
ハイテクTシャツで術後患者のバイタルサインをモニタリング
センサーを搭載したハイテクTシャツが、退院後の患者のバイタルサインを追跡するのに役立つ可能性があるようだ。がんで泌尿器の外科手術を受けて退院した70人の患者を対象にした小規模研究で、退院後にこのTシャツを着用して血圧や心拍数、体温などのバイタルサインのモニタリングを受けた患者は、対照群よりも安全で安心できると感じていたことが示されたという。ローマ・ラ・サピエンツァ大学(イタリア)泌尿器科准教授のAntonio Pastore氏らによるこの研究結果は、欧州泌尿器科学会年次総会(EAU25、3月21~24日、スペイン・マドリード)で発表された。
この研究でPastore氏らは、心臓の電気的活動(ECG)、呼吸、心拍数、体温、血圧、動脈血酸素飽和度(SaO2)、血糖値などをモニタリングできるセンサー搭載の軽量Tシャツを開発した。Tシャツにより測定されたデータは、アプリとウェブベースのソフトウェアに転送される。Pastore氏は、「患者に渡したTシャツは、スマートウォッチや他のウェアラブルデバイスとは異なる。このTシャツは、膀胱手術後もモニタリングを続ける必要がある電解質など、より多くのデータを測定できる。電解質のバランスが崩れると、合併症につながる可能性がある」と述べている。
Pastore氏らは、泌尿器科分野のロボット支援手術を受けた70人の患者を、手術の2~4日後に退院し、自宅でハイテクTシャツを着用してバイタルサインのモニタリングを受ける群(35人、Tシャツ群)と、通常通り、手術の3~5日後に退院する対照群(35人)に割り付けた。Tシャツ群は、2週間にわたり、1日に3回、1回当たり3時間(7~10時、14~17時、19~22時)、Tシャツを着用するよう求められた。
その結果、予定されていたフォローアップの前に病院に戻る必要があった対象者の割合は、対照群で26%に上ったのに対しTシャツ群では6%に過ぎなかった。また、Tシャツ群では、5人で心臓に関連する症状の発症が早期に検出され、これにより、早期の診断と治療が可能になった。Tシャツ群での遠隔モニタリング期間は平均13.5日で、90%以上の患者がこの方法によるモニタリングに満足を示した。
こうした結果を受けてPastore氏は、「イタリアでは通常、泌尿器科分野でのロボット支援手術後に退院するまでには少なくとも72時間かかる。しかし、センサー搭載のTシャツを導入することで、患者がより早期に退院し、快適で落ち着ける自宅で過ごすことで生活の質(QOL)が向上する上に、他の患者のための病床を増やすこともできる」と述べている。
ルーベン大学(ベルギー)大学病院の泌尿器科医でEAU会議議長のMaarten Albersen氏は、「このセンサー搭載のTシャツは、泌尿器科領域のロボット支援手術を受けた患者の自宅での回復を助ける有望な遠隔モニタリング技術であるようだ」とEAUのニュースリリースの中で語っている。同氏は、「この試験はまだ初期段階だが、患者がウェアラブルデバイスを抵抗なく受け入れ、リアルタイムで合併症を検出し、不必要な再入院を減らすことができた点で、非常に興味深い知見だ」とコメントしている。
一方でAlbersen氏は、「この試験は、小規模で予備的なものに過ぎない。この種のウェアラブルデバイスを臨床現場で採用するには、早期退院をサポートするデバイスの能力やアウトカムと費用対効果への実際の影響に関するより多くのデータが必要だ」とも述べている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2025年3月25日)
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(参考情報)
Press Release
https://eaucongress.uroweb.org/eau25-press-release-sensory-t-shirt-collects-patient-data-and-enables-shorter-postoperative-hospital-stay/
構成/DIME編集部
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