な意図はないと明確に伝えることができるため、誤解や不快感を相手に与えることを避ける効果がある。
さらに、実務上の利点もある。
会議の参加者リスト、取引先一覧などを作成する際、名前に外国語や難読漢字が含まれている場合、読み方に迷うことがないだろうか。そんな時は「順不同」と記載しておけば、50音順で並べる必要もないため、読み方を確認する手間を省くことができる。
順不同は、人間関係と実務双方の煩わしさを解決する、一石二鳥の便利な言葉だといえるだろう。
■順不同の語源
次に、順不同の語源を解説する。
「順不同」は、「順序不同(じゅんじょふどう)」の「序」が略された言葉だ。
「順序」は、ある基準によった並び方や仕事の手順・段取りのこと。同じでないこと、揃っていないことを表す「不同」が「順序」を打ち消し、「並べ方に一定の基準がない」という意味になった。
■順不同の類義語・対義語
順不同の類義語・対義語については、次の表を参照してほしい。
【順不同の類義語】
類義語 | 意味 | 用例 |
任意(にんい) | 決まった基準によらず、その人の自由な判断に任せること。 | 懇親会の参加は、任意となっております。 |
無作為(むさくい) | 故意ではなく、偶然に任せること。 | 無作為に選出した従業員を対象に、アンケートを実施しました。 |
ランダム(英語:random) | 無作為、任意であること。 | ランダム抽出したサンプルを用いて、分析を行った結果です。 |
【順不同の対義語】※一定の基準による並べ方を表す言葉の代表例
対義語 | 意味 | 用例 |
五十音順 | あいうえお順のこと。 | 五十音順で記載されていたので、自分の名前をすぐに見つけることができました。 |
先着順 | 申込や応募などについて、先に到着した順から対象にすること。 | 先着順にご案内しております。 |
年齢順 | 年齢を基準に順序を決めること。 | 年齢順に集計した調査データをもとに、以下のグラフを作成しました。 |
■順不同の英語表現
順不同を英語で言うと「特別な順序がない」という意味の「in no particular order」となる。そのほか「in random order」という表現もある。
■順不同と敬称略の意味・使い方の違い
順不同は「(敬称略・順不同)」のように、敬称略という言葉と一緒に使われることも多い。
「敬称略(けいしょうりゃく)」とは、「様」「先生」などの敬称を略すという意味だ。参加人数が多いとき(目安は10人以上)名前すべてに敬称をつけると煩雑で読みづらくなるため、「敬称略」を使う。
順不同と敬称略は、相手に対して失礼を詫びるニュアンスがあるという共通点がある一方で、順不同が名前などの「並び方」、敬称略は「敬称を略す」ことに関する言葉だという違いがある。
また、文書に入れる際は、「出席者一覧(敬称略・順不同)」のように、文書の冒頭に記載する。
※出典:小学館デジタル大辞泉「順不同(ジュンフドウ)とは?意味や使い方-コトバンク」
※出典:小学館デジタル大辞泉「順序(ジュンジョ)とは?意味や使い方-コトバンク」
※出典:小学館デジタル大辞泉「不同(フドウ)とは?意味や使い方-コトバンク」
日常生活における順不同の使い方
順不同は、日常生活でも多用されている。以下、具体的な使い方と使用例を紹介する。
■順不同の日常生活での使い方
地域行事の参加者紹介や、結婚式での祝電披露といったシーンで、「順不同でのご紹介となりますことを、お許しください」と一言添えると、マナー違反にならない。
また、学校のテストなどで、複数の答えがある時にも使うことがある。
たとえば、選択肢がア〜コ、正答がウ、ケだったとする。解答欄に「順不同」とあれば、答の記載順序にルールはないという意味なので、「ウ、ケ」「ケ、ウ」どちらも正しい。
■順不同の日常生活での使用例
日常生活で順不同が使用される際の具体的な文例は、次の通り。
・文例①:今回のイベントの参加メンバーを順不同で紹介します。
・文例②:来賓客一覧は、順不同で記載しています。
・文例③:問い①〜⑤の答えは順不同で構いません。
ビジネスシーンにおける順不同の使い方
次に、ビジネスシーンでの順不同の使い方を解説する。使用する際の注意点もあるので、しっかり確認していこう。
■順不同のビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンでは、議事録や会社の式典など、役職や序列に配慮が必要な場面で「順不同」を使うと効果的である。ただし、次の点には注意が必要だ。
①メールには、できるだけ使わない。
取引先など社外の人が送信先に入っている場合は、失礼に捉えられることもある。メールの場合は、できるだけ順不同を使わないほうが無難だろう。
②お詫びの言葉を添える。
「順不同」には失礼を詫びるニュアンスがある。「順不同にて失礼します」「順不同の記載となりますことを、なにとぞご容赦ください」といったお詫びの言葉を添えるようにしよう。
■順不同のビジネスシーンでの使用例
ビジネスシーンで順不同を使用する際の、具体的な文例は次の通り。
・文例①:関係者は、順不同・敬称略にて記載しております。あらかじめご了承ください。
・文例②:順不同ではございますが、以下、弊社のプロジェクトについてご紹介いたします。
・文例③:参加企業一覧は順不同で記載しており、記載順に特別な意図はございません。
まとめ:順不同の使い方をマスターして、ビジネスシーンで活用しよう
順不同は、名前などの並び方に、決められた基準がないという意味である。また、敬称を略すという意味の敬称略と一緒に使うことも多い。ビジネスシーンでは、名前や会社名の並びに関するトラブル回避に有効だ。正しい使い方をマスターして、積極的に活用していきたい。
文/木戸史(きどふみ)
立命館大学文学部卒業後、営業、事務職、編集アシスタントなどを経て、社会保険労務士事務所で社労士として勤務。現在はライターとして活動しており、社労士として多くの中小企業に携わった経験を生かし、ビジネスマンに役立つ法律知識をできるだけわかりやすく発信している。