
京都の深い部分まで知るためには、拠点を持つ必要があると考える玉川さん。そこで今回は、京都の不動産事情を専門家・田中和彦さんに取材。家賃の目安や人気エリアの坪単価などについて伺った。
【話を伺った人】京都の不動産に詳しい 田中和彦さん
マンションデベロッパーや不動産ベンチャーなどに従事し、現在は京都を拠点に不動産コンサルティング業務を行なうコミュニティ・ラボ代表。
第二の拠点として最適な物件を探るべく地価高騰が続く京都の不動産事情を取材!
玉川 大学の6年間、京都に住んでいましたが、京都の深いところに触れずに離れてしまいました。そのことが心残りで、京都に関わる仕事にコミットしたいと。そこで「京都に住む」ということを、サブジェクトにしようと思います。先日、学生時代に住んでいた左京区のマンションについて調べてみたら、実は今でも同じ家賃だったことに驚きました。
田中 そうでしょうね。そのあたりは学生向きの物件が多いエリア。古くなっても建て替えが進まず、結局、賃料が昔から変わりません。東京に比べて京都の賃料は低く、例えば1DK/40平方メートル台前半の広さで交通や生活の便がいい物件だと、月額10万~15万円ぐらいが一般的な相場です。東京に住まいがあり、セカンドハウスとして京都の物件を探しに来て「京都は安い!」と感じる人もいるようです。月額15万円も出せれば、相当新しくていい物件も選択肢に入りますよ。
玉川 物件を購入する場合は、どのような金額感なのでしょうか。
田中 それも東京に比べて安いです。京都で今、地価が高いエリアとして知られる「田の字エリア」を例に挙げましょう。京都御所からJR京都駅までの「洛中」ともいわれる区画で、南北だと七条から丸太町まで、東西だと鴨川から堀川までを指します。坪単価が新築マンションで400万~500万円だったのが、最近は500万~600万円と値上がりし、今後も右肩上がりだと想定されます。けれど東京の山手線内で坪単価1000万円を超えるところに比べれば安いです。
玉川 「田の字エリア」が高級住宅地というイメージはなかったですね。
田中 地価の高い例として「田の字エリア」を挙げましたが、この地域は東京でいう「渋谷・松濤」みたいなところ。先祖代々、100年以上前から住み続けている人たちが、土地をなかなか手放しません。新築マンションを含めて物件が出てこない分、希少性が高いといえます。地価が高い高級住宅街といえば、以前までは北大路や北山のことを指しましたけど、だんだん様変わりしてきています。
家賃や物件価格が安いだけでなくどこでも生活の便がいい!
玉川 僕の中では高級住宅地というイメージが強い、鴨川沿いや岡崎のあたりの物件はどうなんでしょう?
田中 海外の人たちに人気です。ただし、戸建てで土地から買うのは非常に難しく、特に岡崎の戸建ては数億円と超ド級(笑)。中古マンションのストックも少ないので、いい物件はなかなか出てきません。一般的なビジネスパーソンが買うとなると、土地付きの一軒家ではなく、どうしても分譲マンションになるでしょうね。ちなみに岡崎より東にある南禅寺周辺では、別荘や山荘として利用していた物件を、大手企業の社長や会長が、ドンッとまとめて買うケースもあります。
玉川 せっかく京都に住むのであれば、歴史を感じるところに住みたいというニーズもありそうですよね。
田中 おっしゃるように、文化や伝統工芸を味わい、京都らしさを体験したいという人もいます。例えば、中心部から少し離れた、西陣や銀閣寺界隈で、京町屋を改装して住む人もいますよ。近所にはミシュランの星付きレストランがひっそり立っているような場所です。
玉川 ちなみに生活の便を考えるなら、どのエリアがいいのですか?
田中 大阪にアクセスしやすい阪急線沿線のように「交通の便」がいいところでなくても、京都ならどのエリアもコンビニやスーパーがそれなりにあり、生活には困りません。しいていえば、左京区より少し南に行った東山地域の一部は、スーパーやコンビニが少ないエリアです。
玉川 実際に不動産を買うのか借りるのか迷いますね。京都にいる時だけ住み、いない時は貸すという、いわゆるコンドミニアムのような選択肢はありますか?
田中 ほんの少ししかありません。というのも、自分が不在の時だけレンタルに出したとしても、なかなか埋まりません。京都の旅館業は、バリアフリーにするなどの細かい規制が条例でたくさん決められていて、外注せずに個人で物件の取得から旅館業の許可取りまですること自体、ほぼムリだと考えてください。さらに、日本ではどんなに長期休暇を取ったとしても、せいぜい2週間程度。部屋を貸し借りする習慣やインフラが整っておらず、マッチングすることも難しいです。また、月に数回、京都へ定期的に来られる人たちのニーズは、ほとんどが食事です。京都は、大阪からも東京からもアクセスがいいので、ゆっくり食事を楽しんだ後でも、大阪や東京まで電車で帰れてしまう。食事の後、京都で宿泊する人のために、フォーシーズンズのような大手外資系ホテルがサービスアパートメントを提供していますが、かなりの高額なので、一般的ではありませんね。
玉川 拠点づくりを検討するうえで大変参考になりました。結論を出すのは難しそうですね。もう少し調べてみたいと思います。ありがとうございました!
今月の取材で深めた京都の[不動産]事情 主なまとめ
★坪単価は高くても500万~600万円。東京よりも安い。
★投資目的で物件を購入するなら地価高騰が望める「田の字エリア」。
★賃貸なら1DK/40平方メートル以上の新しいきれいな物件を月15万円で借りられる。
★京都はどこも生活の便はいい!スーパーやコンビニがあり、暮らすのには困らない。
★必要な時だけ泊まれて不在時は貸し出せるような住まいの選択肢は少ない。
今回のまとめ
最近はインバウンドの影響もあり、京都のホテルは予約がなかなか取れません。今後、定期的に京都に行くのであれば「買うなり借りるなりした方がいいのではないか」と考えています。今回の取材では、1回約3万円程度のホテル代で、月に4〜5回泊まる計算だと、家賃が月15万円程度の部屋を借りる手もあるとわかりました。今後は田中さんからの情報をもとに、地価が高騰している中心部の新築マンション、外資大手のホテルが運営しているレジデンスなど、実際の物件を見学したいですね。読者の皆さんも興味関心のある地域があれば賃料や物件購入価格を調べてみて「好きなこと」を仕事する拠点づくりの可能性を、無理のない範囲で探ってみてはいかがでしょうか。
玉川 徹さん
テレビ朝日系、朝の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』のレギュラーコメンテーターとしておなじみ。パーソナリティーを務めるレギュラー番組『ラジオのタマカワ』(TOKYO FM / 毎週木曜日11:30 ~13:00)が大好評オンエア中!
取材・文/柿川鮎子 撮影/湯浅立志(Y2) 編集/田尻健二郎