
帝国データバンクは、ケーキ店など「洋菓子店」の倒産発生状況について調査・分析を行なった。
ケーキ原価は5年で最大1.3倍に
ケーキ店など「街の洋菓子店」の倒産が急増している。2024年度(2024年4月~25年3月)に発生した「洋菓子店」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は51件発生した。前年度(32件)から1.6倍増加し、これまで最も多かった2019年度(44件)を上回って最多を更新した。
洋菓子店の倒産増加が続いた2019年度までは、コンビニなどの安価で手軽なスイーツとの競争激化に耐えられず、市場からの退出を余儀なくされたケースが多かった。当時に比べると、2024年度は原材料や包装資材の仕入価格が高騰しているほか、販売スタッフなどの人手不足、大手チェーンや近隣他店との競争激化などが加わり、厳しい経営環境が続いている。なかでも、原材料として使用量の多い小麦粉のほか、鶏卵や砂糖、バターといった食材に加え、円安の影響を受けたナッツやフルーツ、カカオ不足で高値が続くチョコレートなど、主要な菓子原材料の価格が軒並み高騰したことが大きな打撃となった。
実際に、一般的なショートケーキ(ホール・18cm丸型)にかかる原材料コストについて、帝国データバンクが店頭価格データなどを基準に「ケーキ原価」として算出した結果、ショートケーキの原価はイチゴなどの価格高騰を背景に5年間で2割超上昇した。チョコレートケーキの原価も、カカオ不足の影響を受けて5年間で約3割上昇するなど、ケーキの製造にかかわるコストの上昇傾向が顕著となっている。
こうしたコスト増加分をケーキの販売価格に転嫁できず、利益を確保できない洋菓子店の割合が増えている。2024年度の洋菓子店における損益状況をみると約3割が赤字となったほか、「減益」を含めた「業績悪化」の割合は約6割にのぼり、過去最大だった2020年度(70.3%)以来の水準となった。安価で高品質、充実した品ぞろえの「コンビニスイーツ」や、店舗拡大を進める大手洋菓子チェーン店との競争があるなか、スケールメリットによるコスト低減余地に乏しく、昨今の物価高で価格に敏感な消費者による買い控えを懸念して値上げが難しくなっていることも、洋菓子店の倒産が急増した要因になったとみられる。
このような状況の下、シーズン商品や新商品の投入頻度を高めることで来店を促し、ケーキ1個あたりの利益率を引き上げ、物価高を乗り切ろうとする洋菓子店も増えている。ただ、カカオなどの原材料価格は引き続き高騰が見込まれるなど経営環境は厳しく、2025年度も倒産増加が続く可能性がある。
※集計期間:2000年4月1日~2025年3月31日まで/集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産
構成/立原尚子