
社会人歴5年以上となる中堅社員(*1)は、業務に関する豊富な経験と知識を持っている。上司からは責任のある業務を任され、自立自走しながら、結果を残していくことが期待される存在だ。
ときにはプロジェクトやチームのリーダーとしてリーダーシップを発揮し、ときには上司と若手社員の橋渡し役としてコミュニケーションの円滑化を担うなど、中堅社員に望まれる役割は多岐にわたる。
では、そんな企業基盤となっている中堅社員はどのような心持ちで「後輩指導(OJT)」に取り組んでいるのだろうか
ALL DIFFERENT(オールディファレント)およびラーニングイノベーション総合研究所は、2024年12月に社会人5年目以上の役職がついていない中堅社員800人に対し、後輩指導においての心持や苦労について調査・分析を実施したので、結果を紹介しよう。
(*1)当記事では社会人5年目以降35歳未満の役職がついていない社員を指し、「ミドルキャリア」とも記載
モチベーション高く後輩指導に取り組めているミドルキャリア、わずか4割
まずは、社会人5年目以上の役職がついていない中堅社員(以下、ミドルキャリア)が、現在、後輩指導を行っているかどうかについて質問したところ、後輩指導を行っているミドルキャリアは35.5%、行っていないミドルキャリアは64.5%という結果に。
次に、後輩指導を行っているミドルキャリアのモチベーションについて、5段階評価で質問をした。
結果、モチベーションが最も高い評価「5」の回答割合は7.7%、やや高い評価「4」の回答割合は36.3%となり、約4割がモチベーション高く取り組んでいることがわかった。
しかし、後輩指導に関わっているすべてのミドルキャリアが意欲的に取り組んでいるわけではないことも明らかに。
後輩指導の最大の苦労は「後輩の力量に応じた業務を与えること」
次に、後輩指導を行っているミドルキャリアの苦労について質問をしたところ、後輩指導で最も苦労している項目は「後輩の力量に応じた業務を与えること」が33.1%と、2位の回答と10ポイント以上の差をつけて突出した結果となった。
次に、「後輩の成果につながるように、サポートすること」(22.9%)、「後輩と良好なコミュニケーション(質)を担保すること」(22.2%)が続いた。
後輩指導を行っているミドルキャリアのモチベーション5段階評価のうち、「4」「5」と回答した人を『後輩指導のモチベーションが高い人』、「1」「2」と回答した人を『後輩指導のモチベーションが低い人』と定義。(「3」と回答した人は今回の分析から除く)
後輩指導を行っているミドルキャリアのモチベーションと苦労の関係性を調査した。
結果、『後輩指導のモチベーションが高い人』の苦労は「後輩の力量に応じた業務を与えること」が36.8%と最大の割合に。「後輩とコミュニケーションの量を担保すること」(29.6%)、「後輩と良好なコミュニケーション(質)を担保すること」(29.6%)が続いた。
『後輩指導のモチベーションが低い人』の苦労は「後輩の力量に応じた業務を与えること」が30.6%でトップに。続いて、「改善点を次に活かしてもらうこと」(26.5%)、「後輩にモチベーションを高めてもらうこと」(22.4%)。
モチベーションの高低による苦労を比較すると、『後輩指導のモチベーションが高い人』は低い人に比べて、「育成のゴールを設定し計画を立てること」が21.2ポイント、「後輩と良好なコミュニケーション(質)を担保すること」が19.4ポイント高くなっていた。
一方、『後輩指導のモチベーションが低い人』は高い人に比べて、「改善点を次に活かしてもらうこと」が20.1ポイント高いことが判明。
まとめ
本調査より、ミドルキャリアのうち、後輩指導に携わっている人は35.5%であることが明らかとなった。
また、後輩指導を担うミドルキャリアのうち、モチベーション高く取り組めている人は4割程度。残り約4割は「どちらでもない」、約2割はモチベーションが低い結果となり、約6割がモチベーション高く取り組めていないことが判明。
また、後輩指導を担うミドルキャリアの最大の苦労は「後輩の力量に応じた業務を与えること」であった。
これは、相手の力量を把握したうえで計画的に業務をアサインすることができておらず、「教えようと思っている業務が発生するたびに、対応方法やポイントを伝える」というような、場当たり的なアサインをしている可能性があることが推察できる。
なお、後輩指導へのモチベーションにより、苦労に違いがあるかを調査した結果、モチベーションが高い人は「育成のゴール設定」や「後輩とのコミュニケーション」と、中堅社員自身の行動に対する苦労が高くなった。
一方、モチベーション低い人は「改善点を次に活かしてもらうこと」を課題と感じており、後輩の行動変容に対する課題を感じている傾向にあるようだ。
調査概要
調査対象者:社会人5年目~11年目以上の管理職未満の就労者
調査時期:2024年12月24日~25日
調査方法:調査会社によるインターネット調査
サンプル数:800人(社会人5年目107人、同6年目105人、同7年目104人、同8年目105人、同9年目103人、同10年目105人、同11年目以上171人)
*ラーニングイノベーション総合研究所「中堅社員の意識調査(後輩指導編)」
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としている
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がある
関連情報
https://www.all-different.co.jp/
構成/Ara