「やる気が出ない」「部下の根気が続かない」と、悩んだことはありませんか? 体調不良などでやる気や根気が出ないこともありますが、内発的動機付けがないことが原因かもしれません。 内発的動機付けとは何か、どうすれば獲得できるのかまとめました。また、外発的動機付けとの違いも具体例を用いてご紹介します。
目次
内発的動機付けとは?

内発的動機付けとは、内側から発生したモチベーションのことです。内発的とは「外からの働きかけによらずに内部から自然に起こる様子」、動機付けとは「生活体に行動を起こさせて目標に向かわせる心理的な過程。モチベーション」を意味します。
そもそも動機付けには内的要因と外的要因があり、相互作用で成立していることが一般的です。また、内的要因による動機付け、つまり内発的動機付けによって生まれた行動は、行動自体が目的となるため長期間にわたり高い意欲を持続できる傾向にあります。
参考:デジタル大辞泉
■内発的動機付けの具体例
内発的動機付けによる行動とは、人の内側から発生した動機によって生まれた行動のことです。例えば、次のような行動は内発的動機付けから引き起こされていると考えられます。
- お客さまに喜んで欲しいから、笑顔で接客をする
- イラストを描くことが好きだから、毎日夜遅くまで作品をつくり続けている
- 歌うのが楽しいから、音楽大学の声楽科の入学を目指す
- 問題を解くのが楽しいから、数学の勉強をする
- 子どもと長く一緒に過ごしたいから、育休を取得する
内発的動機付けは、いずれも自発的に生まれた行動要因であり、誰かに何かを強要されたからといって生じるものではありません。しかし、誰かの発言や行動が内発的動機付けにつながることはあります。
例えば、幼い頃、計算をする度に親が「すごいね」と褒めたことから数字が好きになり、いつの間にか「もともと数字や数学が好き」と自分で思い込むこともあります。
■外発的動機付けとの違い
外発的動機付けによる行動とは、自分以外の人やもの、ことがモチベーションとなった行動のことです。外部から与えられる報酬や名声、他者からの圧力や期待などが外的要因となり得ます。例えば、次のような行動は外発的動機付けから引き起こされていると判断します。
- 営業成績が張り出されるから、営業を頑張る
- 同期の中で一番の存在になりたいから、積極的に社内コンペに参加する
- お金が欲しいから、長時間アルバイトをする
- 叱られるのを避けたいから、ゴミをまとめてゴミステーションに持って行く
- 親が勉強しろと言うから、夜遅くまで勉強する
内発的動機付けとは異なり、自分がどうしたいかではなく、他人にどう思われるか・何を言われるかに左右されます。行動者自身が自発的に願った行動ではないため、モチベーションが長続きしにくい傾向にあります。
内発的動機付けが重要とされる理由

