
本記事では、パートの雇用保険の基本を解説する。加入条件やメリット、デメリット、失業保険の受給についても確認していこう。
目次
パートで働く人にとって、身近でありながらも、複雑で理解しにくい雇用保険。「自分は加入できるのか」「加入にどのようなメリットがあるのか」などの疑問を持つ人もいるだろう。
本記事では、パートで働く人が雇用保険に加入するための条件から、加入することで得られるメリットやデメリット、さらには失業保険の受給条件や手続きの流れまでをわかりやすく解説する。
雇用保険とは
まずは、雇用保険の役割について解説する。あわせて、雇用保険と社会保険の関係性も見ていこう。
■雇用保険の役割
雇用保険は、労働者が失業した場合や、職業訓練を受ける場合、育児のために休業する場合などに給付を受けられる制度。失業時の生活を支えるだけでなく、育休中の給付や再就職支援など、労働者の生活と雇用の安定を目的とした総合的なサポートを提供する。
これにより、労働者は安心して働くことができ、万が一の際には再就職に向けた準備が行える。
■雇用保険と社会保険との違い
雇用保険は、広義で社会保険という大きな枠組みの中に含まれる制度の一つだ。社会保険は、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つを指し、このうち雇用保険と労災保険はあわせて「労働保険」と呼ぶこともある。
雇用保険は社会保険の一部でありながら、労働者の失業や再就職を支援する点で、医療や年金を保障する他の社会保険とは異なり、雇用に特化した役割を担っている。
パートの雇用保険加入条件
パートで働いていても、一定の条件を満たせば雇用保険に加入でき、失業した場合などに給付を受けられる。加入条件は、働く時間帯や年齢などに関係はなく、主に以下の2つとなる。対象外となるケースも確認しておこう。
■1週間の所定労働時間が20時間以上
条件の一つに、「1週間の所定労働時間が20時間以上」が挙げられる。所定労働時間とは雇用契約であらかじめ定められた労働時間を指し、残業や休日出勤などは含まれない。
例え繁忙期などで一時的に週20時間を超えて働いたとしても、契約上の労働時間が20時間未満であれば、雇用保険の加入条件を満たさないことになる。
日々の労働時間が変動しやすいパート勤務の場合、実際の労働時間ではなく、雇用契約上の労働時間を確認することが大切だ。
■31日以上の雇用期間が見込まれる
もう一つの条件に、「31日以上の雇用期間が見込まれる」がある。雇用期間に着目する際に重要なのは、雇用契約の内容だけでなく、実際の雇用状況も踏まえて判断される点だ。
雇用契約で定められた期間だけでなく、契約更新の可能性や過去の雇用実績も考慮される。
例えば、雇用期間に定めがなくても、契約更新の規定がある場合や、過去に31日以上の雇用実績があれば、条件を満たすことになる。
また、当初31日未満の契約であっても、途中で契約が延長されれば、その時点から雇用保険の対象となることを覚えておこう。
■条件を満たしていても対象外となるケース
パートやアルバイトであっても、雇用保険の加入条件を満たしていれば基本的に加入できるが、いくつかの例外が存在する。
まず、学生は原則として加入できない。ただし、卒業見込みや休学中、定時制の学校に通っている人は例外的に加入可能。また、国や地方自治体の事業で働いており、離職後の給付が雇用保険の給付内容を超える場合は対象外となる。
さらに、特定の漁船乗組員も対象外となる場合がある。加えて、前職で雇用保険の喪失手続きが完了していない場合は、新しい職場で加入できない。これらのケースに該当する人は、事前に確認し、必要な手続きを行わなければならない。
■パートで週20時間未満勤務の場合も適用対象に?
政府は、2028年10月1日をめどに、週20時間未満の労働者も雇用保険の対象とする方向で検討を進めている。背景には、少子高齢化に伴う労働力不足や、多様化する働き方への対応がある。
現在、雇用保険は週20時間以上の労働者が対象だが、改正により週10時間以上でも加入可能となる見込みだ。
これにより、短時間労働者も失業給付や育児休業給付などを受けられるようになり、より多くの人が安心して働ける環境が整備されることが期待されている。
パートで雇用保険に加入するメリットとデメリット
雇用保険加入について、メリットとデメリットの両面から見ていこう。
■雇用保険に加入するメリット
パートで雇用保険に加入する最大のメリットは、万が一離職した場合に失業等給付を受けられること。経済的な心配をせずに次の仕事を探したり、職業訓練を受けたりできるようになる。また、再就職手当や教育訓練給付金など、再就職を支援する制度も利用できる。
さらに、育児休業や介護休業を取得した場合にも、給付金を受け取れる。これらの給付は、パートで働く人にとって、経済的な安定とキャリアアップの機会を提供する重要なセーフティーネットとなるだろう。
■雇用保険に加入するデメリット
パートで雇用保険に加入するデメリットとして、給与から保険料が天引きされるため、手取り額がわずかに減少することが挙げられる。
しかし、この保険料は失業時の給付や再就職支援、育児・介護休業給付など、将来的な安心に繋がるものであり、長期的に見ればそのメリットは大きいと言える。
保険料の負担割合は労働者よりも事業主の方が大きいため、実際の負担額は想像よりも少ないだろう。万が一の時のことを考えれば、雇用保険加入によるデメリットはほとんどないと言える。