
アラート付き血糖モニタリングにより糖尿病患者の交通事故が軽減か
インスリン治療を受けている糖尿病患者では、治療に起因する低血糖症が起こることがある。低血糖症が車の運転時に起こった場合、意識障害などから交通事故につながりかねない。この度、インスリン治療を受けている糖尿病患者で、アラート付きの持続血糖モニタリングシステム(CGM)の装着により、運転中の低血糖の発生率が低下するという研究結果が報告された。名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の前田龍太郎氏らが行った研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」に2月28日掲載された。
2014年の実態調査では、糖尿病治療中の患者の52%が日常生活で低血糖を経験し、そのうちの10%で運転中に低血糖エピソードを生じ、結果としてその2%が交通事故にあった、と報告されている。無自覚の低血糖を加味すれば、運転中の低血糖エピソードの頻度はさらに高い可能性があり、切迫した低血糖を予測してドライバーに警告できる信頼性の高いシステムが必要とされていた。このような背景から、研究グループは、インスリン治療を受けているドライバーを対象に、低血糖アラート機能付きのCGMの有用性を評価する単施設の非盲検ランダム化クロスオーバー試験を実施した。
対象には、2021年7月6日から2023年2月27日の間に名古屋大学医学部附属病院でインスリン治療を受け、週3回以上車を運転する成人の糖尿病患者30名が含まれた。30名の参加者は、アラート機能付きCGM群(アラート群)、アラート機能なしCGM群(非アラート群)に1対1で割り付けられた。参加者は、4週の試験期間の後、8週間おいて、群を入れ替えて再度4週間の試験期間に組み入れられた。CGMは皮膚に貼り付けるパッチ式を採用し、期間中の低血糖警告の閾値は80mg/dL(4.4mmol/L)と設定された。主要評価項目は血糖値が基準値(70mg/dL〔3.9mmol/L〕)を下回っていた時間(TBR)の割合とした。
最終的にCGMの解析に含まれた参加者は27名(平均年齢;61.9±12.6歳、女性;8名)だった。27名には、1型糖尿病8名(30%)、2型糖尿病13名(50%)、その他6名(20%)が含まれた。
2つの試験期間を統合して解析した結果、試験全体でのTBRはアラート群(中央値2.0%〔四分位範囲1.0~7.0〕)と非アラート群(同2.0%〔1.0~6.5〕)で有意な差はみられなかった(P=0.169)。しかし、事前に規定された1型糖尿病のサブグループ解析では、非アラート群と比較したアラート群のTBRは有意に減少していた(群間差-4.4%〔95%信頼区間-8.7~-0.1〕、P=0.047)。また、車を運転するときの低血糖エピソードの発生率は、非アラート群(33%)と比較し、アラート群(19%)で有意な減少が認められた(P=0.041)。
本研究の結果について、研究グループは、「今回のCGMはアラートの閾値が80mg/dL(4.4mmol/L)に設定されており、参加者は血糖が基準値以下(<70mg/dL〔<3.9mmol/L〕)になる前にブドウ糖摂取などの予防的措置をとることができた。今回示された結果は、低血糖アラート機能を備えたCGMが、インスリン治療を受けているドライバーの安全性をさらに高め、糖尿病患者の運転制限の緩和に役立つ可能性があることを示唆している」と述べた。
なお、本研究の限界については、CGMで測定した皮下組織中のグルコース濃度は、近似しているが血糖値と同一のものでないこと、CGMの使用により意識が変わり、血糖管理がより慎重になった可能性があったことなどを挙げている。(HealthDay News 2025年4月7日)
Abstract/Full Text
https://www.diabetesresearchclinicalpractice.com/article/S0168-8227(25)00088-9/fulltext
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構成/DIME編集部
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