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「イニシエーション」とは?覚えておきたい言葉の意味とビジネスシーンでの使い方

2026.01.02

近年、主にビジネスシーンにおいて、「イニシエーション(initiation)」という言葉が使われるようになってきた。意味としては、一般的には、組織やグループに加わる際の儀式や適応プロセスを指すことが多い。

本記事では、ビジネスパーソン向けに、このイニシエーションについて詳しく解説する。

特に経営者や管理職、人事担当者など、人材を採用・管理する立場の方に押さえていただきたい内容である。

イニシエーション(initiation)とは

■イニシエーション(initiation)の意味

イニシエーションという言葉は、英語の「initiation」に由来している。直訳では、「入門」「開始」「加入」「儀礼」といった意味であるが、一般的には、ある人物が特定の組織やグループに新しく加わる際の儀式や適応プロセスを指すことが多い。

とはいえ、宗教や医療、コンピュータなど、さまざまな分野で使われている言葉であり、分野や文脈によって意味が異なるため注意が必要だ(詳細は次のセクションで解説する)。

最近では、特にビジネスの分野で、このイニシエーションという言葉が使われるようになってきている。その背景にあるのは、終身雇用制度の崩壊だ。

近年、「一つの企業に勤め続ける」という価値観が薄れつつあり、転職をする人も増えている。今の時代、複数の企業を経験することは決して珍しいことではない。当然のことながら、労働市場において転職活動が活発化すると、企業において新しい人材を採用する機会が増え、イニシエーションも増えることになる。

さらにいえば、現役寿命の延びにより労働市場における年齢層が広がっており、また異業種への転職も一般的になりつつある。結果として、企業に、さまざまな世代の人材、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が集まるようになり、そういう意味でもイニシエーションの重要性が増してきている。

そして、企業側が立場に立てば、労働人口の減少により、これまで以上に人材の確保が難しくなってくる。そのため、転職者の早期離職を防ぐためのイニシエーション施策の実施が、企業にとって重要な課題になってくると考えられる。

■イニシエーション(initiation)の種類

繰り返しになるが、イニシエーションという言葉は、分野や文脈によって意味が異なるため注意が必要だ。ここで、宗教、社会、医療、コンピュータ、ビジネス、それぞれにおけるイニシエーションの意味を解説する。

・宗教におけるイニシエーション

宗教におけるイニシエーションは、ある人物が特定の宗教の信徒になる際の儀式を指す。具体的には、キリスト教における「洗礼」や仏教における「受戒」などがこれに該当する。

・社会におけるイニシエーション

社会におけるイニシエーションは、ある人物が社会的なグループや階層に新しく加わる際のプロセスを指す。具体的には、次のようなものが挙げられる。

  • 成人式を迎え、大人の一員となる
  • 資格を取得し、専門職に就く
  • 結婚し、新しい家族の一員となる

・医療におけるイニシエーション

医療におけるイニシエーションは、さまざまな意味で使われており、例えば、特定の病気に罹患した段階や、新しく治療を開始するプロセスなどを指す。

・コンピュータにおけるイニシエーション

コンピュータにおけるイニシエーションも、さまざまな意味で使われており、例えば、システムの初期化やアプリケーション起動時の処理(データロードやリソース確保など)などを指す。

・ビジネスにおけるイニシエーション

ビジネスにおけるイニシエーションは、新しい職場環境に適応するために必要なプロセスを指す。具体的には、次のようなものが挙げられる。

  • 新卒採用で会社に入社する
  • 転職により未経験業界の会社に入社する
  • はじめて海外勤務をスタートする

ビジネスにおけるイニシエーション(initiation)

■ビジネスにおけるイニシエーションの種類

アメリカの産業心理学者、D・フェルドマンは、ビジネスにおけるイニシエーションにおいて、「グループイニシエーション」と「タスクイニシエーション」の2つの概念を提唱した。

・グループイニシエーション

グループイニシエーションとは、ある人物が新しく組織に加わる際に、既存のメンバーとの人間関係を築き、受け入れられるまでのプロセスを指す。

・タスクイニシエーション

タスクイニシエーションとは、ある人物が新しく組織に加わったあとに、自分なりの成果を出し、既存のメンバーから認められるまでのプロセスを指す。

前述したグループイニシエーションと密接に関連しており、まずはグループイニシエーションで心理的安全性や信頼関係を構築し、その上でタスクイニシエーションを実現させるのが、理想的な流れとされる。

■ビジネスにおけるイニシエーションのメリット・デメリット

ビジネスにおけるイニシエーションには、次のようなメリット・デメリットがある。

・イニシエーションのメリット

組織に加わる側は、新しい環境で求められる知識やスキルを習得することにより、自己成長や自己肯定感の向上を期待できる。一方で、受け入れる側は、一緒に働く仲間が増えたり、新しい価値観やアイデアを取り入れることができたりすることで、組織全体の活性化を期待できる。

・イニシエーションのデメリット

イニシエーションでは、組織に加わる本人の努力だけで成り立つわけではなく、加わる側・受け入れる側双方の取り組みによって成り立つ。

イニシエーションがスムーズにいかない場合、受け入れる側がフォローする必要があるため、業務の負担が増えることもある。また、リアリティショックが引き起こされることもある(詳細は次のセクションで解説する)。

リアリティショックとイニシエーション

■リアリティショックとは

リアリティショックとは、新しく組織に加わることになった人物が、事前に抱いていた理想と実際に直面する現実とのギャップによって心理的な衝撃を受けることを指す。

例えば、次のようなケースが挙げられる。

  • 社風が想像と異なり、居心地が悪い
  • 部署内の同僚と年齢差が大きく、馴染めない
  • 残業や休日出勤が多く、健康不安を感じる
  • 自分の知識やスキルを活かせる仕事が回ってこない

あまりにも大きなリアリティショックは、モチベーションの低下やメンタルの不調などを招き、早期離職につながる恐れもある。

■リアリティショックとイニシエーション

企業側は、リアリティショックを回避するため、あるいは緩和するためのイニシエーション施策を実施することが求められる。具体的な施策としては、例えば次のようなものが挙げられる。

  • 歓迎会を開催し、社内のさまざまな人と関係をもてるようにする
  • その人の適性を見極め、その適性にあった仕事を割り当てる
  • 指導役としてコミュニケーション能力が高い社員や、年齢の近い社員を配置する
  • 採用活動の段階で、企業の実態に即した情報を開示する
  • 採用ホームページでは、職場の雰囲気が伝わるよう、写真や動画を積極的に活用する

まとめ

イニシエーションは、一般的には、ある人物が特定の組織やグループに新しく加わる際の儀式や適応プロセスを指す。しかし、分野や文脈によって意味が異なるため、その点には注意しよう。

イニシエーションの概念は、近年、ビジネスの分野で注目されている。企業が新しい人材を受け入れ、スムーズに適応できるようサポートすることは、早期離職の防止や組織の活性化を図る上で重要な要素である。

文/松下一輝(まつしたいっき)
大学院修了後、ITエンジニアとして大手システムインテグレータに入社。通信キャリアを顧客とする部署に配属され、業務システムやWebアプリケーションなどの設計・開発業務に従事する。その後、文章を書く仕事に興味を持ち、ライターに転身。ITやサイエンス、ビジネスといった分野の記事を執筆している。

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