
Excelの比較的新しい関数「LET」は、数式内で値に名前をつけて使い回せる便利な機能。数式をシンプルに整理でき、作業効率や可読性が大幅に向上。売上集計や税計算、予算管理にも効果を発揮するので覚えておいて損はない。
目次
Excelの新関数「LET」を使えば、複雑な数式もシンプルに整理できる。計算の繰り返しや長すぎる式をすっきりとまとめ、作業効率を大幅にアップさせることができる。
この記事では、LET関数の基本的な使い方と実務で役立つ活用方法を紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
LET関数とは
LET関数は、Excelの数式の中で「名前をつけて値を使いまわす」ことができる新しい関数。何度も同じ計算を繰り返したり、長い式で読みにくくなるのを防げる。Microsoft 365 や Excel 2021以降で利用できる。
■LET関数の概要
LET関数は、「この値を●●という名前で使う」と定義して、それを数式の中で何度でも使えるようにする関数。プログラミングでいう“変数”のような役割を持つ。例えば、以下のような数式を考えてみる。
この場合、xには10、yには20が入っていて、最後の「x + y」の部分で30が返る。
今までのExcelでは、同じ計算を何度も書く必要があったが、LET関数を使えば一度定義して使い回せるようになる。
■LET関数を使用するメリット
- 同じ値や計算を何度も書かずに済む
- 数式が短く、読みやすくなる
- 複雑なロジックを整理しやすくなる
- 間違いが起きにくくなり、修正もラクになる
- 名前をつけられるから、数式の意味がひと目で分かる
特に、複雑な売上計算や予算管理など、長い数式を使うシーンで効果を発揮する。関数の中にルールを整理して書けるようになるため、作業効率もアップする。
LET関数の使い方
LET関数を使いこなせば、複雑になりがちな数式をスッキリ整理できるようになる。まずは構文を理解し、シンプルな例から試してみよう。
■ LET関数の構文
LET関数の基本構文は以下の通り。
=LET(名前1, 値1, 名前2, 値2, …, 計算式)
名前:定義したい変数の名前(自由に設定可能)
値:その変数に代入する値や計算式
計算式:最後に実行したい処理
名前と値のセットは最大126個まで設定可能。最後の計算式の部分だけが「結果」としてセルに表示される。
■ LET関数の基本的な使い方
例えば、商品Aの単価が100円、個数が5個だったとき、合計金額を求める数式は以下のようになる。
=LET(price, 100, qty, 5, price * qty)
- price に 100 を代入
- qty に 5 を代入
- 最後に price * qty を実行
- 結果は 500
同じような計算を複数のセルで使いたいときや、複雑なロジックの途中で共通する値がある場合にとても便利。
LET関数の実務での活用方法
LET関数を使えば、実務でありがちな売上集計や税計算、予算管理の場面でも、大きな効果を発揮する。いくつか活用方法を紹介する。
■ 売上データの集計を効率化する方法
複数の項目を掛け合わせて売上を計算するとき、同じ数値を何度も参照すると数式が長くなる。例えば「単価 × 数量 × 税率」のような計算を行う場合、LET関数で値をまとめておくと見やすくなる。
例えば、商品を「単価:1,200円」「数量:3個」「消費税:10%」で販売したとする。これを税込売上として計算する場合、以下のようにLET関数で整理できる。
=LET( price,1200,qty, 3,tax,1.1,price * qty * tax)
この式では、「1,200 × 3 × 1.1」で税込売上が 3,960円となる。同じような計算を大量のデータに使いたい場合にも、変数で分けておくと分かりやすく、修正も簡単にできる。
■ 複雑な税計算を簡略化する
例えば、金額が2,500円の商品に、「軽減税率(8%)」か「標準税率(10%)」のどちらかを使うケースを考える。
=LET(amount, 2500,taxRate, IF(“軽減”=”軽減”, 0.08, 0.10),amount * taxRate)
この例では、「軽減」という条件に当てはまるので、税率は0.08(8%)が選ばれ、計算結果は2,500 × 0.08 = 200円となる。
条件を変えたければ、”軽減”の部分を”標準”にするだけで変えることができる。
■ 定数を使った予算管理を自動化する
ある作業の基準コストが1,200円で、15%の割増しを加えるケースを考えてみる。
=LET(基準コスト,1200,割増率,1.15,基準コスト * 割増率)
結果は 1,200 × 1.15 = 1,380円。
「基準コスト」や「割増率」に名前をつけておけば、あとで簡単に値を変更することができ、何の計算かもひと目で分かる。
まとめ
LET関数は、Excelの数式の中で「名前をつけて値を使いまわせる」便利な関数。複雑な計算式をシンプルにし、作業の効率化やミスの防止に役立つ。
LET関数のポイント
- 同じ値や計算を何度も書く必要がない
- 数式が短くなり、見やすくなる
- 名前をつけられるから、数式の意味がわかりやすくなる
- 変更や修正もカンタンにできる
実務での活用例
- 売上や税込金額の計算をスッキリ整理
- 軽減税率や標準税率などの条件分岐も対応しやすい
- 予算や定数をまとめて管理することで、再利用や変更もスムーズ
Excel 2021以降やMicrosoft 365を使っているなら、LET関数を使わない手はない。「長くて見づらい数式」に悩んでいる人は、まずは簡単な計算から試してみよう。
構成/編集部