
ドイツのエンジニアリングプラスチックメーカー「igus」(=イグス)が、ほぼ100%プラスチックの自転車を開発。欧州現地では昨年末に発売され、好評を博しているという。
現地価格1243ユーロというから、日本円でおよそ20万円前後。昨今自転車界隈のプライスタグで言えば、決して高価ではない。いや「あり」な数字と言えるだろう。
そんなイグスのプラスチック製自転車「イグスバイク」発表試乗会へ『@DIME』編集部は向かった。
世界初のほぼ100%プラスチック製自転車
「今回の発表試乗会は創業60周年を記念して企画された「イグスワールドツアー」の一貫です。昨年10月にドイツのケルンを出発したのち、シンガポール、ベトナム、台湾、インドを同一車体で故障もなく走行してきました。日本では総距離147kmを走り、英国のゴールまで1年間で6000kmを走破する予定です!」と語るのはイグス(株)の広報部長である浦川博之さんだ。
イグスバイクワールドツアーのブログ(各国の動画が視聴可能)
igus:bike – igus Blog
イグスと自転車界とのかかわりは深い。すでに80年代にはサビに強くメンテナンスフリーとなるポリマーベアリングの採用実績を有し、現在では自転車のあちこちに、実は、アタリマエに使われている。金属ベアリングやゴムブッシュなどの代替部品となることが多い。
で、イグスバイクで気になるのは、現地欧州で売れているのか、ですよね?
「昨年10月の発売から1800台程度の販売実績があります。日本での発売は……すみません、未定です」と浦川さんも恐縮至極。
な~んだ。と言うなかれ。欲しければ買うことはできるのだ。ただし個人輸入となりかなり煩雑な手続きが要る。現実的には「待った!」の状態と言えようか。
まあそんな「待った!」がありつつも、見た目にもインパクト大な「イグスバイク」である。試乗機会も限られることであるから、さっそくレポートにうつろう!
タイヤはコンチネンタル、サドルはエルゴンで、試乗会でお借りしたヘルメットはアブスと、さすがのジャーマン・コーディネート。
まず、デカいです(笑) ドイツのイグスがオランダの自転車メーカー「MTRL(=マテリアル)」と組んで作った、しかも売るために作ったのだから、アチラの体格に順ずるサイズであるのは当然。そしてノンアシストのシティサイクルとしては17kgとやや重い……いや、大きい割に軽いと言った方が正しいか。フレームが中空(モナカ構造ね)であるがゆえだろう。
車体はデカいけどギア比は適切とみえて、ペダリングは軽快。たぶん皆さんが思うよりずっと安定しているし、ヒラヒラ走れる。さすが自転車大国オランダの設計だ。ただし、もし日本で乗ることを考えれば。ハンドル幅は60センチを超えているから歩道走行はご法度。また国土の高低差が小さいオランダなら無問題でも、坂の多い日本ではつらいだろう。変速機か、電動アシストが欲しくなる。
さて、イグスが自転車を手掛けたきっかけだが、それは今から20年以上前のこと。同社のフランク・プラーゼ社長がビーチで錆びた自転車を見て「自転車全体がプラ製であれば錆びることなくロングライフだろう」と気づいたことだったという。
イグスバイクにおけるプラスチック使用率は実際には約92%で、タイヤ、ワイヤー類、ネジ類、ブレーキディスクなどには異素材を使用。そしてプラスチック使用率の約半数は廃プラ材の再利用だ。
イグスバイクは部品メーカーが自社PRのために作った数台の試作品ではない。すでに1800台以上を販売しており、カラバリも5色から選べる。これは商品なのだ。
イグスバイクではシェアサービスへの検討、ユーザーからの要望にある「電動アシスト化」「変速機の搭載」などを含め、オランダで開発を進めているという。ただいずれにしろ、現段階で日本への正規導入の予定はない。惜しい!
開発中のフルカーボンフレーム。電動アシストユニットの搭載を前提とした設計だという。
イグスバイクは「世界初のほぼ100%プラスチック製自転車」である。しかし同時に、プラスチックの可能性の塊そのものでもある。21世紀は環境の世紀、そしてプラスチックの新世紀。そんな未来を先取りしているかも知れないイグスバイクは、間違いなく「これってあり!」な存在なのだ。
〇イグスバイク海外販売サイト
Recycled plastic bikes for sustainable mobility | The bike
取材・文/前田賢紀