モチベーションには、外発的動機付けと内発的動機付けがありますが、ビジネスにおいて特に重要とされるのが内発的動機付けです。内発的動機付けが重要とされる理由としては、主に次の点が挙げられます。
- 創造的なアイデアが生まれやすくなるから
- 環境に左右されずに働けるから
- 根気よく1つの仕事を続けられるから
- 満足度の高い仕事ができるから
- 幸福感を得てポジティブに生きられるから
各理由について解説します。
■創造的なアイデアが生まれやすくなるから
誰かに命じられて気乗りのしないまま行動するのではなく、自分が興味を持つことや意欲を感じられることに基づいて行動するなら、創造的なアイデアが湧きやすくなります。
「こちらのほうが面白いのではないか」「この部分を工夫すればもっとよくなる」など、次から次へとアイデアが浮かぶでしょう。
ビジネスにおいても同様です。興味を持って取り組むことで自発的に工夫するようになり、周囲の期待を超えるような成果が生まれやすくなります。
「仕事に取り組むときは、常に真剣でなくてはいけない」と頭ではわかっていても、まったく興味を持てない場合は、「とにかく終わらせばよい」といったスタンスになってしまうかもしれません。
しかし、興味のある分野の仕事に取り組むときは、結果に至るまでの過程において自主的に課題を見つけてさまざまなアプローチを試すため、より創造的な結果が生み出されやすくなります。
■環境に左右されずに働けるから
内発的動機付けがあれば、環境が変わってもモチベーションを維持しやすくなります。勤務先や働き方、場合によっては仕事内容が変わっても、自分自身の興味や関心事は変わらないため、周囲に左右されずに仕事を続けられるでしょう。
近年、仕事内容だけでなく働き方においても多様化が進んでいます。会社に所属せずにフリーランスとして働く方や、オフィスに行かずにテレワークを選ぶ方も増えてきました。
働き方の多様化が進んだことで、昇給や昇進といった外発的動機付けだけでは働くモチベーションを維持できない方も増えてきました。
「給料を増やすよりも休日が多いほうが嬉しい」「責任を負いたくないから、役職に就きたくない」のように価値観も多様化していることも、外発的動機付けではモチベーションを維持しにくい原因です。
■根気よく1つの仕事を続けられるから
内発的動機付けが原動力となって仕事に取り組むと、やりがいを感じやすくなります。仕事が単に生計を立てる手段ではなくなり、自分らしく生きるために欠かせない手段となるため、長期的に続けられるようになるでしょう。
例えば、幼い頃から洋服が好きな方が、アパレルショップの販売職に就いたとします。好きな洋服に囲まれて働けるだけでなく、好みの服を着たりお客さまのコーディネートを考えたりできるため、やりがいを感じて働き続けられるでしょう。途中で職場が変わっても、給与があまり増えなくても、意欲を失わずに働けるでしょう。
一方、報酬や昇進、他人からの賞賛といった外発的動機付けは、短期的な動機にしかならない傾向にあります。例えば、給料の高さを魅力に感じて入社した場合について考えてみましょう。
最初は「高給をもらっているのだから頑張らなくては」と意欲的に仕事に取り組んでも、徐々に「頑張らなくても高給をもらえるのだから、手を抜いてもよいだろう」と考えるようになるかもしれません。
■満足度の高い仕事ができるから
仕事に対して満足度を得やすくなるのも、内発的動機付けがモチベーションとなっている場合の特徴です。自分で希望した仕事に就くだけでも満足を得られますが、意欲的に取り組むことで評価を得られるようになると、さらに満足度は高まります。
また、評価を得られなくても、仕事そのものを楽しめるため、ある程度の満足を感じられます。どんなに才能のある方でも常に評価されるわけではありません。内発的動機付けを持って働くなら、評価されるときだけでなく評価されないときも意欲的に仕事を続けられます。
■幸福感を得てポジティブに生きられるから
好きなことをするときは、誰もが幸福感を味わえます。「楽しい」「嬉しい」といったポジティブな感情が生まれ、物事に対して前向きに取り組めます。
仕事は生涯において長い時間を占める行為です。仕事で幸福感を得られるなら、人生の大半をポジティブに過ごせます。幸せを感じて生きるためにも、内発的動機付けのある仕事に取り組むのは大切なことといえるでしょう。
内発的動機付けを獲得する方法

