
時代の変化に伴う需要減や昨今の世界的な原材料価格の高騰により、近年、苦境に立たされる業界は多い。多くの書籍や雑誌を世に出し、生活者に知恵や気付きを与える出版社も例外ではないようだ。
帝国データバンクはこのほど、「出版社」の倒産発生状況について調査・分析を行い、その結果を発表した。
なお、集計期間は2024年4月1日~2025年3月31日で、集計対象は、負債1000万円以上で法的整理によって倒産した出版社となる。
出版社の倒産は過去10年で最多水準へ
2024年度の出版社の倒産は31件となり、前年度(17件)の1.8倍に増えた。2020年度以降は20件を下回る低水準が続いていたが、2015年度以来9年ぶりに30件を上回り、増加の兆しが見え始めている。
この20年、ペーパレス化、デジタル化が進んだほか、スマートフォンの浸透で電子書籍が普及。また、SNSや動画配信サービスなどで多くの情報が発信され、情報をオンラインで手軽に入手できるようになり紙媒体の需要が大幅に落ち込んでいた。加えて、少子化の影響により副教材や主に大学生が使用する専門書を取り扱う出版社などは、廃業・清算が選択肢として出てきていると聞かれる。
近年は、紙やインクの価格が高騰し、製造コストが上昇。需要減のなか、わずかな利益で事業を続けている出版社が増えている。実際に出版社の2023年度の業績をみると、36.2%が「赤字」となり、過去20年で構成比が最大となったほか、減益を含めた「業績悪化」は6割を超えた。
今後については、少子高齢化による読者の減少や雑誌出版においてはオンライン広告の普及により広告出稿も少なくなるなか、紙・インクなどの価格上昇、人件費の増加も加わり、事業環境はさらに悪化していくことが懸念される。印刷や書籍小売など周辺業界も厳しい環境が続くことが予想され、デジタル化への対応ばかりでなく、DX、IT化を進めて生産性、流通形態の再編を図るなど、抜本的な対策が急がれる。
出典元:株式会社帝国データバンク
構成/こじへい