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国内の化粧品メーカーが苦戦する中、3年連続で2ケタ成長を続けるロレアルのビューティーテック戦略

2025.04.08

3年連続2ケタ成長を続ける日本ロレアル(代表ジャン-ピエール・シャリトン氏)が2025年度の事業戦略を発表した。インバウンドが落ち着き、国内化粧品メーカーが苦戦する中、ほぼ独り勝ちとも言える好調の理由はどこにあるのだろう。また、美容のカテゴリーを広げ、テックカンパニーへと大幅に舵を切った背景や、最新鋭の注目美容ガジェットなどを取材してみた。

継続して好調な3つの理由

世界最大の化粧品メーカーであるフランスのロレアルグループの日本法人が日本ロレアルである。1963年に小林コーセーと日仏合弁でサロン向け商品を展開した後、着実に日本市場に浸透してきた。

日本ロレアルのシャリトン氏も「日本でのビジネスは60年以上にわたり、消費者の皆さんと密接な関係をつくってきました」と話すとおり、日本市場に力を入れてきた。

日本ロレアル株式会社 代表取締役社長 ジャン-ピエール・シャリトン氏

特に美容皮膚発想から生まれたコスメの「タカミ」と、「shu uemura(シュウウエムラ)」は日本にブランド本部を置き、日本から世界展開をしている。しっかりした日本拠点が事業の成長を下支えした。シャリトン氏は成長を支えた3つの事業の柱があると言う。

1)イノベーション、2)ディストリビューション、3)コミュニケーションである。

1つ目のイノベーションについて、同社は2004年につくば市の基礎研究所を川崎市のかながわサイエンスパークに統合。フランス本国以外では初めて、基礎から開発まであらゆる過程での研究開発を行う拠点を設立させた。「日本で発想を得たイノベーションは数多くあり、だからこそ日本受けする」とシャリトン氏は分析している。

あらゆるニーズに対応できる多様なブランド展開

2つ目に挙げたディストリビューションでは、オンラインとオフラインの両方をバランスよく展開している。

ロレアルは傘下のブランドを含めるとグローバルで37、日本で20のブランド名で商品展開しているが、それぞれのブランドに対応したディストリビューションを展開している。

「Amazonではタカミ、ランコム、ケラスターゼが人気商品です。戦略的パートナーである楽天グループとも様々な取り組みを行っております。オフラインでもオンラインでも躍進を遂げており、プラダのブティックは日本の皆さんにとても人気がありますし、皮膚科医と共同開発したドクターズコスメも人気で、オフラインでも成長を牽引しています」とシャリトン氏。

さらに3つ目のコミュニケーションは、成長の重要な要素としており特に多くのインフルエンサーがSNSなどでブランドを後押ししている。

インバウンド・メンズ・ベビブーマー世代がターゲット

こうした現状を背景に、2025年も継続して成長を実現させるために、新ブランドを強化したり、イノベーションを取り入れ、ターゲットを拡大するなどの課題を上げている。

今後、さらに注力していくターゲットは、

1)インバウンド、 2)メンズケア、 3)ベビーブーマー世代

の三つの軸で考えており、ロレアルリュクス事業本部 事業本部長都築誠也氏が詳しく説明してくれた。

1)インバウンド対応

日本の市場でのインバウンド需要は強い。ロレアルリュクスは、ロレアルが展開するコスメを中心としたブランドを多く擁するが、これらのブランドは中国では圧倒的シェアを持ち、知名度は高い。インバウンドで来日する中国人の中には、日本でしか買えない商品や、百貨店に行き、カウンターできめ細やかなサービスを受け、納得して買うといった日本ならではの体験を求める人も多い。

為替の影響で、本国より安く購入できるため、日本生まれのシュウ ウエムラなどが好調である。

また、韓国ブランドの3CEは中国や東南アジア、そして日本の若い女性にも大人気で。韓流メイク・ブームが続いている。

2)メンズの強化

「メンズ部門は市場成長速度が速い。過去5年の成長率は、女性用よりも10倍速い」と都築氏。メンズ向けで特に目立っているのが、プラダ ビューティーで人気のビューティーリップ。色の無い口紅で、男性でも違和感なく使うことができるし、マスクにも色が付かない。

男女どちらのジェンダーでも使えるブランドも人気で、特にイソップ、メゾン マルジェラ フレグランスなどのフレグランスは購入者が女性と男性ほぼ同数となっている。こうしたジェンダーフリー商品は今後のロレアル リュクスの成長を支える商品となりそう。

さらにオンラインでの販売に強い点もメンズへの期待を後押ししている。男性用化粧品の販売タイミングは、季節で動く女性向けに対し、クリスマス、父の日などギフトが主体で、オンラインで商品が動く。こうしたメンズの需要にも細かく対応していく。

また、女性のメインユーザーが3~40歳代なのに対し、男性は2~30歳代と若く、若い世代からブランドスイッチせずに、ずっと使い続ける傾向がある。年齢を重ねてもずっと愛顧してくれる若い男性に訴求できるブランド力があるのもロレアルの強みの一つでもある。

3)ベビーブーマー世代への対応

年間売り上げが圧倒的に多いのがベビーブーマー世代。非ブーマーに比べると年間金額が2.3倍で、ブランド定着率は1.8倍と、スイッチせず、定着している。中でもランコムアプソリュシリーズのブーマー世代は6割と高い。

