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未来都市が始動!JR東日本が6000億円を投じた「TAKANAWA GATEWAY CITY」の全貌

2025.05.15

総事業費6000億円を投じた「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」が2025年3月27日、ついにまちびらきを迎えた。JR東日本が手がける今世紀最大規模の開発は、単なる駅前再開発ではない。駅と一体化した都市空間は、未来社会の実験場としての機能を備え、日本の都市開発に新たな指針を示す。

この壮大なプロジェクトについてマーケティング本部 まちづくり部門 品川ユニットマネージャー出川 智之さんに、構想の背景から将来展望までを聞いた。

20年の構想から生まれた未来の街

TAKANAWA GATEWAY CITYの始まりは約20年前に遡る。「このプロジェクトは20年ほど前に構想が始まりました。もともとこの場所は、寝台列車などを留置する車両基地でした。しかし、寝台列車の需要減少や上野東京ラインの開通で、車両基地としての必要性が減少してきたため、新たな街をつくることになったんです」と出川さんは話す。

四半世紀近くの時間をかけて進められてきたプロジェクト。2025年3月に、とうとうまちびらきが実現し、一部エリアが開業した。当初は一括開業を予定していたが、工事中に高輪築堤が出土。保存のために設計変更が必要となり、段階的開業へと計画が変更された。2026年春には全施設のグランドオープンを予定している。

本プロジェクトのコンセプトは「Global Gateway」。羽田空港から15分、東海道新幹線、将来の中央リニアとの接続性を活かした交通の要所として、国内外の交通、そして交流の拠点となることを目指している。

「テーマとして掲げているのは『100年先の心豊かなくらしのための実験場』です。この地は150年以上前、日本で初めて鉄道が海の上を走った、イノベーションの発祥地でもあります。そういった歴史を持つ場所だからこそ、今後の社会をより良くするためのイノベーションを起こす実験場に相応しいのだろうと考えています」

この実現のため、東京大学やシンガポール国立大学などのアカデミア、KDDIなどの大企業、国内外100社以上のスタートアップ、アクセラレーターが集まるビジネス創造の拠点「TAKANAWA GATEWAY Link Scholarsʼ Hub(LiSH)」を創設。「環境」「モビリティ」「ヘルスケア」の3大テーマを中心に、様々な実験がこの街から生まれ国内外へ展開されていく。

4つの主要施設が織りなす多彩な都市機能

TAKANAWA GATEWAY CITYは、大きく分類すると4つのエリアに分かれている。

2025年3月に一部開業したのが駅前のツインタワー「THE LINKPILLAR 1」。NORTH棟は6階以上がKDDIの本社オフィス。SOUTH棟は地下にコンベンションホール、秋には両棟の低層部に商業施設「ニュウマン高輪」、高層階にホテル「JWマリオット・ホテル東京」が入る。

コンベンションホール「TAKANAWA GATEWAY Convention Center」は、国際会議や学会・展示会・イベントを開催できる駅直結・都心最大級の大規模コンベンション・カンファレンス施設だ。

「中心となるのは地下2階にある『LINKPILLAR Hall』で、約1640m²の広さがあり、約2000人を収容できます。また、可動式のパーティションで空間を分割できるため、様々な規模のイベントに対応可能です」

さらに2026年春以降にはオフィスやクリニック、フィットネスなどの複合棟「THE LINKPILLAR 2」、「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」を、複合文化施設として開館予定。建築家・隈研吾氏がデザインを手がけており、「100年先へ文化をつなぐ」をミッションに掲げている。

街には必要不可欠な住環境として、「TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE」が、国際水準のプレミアムな賃貸レジデンスとして提供される。低層部には「インターナショナルスクールが2026年8月に開校予定のほか、保育園も開設します」と出川さん。職住学遊が一体となった複合都市を実現する構想だ。

地域との共生を重視した街づくり

まちびらきの3~4年前から地域との交流を重視してきたと出川さんは語る。「共同でお祭りを開催したり、地域の方々とホップを育ててビールを醸造したり、蜂を育てて蜂蜜を収穫するなど、様々な草の根活動を続けています。他にも、今回のまちびらきイベントでは、近隣の高校の鉄道研究会による鉄道ジオラマ展示や、港区内外の中高ダンス部によるステージ出演など、地域の学生との連携も図っています」

また港区行政との協働も進めており、区内に多い大使館の特性を活かした国際交流を推進している。日本の大使館の半数以上が港区に集中しているという特徴を活かし、『TAKANAWA WORLD FESTIVAL』を開催予定とのことだ。

最先端技術と歴史が融合する空間体験

■Gateway Park

改札を出てすぐのエリア「Gateway Park」では、イベントやマルシェなどを開催。現在は東京在住のフランス人建築家でアーティストのエマニュエル・ムホー氏による大型アート作品が展示されている。

※提供写真

「噴水も多数設置されており、暖かい季節の日中は子どもたちが遊べるようになっています。そして、日没後は音楽と連動した噴水照明ショーを実施します。水を調光材として使用し、下部のライティングであらゆる色彩を表現できるシステムを完備しています」

