
カウンターポイント・リサーチ・エイチ・ケー(以下カウンターポイント社)から、2025年バッテリー駆動電気⾃動⾞(BEV)グローバル市場において、BYDはTeslaを抜き、2025年中に初めて世界市場のトップになる⾒込みであり、さらにBYDの世界市場のシェアは15.7%となる予測を含むGlobalPassenger EV Forecastによる最新調査が発表された。
BYDの世界市場におけるシェアは15.7%と予測
BYD にとっては⼤きなマイルストーンとなり、同社の技術⼒と、電池と⾞体の垂直統合型製造モデルにより達成可能と予測。中国の補助⾦や税制優遇などの施策による後押しも⼤きな効果を⽣むと考えられる。
BYDが発表した超⾼速充電システムはBEVの操作性で従来とは⼀線を画し、充電時間や利便性に関する消費者の不安に応えるものであり、次の特徴がある。
• 1000Vの充電回路:⾼効率な電池へのエネルギーの転送が可能になり、充電時の損失を抑える。
• 充電速度10C(クーロン:電荷=電気量単位)が可能な電池:400km⾛⾏分の充電がわずか5分で可能。
• シリコンカーバイド製パワーIC:電⼒効率と耐熱性を向上させる。
•BYD独⾃のLFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池、⾼価なレアメタル不要、低い⽕災リスク、⻑寿命などの⻑所がある)であるブレード型電池は安全性、耐久性、超⾼速充電に最適化されている。
BYDの超⾼速充電システムに関して、カウンターポイント社リサーチアナリストAbhik Mukherjee⽒は、次のように話す。
「この充電システムは航続距離400km の電気をわずか5分で充電できる。業界の新たな基準になるはずだ。TeslaのSupercharger は275km を10分だから、はるかに速い。これで充電時間に関わる消費者の懸念を⼤きく払拭でき、EVの普及に弾みをつけるだろう」
■Elon Musk氏の政治的発⾔で企業イメージが損なわれ、Teslaは⽶国と欧州で消費者が離反
これとは対照的に、Tesla は問題を抱えている。
まずCEOのElon Musk⽒の政治的発⾔で企業イメージが損なわれ、主要市場である⽶国と欧州で消費者離れが起きている。カウンターポイント社の2025年に関する暫定データでも既に売上が鈍化していることがわかる。
また、⽶中貿易摩擦や中国製EV 部品への追加関税など、地政学的な緊張がTeslaのサプライチェーンに混乱を招いている。こうした要因と、新⾞発売の遅れ、それに競争の激化が2025年のTeslaの業績に影を落とすと考えられる。
この件に関して、カウンターポイント社アソシエイトディレクターLiz Lee⽒は次のようにコメントした。
「CEOのElon Musk⽒は、Teslaにオウンゴールの失点を与えたようなものだ。2025年第1四半期の業績がどれくらい悪化するか、そろそろ数字が出る頃だ。これは、BYDにとってまたとないチャンスで、⾼速充電を本当に世の中に出すことができれば、BYDにとっても、ひいては中国のBEV業界にとっても、ターニングポイントになるかもしれない」
<会計年度2025年⼀般乗⽤BEVグローバル市場の売上シェア・⾃動⾞メーカー別>
出典: カウンターポイント社Global Passenger EV Market Forecast, March 2025
BYDの強さの源泉は垂直統合にある。電池、モーター、制御回路などの基幹部品は⼦会社を通じて管理されており、さらに充電インフラにも進出しようとしている。
こうして隅々まで⾃社のコントロールを⾏き渡らせることで、BYD は利益を犠牲にすることなく、価格競争⼒のある乗⽤⾞を世に送り出すことができる仕組みを整えつつある。それによって、同社の市場でのポジションはさらに盤⽯なものになると考えられる。
調査概要
今回の発表は、チャネル情報、POSデータ、ディストリビューターアンケート調査、公開データなどボトムアップデータソースとトップダウンリサーチの組み合わせによるカウンターポイント社独⾃の調査⽅法で実施された。
調査時期/2024年10⽉1⽇〜2025年1⽉31⽇
関連情報
https://japan.counterpointresearch.com
構成/清水眞希