毎日を幸せに過ごし、意欲的に仕事に取り組むためにも、内発的動機付けを持って働くことが大切です。しかし、仕事が常に好きなことや興味のあることとは限りません。
とりたてて興味を持てないタスクを割り当てられたときは、モチベーションにつながる内的要因を見つけられない可能性もあります。
内発的動機付けが得られないときは、意図的に獲得してみてはいかがでしょうか。例えば次のような方法で、内発的動機付けを獲得できることがあります。
- 自分の才能に注目する
- 自己分析を実施する
- 成功体験を得る
- 自己決定力を高める
- 理念を共有する
- 周囲と協力する喜びを理解する
- 周囲からの声に耳を傾ける
それぞれの方法について解説します。
■自分の才能に注目する
まずは自分の才能に注目してみましょう。自分が得意とすることや褒められることが多い分野と、現在取り組んでいる仕事に共通点はないでしょうか。もし才能と思われる事柄と仕事に共通点があれば、「才能を活かして働けること」が内発的動機付けになるかもしれません。
また、今までの周囲の評価も思い出してみてください。仕事の進め方や成果に対して褒められたことはなかったでしょうか。もし褒められることがあったなら、自分自身は自覚していなくても、その部分に才能があるのかもしれません。褒められたことを「得意なこと」と認識すれば、より意欲的に仕事に取り組みやすくなるでしょう。
■自己分析を実施する
自分にどのような才能や得意分野があるのかわからないときは、自己分析をしてみましょう。すでに自分の才能や得意とする事柄を理解している場合も、自己分析をすることにより、新たな才能や得意分野が見つかるかもしれません。
例えば、今までの人生を振り返り、モチベーションが上がったときと下がったときをグラフに記載する「モチベーショングラフ」があります。どのようなときに楽しさや辛さを感じるかが一目でわかるため、自分の内発的動機付けを見つけやすくなります。
「自分史」を書くのも、1つの方法です。幼いときから自分自身が歩んできた道のりを振り返り、印象的だった出来事をピックアップします。その後、ピックアップした出来事について、「なぜその出来事を選んだのか」「そのとき自分は何を頑張ったのか」などを深堀りします。
■成功体験を得る
自分は何事もやり遂げられるという自信を持てば、仕事に対する自信が内発的動機付けになるかもしれません。自信を持って働くためにも、成功体験を積むようにしましょう。
成功体験は、日々の業務からでも得られます。例えば、「15時までに業務を終えて、終業時間までデスクの整理をする」「社内メールを1時間以内に返信する」のように、ちょっとしたことでも構いません。仕事の成果を自分自身でコントロールできることを実感でき、自己効力感が高まります。
■自己決定力を高める
普段から受け身になりがちだと感じる方は、自分で意思決定をする機会を増やしてみてはいかがでしょうか。自分の選択が業務に反映される実感を得られ、内発的動機付けを得やすくなります。
例えば、業務上の判断が必要なときに、すぐに上司や担当者に尋ねるのではなく、どのような判断が適当か自分で考えるようにしてみましょう。また、確認が必要な場合でも、「このようにしておきましたが修正が必要でしょうか」と、相手に丸投げするのではなく最終的な確認だけを任せるようにします。
意思決定をすることには多少のストレスが伴いますが、慣れてくると決断力が高まり、より自分を肯定的に受け止められるようになります。また、周囲からも決定力を持つ人物と認識されるようになり、さらに多くの事柄に対しての裁量権を獲得できるようになるでしょう。
■理念を共有する
企業の理念を共有することでも、内発的動機付けを獲得できることがあります。企業理念を知ってはいても、自分ごととして理解していない場合もあります。企業理念が自分の理念になれば、企業理念に沿って行動することも「自分の意志に沿って行動すること」になり、内発的動機付けを獲得できるでしょう。
まずは、所属する企業の理念を何度も繰り返し読んでみましょう。共感を得られるものであれば、自分自身の行動や働き方が企業の理念に沿っているのか確認してみてください。
■周囲と協力する喜びを理解する
内発的動機付けは個人のモチベーションとなるものですが、必ずしも自分1人の行動から生まれるのではありません。チームワークが向上し、チーム内の信頼関係が強まると、周囲と協力することが自分自身にとっての喜びとなり、内発的動機付けになることがあります。
また、チーム内でお互いに気軽に声をかけられるようになるため、各自が意思を表現しやすくなります。職場が自己実現の場に変わり、普段から内発的なモチベーションを持って働けるようになるでしょう。
■周囲からの声に耳を傾ける
内発的動機付けは自分の内なる声から生まれますが、周囲からの声に耳を傾けることでも生まれることがあります。自分の行動や働きぶりを客観視しようとしても、自分が自分である限り、主観的な視点が入り込んでしまいます。客観的に自分を理解するためにも、まずは周囲からの評価を真摯に受け止めてみましょう。
上司や同僚などが仕事に対して評価してくれないときは、自分から尋ねてみるのも1つの方法です。よい点や改善点を具体的に教えてもらい、「よりよい仕事をする」といった内的要因をベースにモチベーションを高めましょう。
ただし、ネガティブなコメントに注目しすぎるのは注意が必要です。「よりよい仕事にしたい」と自分の中でポジティブに変換できればよいのですが、「叱られないように仕事をしよう」と外発的動機付けを持つようになる恐れがあります。
内発的動機付けを促すことが難しい理由

自分自身の努力や意識付けにより内発的動機付けを獲得することは難しくはありませんが、他人に内発的動機付けを促すことは困難です。他人の内発的動機付けを引き出すことが難しい理由としては、次のポイントが挙げられます。
- 標準化が難しいから
- 周囲の影響を受けにくいから
それぞれのポイントを解説します。
■標準化が難しいから
誰にとっても内発的動機付けになるものは存在しません。ある人にとっては「お客さまの笑顔」が仕事を頑張る内的要因になりますが、別の人にとってはお客さまの笑顔よりも「仕事の完成度の高さ」が仕事の原動力になります。
内発的動機付けは標準化が難しいからこそ、他人のモチベーションを引き出すのは困難です。目標を定めるときは、全体的な目標とは別に個人ごとの目標を設定し、各自が自分だけの目標に向かって行動できる状態をつくるようにします。
また、対象となる人がどのようなことにやる気を発揮するのかを観察し、内発的動機付けにつながるような声がけをすることも大切です。
■周囲の影響を受けにくいから
内発的動機付けは、自分自身が決定するモチベーションです。周囲が「仕事を通して自己実現をしよう」「自分が正しく評価されるためにも、仕事の質を上げよう」と口やかましく言い立てても、言われる本人が心の底から納得していないなら、内発的動機付けとはなりません。
対象となる人から内的要因に基づくモチベーションを引き出すには、その人の価値観を正確に把握することが必要です。どのようなことに価値を見出すのかを理解すると、内発的動機付けにつながる声がけをしやすくなり、内的要因に基づいたモチベーションを持てるように助力できるかもしれません。







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