季節や時間帯によって表情を変える噴水広場は、「100年先の心豊かなくらし」という開発コンセプトを象徴する空間と言えるだろう。

■高輪リンクライン

「Gateway Park」を通過し階段を降りた先には「高輪リンクライン」がある。

「ここは、まさに高輪築堤が築かれていた場所です。当時の風景を感じていただくため、ARを用いて当時の鉄道風景を体験できるデジタルコンテンツ『TAKANAWA LINK SCAPE』を提供しています」と出川さんは説明する。

設置されているQRコードをスマートフォンで読み込むと、約150年前にこの地を走った列車などを見ることができる。

■未来体験シアター

「THE LINKPILLAR 1」SOUTH棟の地下2階には未来体験シアターがある。円形のシアターで、没入感ある映像体験を提供している。

「現在上映中のプログラムのストーリーは、少年がある日ふとしたことがきっかけでタイムトリップし、TAKANAWA GATEWAY CITYの今から1年後のグランドオープン、その先の未来、そして100年後の街の姿をイメージしていただくものです」

「このプログラムでは、オルタナティブロックバンドの羊文学さんに書き下ろしていただいた『未来地図2025』という楽曲が使用されており、映像と音楽が融合した臨場感あふれる体験が楽しめます。6月いっぱいまで公開されていますので、ぜひご覧ください」

■自動走行モビリティ

木のフォルムが特徴的な自動走行モビリティが施設内を走る。「このモビリティは子供から高齢者まで誰でも利用できるスローモビリティとして設計されました。最大時速5kmというあえてゆっくりとした速度で移動することで、街の風景を楽しみながら安全に移動できます」と出川さん。

「混雑時や荒天時を除き、乗り場や降り場は設定しておりませんので、見かけたら乗り込み、好きなタイミングで降車いただけます。安全面も最大限配慮しており、360°全方位にセンサーを搭載しています。人やものが周囲にある際は自動で停止いたします。最大で3名(300kg)まで同時に乗車可能です」と出川さんは説明する。

現在は最大5台で運用しているが、将来的にはさらに数を増やし、2026年春には約1.3kmの距離を横断するルートを確立する計画だ。ビル間の移動をシームレスにし、歩行者にとって優しい街づくりを目指している。

■空飛ぶクルマ

「空飛ぶクルマの導入を目指しており、航続距離400km、最高速度240km/hの性能を持つ機体の3分の1スケール模型を展示しています。すでにアメリカでは試験飛行が行われており、この街でも2028年の実装を目指し検討を進めています。空飛ぶクルマがあれば、山形や福島、新潟など400km圏内の移動が可能になります。遠距離移動は空を飛び、現地では車として移動ができるため、シームレスな移動が可能になります」

TAKANAWA GATEWAY CITYは羽田空港からも近く、地下にはコンベンションホールがあるため、国際会議などで訪れた方々が短時間で日本各地の観光地を訪れる手段としても期待されている。

■ZERO-SITE Takanawa Gateway

「ZERO-SITE Takanawa Gateway」は、Gateway Parkの南側にある期間限定施設。「3月27日から7月31日まで開催しています。アートと音楽を体感できるナイトミュージアムバー&クラブとして展開しており、日曜を除く17時~23時に営業しています」と出川氏。

日本初導入となる「DANLEY SOUND LABS」のサウンドシステムを備え、日本初上陸のキネティックアートをドイツから輸入して展示している。「ハイエンド×サステナブル(高級感と環境配慮の両立)をテーマに、様々なフードやドリンクを提供しています。アップサイクルビールやエシカルなスピリッツなど製法にこだわったお酒や、生産過程での二酸化炭素の排出量削減に繋がるプラントベースフードを使用したバーフードが楽しめます」と出川氏は付け加える。

TAKANAWA GATEWAY CITYが拓く未来の可能性

2025年秋には「NEWoMan TAKANAWA」と「JWマリオット・ホテル東京」が開業し、2026年春には全てのエリアがオープンする予定だ。

「様々な人々が訪れることでデータ蓄積が進み、新しいソリューション開発を進めていきます。例えばSuicaのデータと街中のセンサーで取得するデータを掛け合わせることで、人々の行動パターンを分析し、より快適な環境やサービスを提供することを目指しています」

TAKANAWA GATEWAY CITYは今後、環境・モビリティ・ヘルスケアの分野で実験を積み重ね、国内外に発信していく予定だ。

「JR東日本グループ単独の開発という利点を活かし、様々な実験が行いやすい環境を提供します。レールでつながっている各地方や世界との連携を強化し、社会課題解決に貢献する実験場としての役割を果たしていきたいと考えています。『100年先の心豊かなくらし』というビジョンは壮大ですが、一歩一歩着実に前進し、持続可能な社会の実現に貢献していきます」と出川さんは将来を見据える。

取材・文/宮﨑駿 撮影/小倉雄一郎

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