「この世代が特徴的に何を求めるのかを、私たちは理解しています。多くのデータをもっているので、満足度は今後もさらに最大化させていく予定です」(都築氏)。

生成AIなどビューティーテックを武器に展開

これまで美容というと、クリームやシャンプーなどのイメージだったが、サプリメントや美容家電も新たな美容カテゴリーに入ってきた。この領域における日本の市場規模は約1兆円とも言われている。ロレアルでも髪と環境に配慮したヘアドライヤーなど、画期的な美容家電を発表している。

ロレアルの最大の武器は、世界中の人々の肌情報などを集積した14500TBもの膨大なデータである。このデータを使って顧客の多様化するニーズに対応できるよう、生成AIを使ったパーソナライズビューティーアドバイスを展開する。こうしたテクノロジーを美容に展開する、ロレアルのビューティーテック戦略が注目されてきた。

なぜ今、テクノロジーなのか、ロレアルリサーチ&イノベーション北アジアゾーンデジタルトランスフォーメーション兼カラーサイエンス統括アレクサンダー・ジャスパース氏は「ロレアルはテクノロジーの力を活かすことで、世界中の型が一人一人に固有の自分らしい美を表現できるような世界を目指す、という理念を持って事業を展開しています」と言う。

「多様性を認め、その人個人の美しさを大切にすること。そのためにはテクノロジーの力が重要になってきます。テクノロジーを使う理由はその点にあり、その人にあった美しさの表現のためにテクノロジーが必要なのです」(ジャスパース氏)。

今回4つのテクノロジーを駆使したビューティーデバイスを紹介してくれたが、ジャスパース氏が消費者として個人的に商品を選ぶとしたら、ドライヤーを選ぶと言う。

「ロレアルプロフェッショナルの『AIRLIGHT PRO(エアライトプロ)』はドライヤーの概念を越えた商品で、世界で初めて赤外線を使って髪を乾かす仕組みです。技術の進化によって実現された商品の一つで、特に将来的な展開が期待されています。なぜならば、将来、40%の人がカーリーヘアとなる予定で、そのために対応できる商品だからです。

もちろん、今回紹介する他の3つも素晴らしい商品で、ビューティーテックカンパニーとして未来の美を送出し、最先端の技術を活用することで、世界中の消費者に美の体験を提供していくでしょう」と語ってくれた。

こうした革新的技術開発に関連して、日本ロレアルは3月21日、STATION Ai株式会社(ステーショ ン・エーアイ、本社名古屋市、代表取締役社長兼CEO佐橋宏隆氏)が運営する日本最大規模のオープンイノベーション拠点「STATION Ai」(愛知県名古屋市)と協力して、デジタル技術とAIの活用により、美のビジネスに革新を起こすスタートアップを募集するピッチイベント「ロレアル Big Bang ビューティーテックイノベーション日本選考 2025」を実施する。

「リサーチ&イノベーション部門」と「マーケティングイノベーション部門」で、新規事業の創出をサポートする。選考には日本ロレアルの責任者に加え、楽天グループやサイバーエージェントなどが参加する。選ばれた企業はロレアルとの共同出資により、事業展開も可能だ。

2020年に中国で始まったBig Bangプロジェクトは、すでに2240社以上の企業が参加し、60以上のプロジェクトがインキュベーションに成功している。この第1回Big Bangの参加企業との共同開発で生まれた製品がランコムの「レネルジーナノ-リサーフェーサー400 ブースター」。細かいニードル(針)を活用した美容液ブースターで、独自のナノチップ技術搭載した美容液ブースターで、ダウンタイムなしで施術を受けた後のような効果を実感できる。

ランコムの「HAPTA(ハプタ)」は世界初の手持ち型コンピューター制御メイクアップアプリケーターで、細かい手の動きが困難な人々でも、リップスティックが使えるアシストアドバイスである。

世界中で5,000万人もの人々が手の動きに困難を抱え、世界人口の15%は何らかの障がいと共に生活している。「私たちはすべての人が美を享受できる世界を目指すという使命を持っています。ランコムはこのHAPTAによりイノベーションの最前線を走り続けています。2025年秋に日本で50台をNPOに寄贈します」(ロレアルリサーチ&イノベーション北アジアゾーンオーグメンテッド・ビューティー総括ダニエル・イエ氏)。

ケラスターゼの「K-SCAN(K-スキャン)」は頭皮と髪の健康状態をスキャン、診断、追跡するAI搭載スマートカメラ。ケラスターゼは創業当初から、髪と頭皮の診断を向上させるテクノロジーツールを開発してきたが、サロンで使用する診断用カメラを進化させるとともに、アルゴリズムを活用した初のオンライン診断も導入している。「これまでも頭皮の状態を見ることができるデバイスは発売されていましたが、実際にそのデータを使ってどうすればよいのか、ビューティーアドバイスまで可能にしたのが、この製品の特長のひとつです」(ダニエル・イエ氏)と言う。

「美容の常識を塗り替えるテクノロジー」とダニエル・イエ氏

「人口減少でも成長戦略があります。日本の人口は減っても、美容人口は増えています」と、日本ロレアル経営戦略・マーケティング開発本部チーフコンシューマーオフィサー前田ジェームス氏が語ったとおり、美容は今後も注目される消費カテゴリーのひとつ。

独り勝ちの戦略手法は、業界を問わず応用できそうだ。

取材・文/柿川鮎子

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