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カプコンの決算「モンハンワイルズ」1000万本の大ヒットで逆転ホームランとなるか?

2025.04.11

カプコンが2025年2月28日に発売した「モンスターハンターワイルズ」が3月31日に全世界販売本数1000万本を突破したと発表しました。

販売から1ヶ月で1000万本を突破するのは異例ですが、経営陣はこの大ヒットを視野に入れていた節があります。

というのも今期の計画達成はこのタイトルただ1つにかかっていたからです。

海外サイトの総合評価メタスコアは「88」と好感触

「モンスターハンターワイルズ」はシリーズ初のクロスプレイ(異なる機種同士での通信が可能なシステム)を導入し、PlayStation5、Xbox Series X|S、PCの同時発売を行うなど、ユーザーファーストの販売計画が立てられていました。

自然と人間の共生に重きを置かれた重厚なシナリオや、優れたグラフィック、最新のモーションキャプチャー技術を盛り込んだ滑らかなアクション、ゲームの世界観を際立たせる壮大な音楽など、精緻なゲーム世界が構築されています。

海外のレビューサイト「Metacritic(メタクリティック)」の総合評価にあたるメタスコアは、88とユーザーの評判も上々。このタイトルはもともとの期待値が高いため、実際のゲームとのギャップが生じると落胆から評価が著しく低くなることがあります。1000万本の突破は期待を良い意味で裏切った結果でしょう。

カプコンは2023年3月に最新型の高解像度カメラ150台を設置したモーションキャプチャースタジオを新設していました。設備投資に惜しみなく経営資源を投下した、カプコンの力がフルに発揮されています。

今回のメガヒットは、カプコンにおいて大きな意味を持ちます。今期の計画だけでなく、経営目標をも達成するものだからです。

10期連続の営業利益2桁増にリーチ

カプコンは2025年3月期において、売上高を前期比8.3%増の1650億円、営業利益を同12.1%増の640億円と予想しています。第3四半期累計期間(2024年4-12月)における売上高は前年同期間比16.3%減、営業利益は同35.0%減と、2桁もの大幅な減収営業減益でした。残り3ヶ月で増収増益へと持ち込むという強気の姿勢をとっていたのです。これは2024年12月までは大型タイトルに欠けていたためであり、経営陣は当初から『モンスターハンターワイルズ』1本にすべてを賭していました。

『モンスターハンターワイルズ』のパッケージ版の小売希望価格は9900円。ダウンロード版も9900円で販売されています。小売店やプラットフォーマーへの手数料を除いても、1000万本を販売すれば600億円は超えるものと予想でき、第3四半期までの売上と合わせると1500億円程度は狙える計算。そこに既存のソフト分と別事業の売上が加われば、計画の1650億円は達成する公算が高いのではないでしょうか(筆者による独自の計算)。

※計算式:販売経路を小売:DL=4:6として、手数料を小売店(5割)、プラットフォーマー(3割)として概算。1000万本×9900円×6割(メーカーの取り分)で割り出した

売上とともに営業利益も計画を通過することも重要。カプコンは経営目標として、毎期10%以上の営業利益成長という高い目標を掲げています。今期、12.1%増を達成すると、10期連続で経営目標に届くという節目を迎えるのです。

※決算短信より筆者作成

競合のコナミが2015年3月期から5期連続で営業利益2桁増を成し遂げましたが、10期連続というのは驚異的。カプコンの今の好調ぶりをアピールするに相応しい好材料となるでしょう。

高関税が課されることでパッケージの販売は低迷するか?

カプコンは今回の大ヒットにより、短期だけでなく中期的な収益の足掛かりを得ることができました。『モンスターハンターワールド:アイスボーン』のような拡張パックの販売でもう一段階の売上増に期待ができるためです。

また、カプコンは巧みな価格調整で、消費者の購入心理をくすぐる手法にも長けています。『モンスターハンターワイルズ』を発売する前に、シリーズの過去作品を67%オフから75%オフというセール価格で販売したのです。これはシリーズ最新作への導入をも促していることは明らか。マーケティングも巧みで、営業利益を高める要因の一つにもなっています。

ただし、まったく別の角度からゲーム業界全体に暗雲が立ち込め始めました。アメリカの関税です。

カプコンは販売本数全体の実に85%が海外を占めています。アメリカは主力市場の一つ。46%という高関税の影響を受ける可能性があります。「モンスターハンターワイルズ」が関税の影響を受ける前に発売できたことは、不幸中の幸いだったでしょう。

一方で、カプコンは原価を削減するために戦略的に脱パッケージ化を進めていました。全体の9割はダウンロードが占めています。アメリカの消費者は小売店で購入するのをやめ、ダウンロードに移行するかもしれません。それは利益率を追求するカプコンには優位性をもたらす可能性もあります。しかし、クリスマスや誕生日のプレゼントとしてのパッケージ需要が根強いのも確か。プレゼントもダウンロード版を贈るのが常識となるような、販売方法や消費者の意識変革を行う必要性に迫られるかもしれません。

高関税の影響は特にNintendo SwitchやPlayStationなどのハードへの打撃が大きいと予想され、ゲーム機の販売が不調となれば、ソフトメーカーにも影響が出ます。

関税によってどれほどのインパクトが出るのか、2025年の注目ポイントの一つとなるでしょう。

©CAPCOM

文/不破聡

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