キックバックとは、取引先に支払われる謝礼金の一種で、必ずしも違法とはいえません。水増し請求などの不正を防ぐには、社内ルールの整備やダブルチェック体制などの対策が効果的です。
目次
キックバックの意味は?
『キックバック』とは、ビジネスシーンでも使われることのある用語です。キックバックの基本的な意味や、特徴について知っておきましょう。また、似ている用語の『キャッシュバック』『リベート』との違いも解説します。
■取引における謝礼金のこと
キックバックとは、企業間の取引において、販売促進・謝礼を目的として支払われる金銭のことです。例えば、「この商品を〇〇個販売してくれたら、売り上げの〇〇%をキックバックします」というような提案が典型的です。
このような取引は、販売側と提供側の双方にメリットをもたらします。販売側はキックバックという追加報酬を得られ、提供側は商品・サービスの販売促進につながるため、いわゆる『Win-Win』の関係構築につながります。
キックバック自体に違法性はないものの、場合によっては法に触れる可能性があるので、正しい知識を持って運用することが大切です。
■キャッシュバックやリベートとの違い
キャッシュバックは、主に小売店と一般消費者の間で行われることが多い還元策です。例えば、スマホ購入で5,000円が消費者に戻ってくるような仕組みがキャッシュバックです。
また、リベート(割戻し)もキックバックとほぼ同義で、一定の販売実績を達成した際に代金の一部を返金する仕組みを指します。
なお、現在では『キックバック』という言葉はあまり良いイメージを持たれていないため、ビジネスシーンでは『リベート』という表現が好まれる傾向にあります。
キックバックの具体例
ビジネスシーンでキックバックを活用する場合は、違法な取引にならないよう注意することが重要です。法的に問題のない取引と、違法になるケースを具体的に解説します。
■法的に問題のないキックバック
法的に問題のないキックバックは、販売促進を目的とし、事前に双方の合意と取引の透明性が確保されていることが前提です。
例えば、メーカーが小売業者に対し「商品の販売実績が一定の基準を超えた場合、売り上げの一部を販促費として支払う」と提案し、双方が合意すれば問題はありません。
メーカー側は商品販売の拡大が期待でき、小売業者側は成果に応じた報酬を受け取れるため、双方にとって利益のある関係が築かれます。
さらに、販売側がこうした報酬を価格調整などに充てることで、最終的には消費者にとってもメリットが生まれる可能性もあります。
■違法となるキックバック
キックバックが違法とされる典型例に、水増し請求による資金の私的流用が挙げられます。例えば、A社の担当者がB社に対し、本来500万円の契約を600万円に水増しし、差額をキックバックとして還流させる行為は違法です。
仮に、担当者同士が合意の上で水増し請求を行っていたとしても、会社に損害を与えている以上、不正と見なされる行為です。
また、大学の研究室で実態のない勤務を報告させ、部下の給与や研究費の一部を上司に還流させるなど、教育機関でも違法なキックバックが問題となることがあります。
■政治・行政で問題とされるキックバック
近年、政治・行政の分野で発生するキックバックが、社会的な関心を集めています。中でも問題視されているのは、政治資金パーティーを通じた収入の不記載です。
政治資金パーティーとは、政治家・派閥が活動資金を得るために開催する有料イベントのことをいいます。パーティー券を購入した企業・団体が、間接的に資金を提供する仕組みです。この構造自体は、適切に収支報告していれば違法とはされません。
しかし、パーティー券の販売収入や、議員に還流(キックバック)した資金を収支報告書に記載しない場合は、違法行為に当たります。いわゆる『裏金』となり、私的流用や買収などに使われる恐れがあるでしょう。
さらに、キックバックで得た収入を所得として申告していなければ、脱税の疑いが生じる可能性もあります。
違法なキックバックのリスクと防止対策
違法なキックバックは、企業や個人にとって深刻な問題となります。最後に、違法なキックバックがもたらす具体的なリスクと、効果的な防止対策について解説します。
■違法なキックバックによるリスク
違法なキックバックが発覚した場合、企業や個人は重大な法的リスクに直面します。従業員が会社に無断で金銭を受け取れば、背任罪・詐欺罪となる可能性があるでしょう。
こうした不正は、税務上でも重大な問題となります。キックバックを隠蔽したり、税務調査で虚偽の説明を行ったりした場合、重加算税の対象となる恐れがあります。特に帳簿の改ざんや二重帳簿の作成、虚偽資料の提出などは、意図的な隠蔽と見なされる行為です。
不正が発覚した企業は、コンプライアンス違反として社会的信用も失います。従業員に対しては、懲戒解雇や損害賠償請求、刑事告訴も可能です。特に、取締役など重要な役職者の場合は、特別背任罪が適用される可能性もあります。
■違法なキックバックを防ぐための対策
違法なキックバックを防ぐためには、会社全体で複数の対策を講じる必要があります。まず、請求書と発注内容の照合を徹底し、複数の経理担当者によるダブルチェックを日常化しましょう。
また、取引の透明性を確保するために、定期的に外注先リストを作成し、その内容が実際に存在するかを年に1度は確認することが大切です。固定取引についても『相見積もり』を定期的に取り、価格の適正さを確認する習慣をつけましょう。
さらに、コンプライアンス研修を通じて、従業員教育を徹底することも重要です。キックバックのどのような行為が違法になるのか、罰則内容までしっかり理解させることで、不正を未然に防ぐ効果が期待できます。
キックバックを正しく理解しよう
キックバックは、ビジネスにおいて合法的なインセンティブとして機能する場合もありますが、不透明な形で行われると違法と見なされる可能性があります。
違法なキックバックは、企業や個人に深刻な法的リスクをもたらすため、適切な防止対策を講じることが重要です。透明性のある取引と明確な社内ルールの確立が、ビジネスにおける信頼維持の鍵となります。
構成/編集部







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