
少子高齢化や仕事に対する価値観の変化などにより、日本の労働市場では慢性的に人手不足が続いていると言われている。そのため、人材のスキル不足や採用に課題を抱えている企業も少なくないだろうが、アジアの他国と比べてどのような現状なのだろうか?
ヘイズ・ジャパンはこのほど、同社が発表した「2025年版ヘイズアジア給与ガイド」の中から、アジア全体と日本における人材のスキル不足事情に関する調査結果を公開した。
本調査は、2024年後半の6週間にわたり、3,670人の採用担当者を対象に実施され、企業が直面するスキル不足の実態を明らかにしたものだ。また、スキル不足の主な要因、採用が難しい職種、2025年の人員計画の見通しについても調査した。
アジア全体:他社との競争によるスキル不足が顕著
2024年にはアジアの採用担当者の62%が「中程度から深刻な」スキル不足を経験し、さらに26%が軽度のスキル不足を感じていることが明らかになった。
スキル不足の主な要因について尋ねたところ、47%の採用担当者が「他社との競争」を最大の課題として挙げた。また、33%は「給与水準」が影響を及ぼしていると回答し、27%は「昇進機会の不足」を挙げている。
企業が特に採用に苦戦している職種としては、中堅レベルの職種が55%と最も多く、次いでマネージャーレベル(37%)、エントリー/ジュニアレベル(20%)、Cレベル(13%)、ディレクターレベル(12%)となった。
このような課題に対し、33%の採用担当者が「社員の定着」に重点を置いたHR投資を計画しており、27%は「社員の採用」を優先事項として挙げている。
日本:採用を強化し、スキル不足を補填
日本の採用担当者はアジアで最も深刻なスキル不足に直面しており、タイと並ぶ71%の企業がその影響を受けている。これはマレーシア(64%)、中国(60%)を上回る水準だ。
また、38%の企業が「他社との競争」をスキル不足の主な要因として挙げている。
ヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクターであるグラント・トレンズ氏は、「56%の企業が、スキル不足に対応するために2025年に人員を増やす予定です。そのうち14%の企業が5~10%の増員を計画しており、さらに14%が10%以上の人員増加を見込んでいます」と述べている。
加えて、15%の採用担当者が今年の人員増を予定しているものの、具体的な増加率は未定であると回答した。採用計画と並行して、31%の企業が社員の定着を優先事項とし、必要不可欠な人材の確保に注力している。
「日本では中堅レベルの職種が最も採用困難であることが判明しました。54%の採用担当者が中堅レベルの採用に苦戦していると回答しており、マネージャーレベル(46%)、エントリー/ジュニアレベル(19%)がそれに続きます」とトレンズ氏は述べている。
高い需要が続くコミュニケーション能力
企業が求めるソフトスキルについて調査したところ、「コミュニケーション能力および対人スキル」が50%で最も重視されていることがわかった。これに続いて、「他者との協調性」(27%)、「変化への適応力」(25%)が求められている。
「これらの調査結果は、日本の職場におけるコミュニケーションとチームワークの重要性を浮き彫りにしています。企業は円滑なコラボレーションと適応力を確保するため、これらのスキルを持つ人材を優先して採用しています。これらのスキルに優れた求職者は、引き続き高い需要が見込まれます」とトレンズ氏は述べている。
<ヘイズアジア給与ガイド 雇用の実態調査部分調査概要>
調査期間:2024年9月~11月
調査方法:インターネット
回答者:アジア6カ国・地域の社会人 8,790人
内訳:中国2,134人、香港特別行政区746人、日本1,442人、マレーシア2,682人、シンガポール1,519人、タイ267人
出典:ヘイズ・ジャパン
構成/こじへい