キリンホールディングスは生成AIを従業員の『相棒』として位置づけ
キリンホールディングス株式会社は、顧客への価値創造につながる時間の創出に向け、2024年11月より、業務特化型生成AIの活用を目的とした「KIRIN BuddyAI Project」を開始した。その最初の取り組みとして「BuddyAI for Marketing」としてマーケティング領域で生成AIの活用を進めている。
デジタルICT戦略部 主査 永沢拓也氏は、生成AI活用のコンセプトについて次のように話す。
「生成AIは業務効率化の面が注目されがちですが、我々はお客様への価値創造における貢献度をさらに高められると信じています。そのため単なるツールではなく、従業員とともに成長しながら業務を支える『相棒』として位置づけており、その思いを込めて『BuddyAI』と名付けました。BuddyAIは従業員の創造力を引き出し、より価値のある業務に集中できるよう支援する存在でありたいと考えています」(永沢氏)
●マーケティング領域における生成AI活用用途
「BuddyAI for Marketing」には、キリングループのマーケティング業務に特化した「エグゼキューション開発」「調査・分析」「汎用業務」の3つのカテゴリーに分類された約15種類のプロンプト(指示文)テンプレートが用意されている。
マーケターは自身の業務に最適なテンプレートを選ぶことで、生成AIを効率的に活用し、迅速かつ質の高いアウトプットを得ることが可能だ。
永沢氏によれば、従来から同社が検証を続けてきた「AIペルソナ」も活用できるようになる見込みだという。
「我々は、プロンプトに心理学的アプローチを取り入れることで、生成AIにより多様なペルソナを生成することに成功しました。その結果、生成されたAIペルソナに対してマーケターが疑似インタビューを行うことが技術的に可能であるという結論が得られました。
お客様インタビューに臨む前に、AIペルソナと対話を重ねることで、疑似的にお客様インサイトを抽出し、コンセプトをブラッシュアップできます。これにより、素早く正確にお客様のインサイトを捉えられるようになると期待しています。
そこで今後はBuddyAI for Marketingに、AIペルソナを活用できるテンプレートを搭載し、マーケターがワンクリックでAIペルソナと対話できる環境構築を目指しています」
●今後の展望
今後の生成AI活用の展望について、永沢氏は次のように述べた。
「今後、市場においてはAIを活用してお客様一人ひとりに最適なマーケティングや、個別化されたサービスの提供を進めることで、LTV(顧客生涯価値)を最大化していく流れが加速すると考えています。そこで当社はBuddyAIをハブとし、人とAIが互いの力を最大限に引き出すことで、人がやらなくてもよい仕事はAIに任せ、人が注力すべきクリエイティブな業務に集中できる環境を整えていきます。これにより、お客様にこれまでにないスピード感とクオリティの高い価値を提供できると考えています」
生成AIがマーケティング領域における活用が進めば、マーケティング担当者などの「中の人」がより顧客に近づく可能性が見えてきた。その効果が製品やマーケティング施策として肌で実感できる日を楽しみにしたい。
取材・文/石原亜香利