
OpenAI社のChatGPTが爆発的に注目を集めて以来、生成AIは企業のあらゆる業務に導入され、定着しつつある。
デジタルマーケティングの分野でも活用が進む中、生成AIは今後さらに活用の幅が広がるだろう。
今回は、国内でデジタルマーケティングを先駆的に取り組むネスレ日本とキリンホールディングスに、生成AIのマーケティング活用用途や展望を聞いた。
ネスレ日本は、生成AIで製品コンセプトを作るワークショップを実施
ネスレ日本はDX推進を背景とし、2023年9月からは社内版ChatGPT「NesGPT」を全従業員に提供し、業務への利活用を進めている。特徴的なのは“従業員を支援する”ことをコンセプトとしている点だ。常務執行役員 デジタル&Eコマース本部長 兼 新規ビジネス開発部長の島川基氏は、AI活用の位置付けについて次のように解説する。
「AIは膨大な量のデータをより速く処理し、製造や業務効率を向上させ、従業員がより創造的なタスクの時間を確保する上で、重要な役割を果たします。当社は、“人材”こそが常に真の競争優位性の源であり、AIは従業員を支援する手段・ツールであると捉えています」(島川氏)
●マーケティング領域における生成AI活用用途
マーケティング領域において、生成AIはプロジェクトの要件定義やタスクなどのドラフト作成や、過去のお客様の声や消費者アンケート調査の結果をもとにしたニーズ分析のほか、クリエイティブ領域にも活用している。
同社は過去のグローバルを含めて展開した過去の広告やWebサイトなどのコンテンツを集約したデータベースを構築しており、容易に検索、活用できる仕組みを作っている。そこに生成AIの技術を加え、「夏のキャンペーンを行いたいが、どんなクリエイティブが最適か?」などと指示すれば、過去データを元に画像生成する仕組みなども今後可能になるという。
また、島川氏によれば、現在、製品コンセプトの策定に生成AIを取り入れる試みを実験的に進めているという。
「先日、社内でマーケティング部門も含めて、生成AIで製品コンセプトを作るワークショップを行いましたが、20個以上のコンセプトが生まれ、アウトプットの量と質も格段に上がりました。製品化は長い歳月を要するため、まだ先の話になりますが、今後は生成AIを活用しながら、より顧客ニーズに合致する製品開発に向けて進めてまいります」
●今後の展望
今後の生成AI活用の展望について、島川氏は次のように述べた。
「生成AIのコアの価値は、マーケティング担当者がより消費者に寄り添った根本的な課題にフォーカスできるようになることだと考えています。これまで製品コンセプトやコンテンツづくりなどの作業にほとんどの時間をかけており、正直消費者の課題に向き合う時間のほうが少なくなっていました。生成AIによりそれが逆転する見込みがあります。AIに任せるべき仕事を明確にしながら生成AIの活用を加速させていきたいと考えています」