
ゴールデンウィークが明けると、多くの企業で新入社員の「戦力化」に向けた期待が一段と高まります。「いつまでも新人扱いではなく、早く一人前になってほしい」という思いは、現場のリーダーや上司に共通する願いでしょう。一方で現場では「育成の負担が大きい」「いつまでも指示待ち」などの声も少なくありません。
しかし焦って詰め込み教育を行うだけでは、かえって本人を混乱させてしまい、成長のスピードを鈍らせてしまうこともあります。
新入社員が早期に戦力となるために必要なのは、実はシンプルです。
「明確な目標」と「責任」の設定こそが、彼らを成長へと導く最も有効なアプローチなのです。
明確に目標を設定する目的とは
組織とは、共通の目的や目標を持って、複数の人が役割分担しながら協力・連携する集団のことを指します。そして組織の一員として働くというのは、個人の力をチームの力に変えて、共通の目的に貢献することです。なので、社員一人一人の目標は、企業の目的達成に欠かせないものであり、会社に入ったばかりの新入社員には、
「あなたが組織の中でどういう役割を担っていくか」を明確に認識させることが大切です。
※目標を明確に設定する目的は大きく2つあります。
(1) 組織全体の目標と個人の行動を結びつけ、成長の方向性を明確にするため
(2) 主体性(責任)、受け身ではなく自分で考えて動く姿勢を持たせるため
2つの目的から個人に目標を持たせることによりチーム全体として前に進むことができるのです。
明確な「目標」「責任」とは
目標設定は言い換えると「結果設定」であります。
また責任(自責)とは「自分事として捉え自分が目標を達成する為に何が出来るのか」を考え行動する、「行動したことに対しての評価を受ける」ことに言い換えることができます。
要するに新入社員に求める結果を明確に設定する、新入社員が行動した結果を明確に評価する仕組みを整えることが新入社員の早期戦力化に必要なことになります。
新入社員が迷いのない状態かを確認することが重要、シンプルに行動量を増やす
新入社員は経験が足りないため、多くの場合「何をすればいいか分からない」状態からスタートします。
その際、目標設定する側(上司)の基準で設定をすると「意味が分からない⇒自分事として捉えられない」状態に陥りやすいです。
なので、目標設定する際には、設定する目標が新入社員にとって明確な状態か否かを確認することからスタートする必要があります。
結果が明確とは「(1)期限と状態の認識がズレないこと(2)行動するのに迷いがないこと」と定義することができますが、新入社員へ確認すべきは「(2)行動するのに迷いがないこと」であるか否かです。
そのため、最初から設定する側の基準で目標設定をするのではなく、最終的に目標に繋がるシンプルな業務から目標を設定する、達成しやすい短期の行動目標を設定することが有効です。
また、社員本人にも行動目標に対して計画を考えさせることにより自分事として捉えられる、責任を持たせることができます。
例)求めるゴール:1か月で100万の売上を作る
・「先輩社員との同行営業を週5回以上実施し、商談プロセス5回分をレポートにまとめる」
※誰の営業同席をするのかは社員本人に決めてもらう(考えさせる)
明確な目標設定の仕方:SMART法則
目標設定をする際の方法の1つとして「SMART法則」があります。
「SMART」の名称は、「Specific(具体性)」「Measurable(進捗の測定可否)」「Achievable(実現可能性)」「Relevant(最終目的との関連性)」「Time-bound(期限の設定)」の5つの頭文字を取って付けられています。
・Specific(具体性):どのくらいの期間をかけて、どのような方法で取り組むかなど、目標達成への具体的なプロセスが考えられているか。
・Measurable(進捗の測定可否):目標への取り組み具合や結果を数値で測ることができるか。
・Achievable(実現可能性):事業目的を達成したい気持ちが強いために、非現実的な目標を設定していないか。
・Relevant(最終目的との関連性):事業目的達成のために必要な目標が設定されているか。
・Time-bound(期限の設定):目標達成の期限や、長期的目標の場合は中間振り返りの時期を定めているか。
例えば、下記の目標をSMART法則に分解すると
・目標:「先輩社員との同行営業を週5回以上実施し、商談プロセス5回分をレポートにまとめる」
・Specific(具体性):同行営業+レポート
・Measurable(進捗の測定可否):週5回、5件分のレポート提出
・Achievable(実現可能性):先輩のスケジュールに合わせ実行可
・Relevant(最終目的との関連性):営業スキル習得の第一歩
・Time-bound(期限の設定):入社から2ヶ月以内
不足にも正しく向き合わせることも重要
経験が足りない新入社員は失敗に対して落ち込むこともあります。
「できない自分」を直視するのは、誰にとっても勇気がいることです。しかし、それを避けている限り、成長はありません。
上司が部下に「不足に向き合わせる」方法は、単に不足を指摘するだけでなく、部下がそれを自分の成長のチャンスとして受け入れ、ポジティブに捉えることができるような管理をすることが大切です。
不足があることのみでなく、具体的な状況や事実を挙げて、不足の原因は何か、改善するためにはどうすれば良いのかを考えられるように仕向けることが重要です。
抽象的な指摘は部下が何を改善すれば良いのか迷ってしまう、自分事として捉えられない原因になります。
また、不足を改善する為の足りない権限を確認することでより自分の責任として捉えさせることができます。
例)ちゃんと営業同行しなさいよ、何故出来ていないの?✕
営業同行目標5件に対して3件でしたね。
3件は何故出来て、2件は何故出来ていないですか?
残りの2件ができるようになる為にあなたが出来ることは何ですか?〇
まとめ
新入社員が早期に活躍するためには、明確な「目標」と自分事として捉える「責任」が不可欠です。目標と責任を明確にすることにより新入社員は「指示待ち」から「自ら考え動ける人材」へと成長していきます。
今いる新入社員が「何を目指し、どこまで任されているか」が不明確になっていないか、
一度振り返ってみてください。
文/識学コンサルタント 金希恩