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失業率が3.8%でも不安?Z世代の雇用不安が限界に近づくワケ

2025.03.31

職場での世代間ギャップはいつの時代にもあったが、現在の年長者世代と、「Z世代」の仕事に対する価値観には大きな乖離がある。Z世代にとって「はたらく」とは何か。アメリカ在住のZ世代・竹田ダニエルが記す仕事と働き方についての時事エッセイ。

低失業率にもかかわらず高まるZ世代の雇用不安

米国における失業率は3.8%と歴史的に低水準を維持しているにもかかわらず、Z世代の多くは雇用に対して不安を抱えている。この矛盾は、採用市場の停滞、住宅価格の高騰、そして不均衡な資産分配が要因となっている。

総合情報サービスBloombergの「Z世代は苛立ちを募らせているが、それには理由がある」と題した記事では、資産を持つ中高年層が経済的に安定する一方で、若年層が財務的な基盤を築くことに苦しんでいる現状が浮き彫りにされている。

米国企業の解雇率は低水準にあるものの、新規採用の停滞が深刻化している。求人・転職動向調査(Job Openings and Labor Turnover Survey)によると、採用率は過去10年で最低水準にあり、リーマン・ショック後の「雇用なき回復期」に匹敵する状況にあるという。このため、新卒者や転職希望者にとっては安定した職を得ることが難しく感じられ、若者の経済的不安を一層増幅させている。SNSにおいても、仕事をもらえること自体が祝福されるべきことであり、「この経済状況の中で」仕事を選んでいる場合ではない、という空気感が蔓延している。

高騰する住宅価格や生活費のせいで溜まるストレス

住宅価格の高騰もZ世代の財務的なストレスを悪化させる要因となっている。

住宅ローン金利は約7%に達し、十分な貯蓄や家族の支援がなければ、住宅購入はほぼ不可能な状況だ。例えば、物価や賃貸価格が上昇しているサンフランシスコでは住宅の中央値が140万ドル(約2億円)に達しており、住宅ローンを組むには年収40万ドル(約6000万円)以上が必要とされる。

このため、多くの若者は高騰する家賃を支払いながら生活するか、親元にとどまらざるを得ない。米国のピュー研究所(Pew Research Center)によると、18歳から24歳の若年層のうち57%が親と同居していると言われており、この数値は過去30年間で最高となっている(axios.com)。

特に都市部においては生活費が賃金の上昇を上回るペースで高騰しており、Z世代の経済的不安をさらに深刻化させている。インフレによって貯蓄や投資がしづらくなるなど、多くの若者がフルタイムで働いていても生活費を切り詰めたり、外食などの必要不可欠なもの以外での出費を抑えるなど、生活水準の豊かさに行き詰まりを感じている。

民間経済調査機関The Conference Boardの消費者信頼感指数は2022年半ば以来の最低水準に達した。またニューヨーク連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of New York)の調査では、若年層の間で「今後3か月以内に最低限の債務返済ができなくなる」と予測する割合がコロナ禍以来の最高水準にあることが明らかになった。

これらの経済的不安は精神的なストレスとも相まって、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼす。特に教育やジャーナリズム、政府関連の仕事など、トランプ政権の影響で大幅な人員削減や公的資金の削減などによって、業界全体が不安に陥っている。自分の周りでも、そのような突然の変化によって影響を受けている人も多い。

最終的に、失業率が実質低水準であることは、経済的自立に対してさまざまなハンデを抱える若者たちにとって、大きな安心材料とはならない。採用市場の改善、住宅価格の適正化、そしてあらゆる業界における賃金のインフレ対応が進まなければ、Z世代の経済的不安は今後も続くだろう。

雇用自体が不安定だと感じることによって、将来像も描きづらいし、安定した生活を送ることも難しい。「最近の若者は仕事に忠実じゃない」「最近の若者は恋愛をしない」などと言われているが、そもそも未来に対するビジョンが持てない間は、リターンを想定できないようなリスクは取りづらいのだ。

文/竹田ダニエル

1997年生まれ、カリフォルニア出身、在住。「音楽と社会」を結びつける活動を行ない、日本と海外のアーティストをつなげるエージェントとしても活躍する。2022年11月には、文芸誌『群像』での連載をまとめた初の著書『世界と私のAto Z』(講談社)を上梓。そのほか、多くのメディアで執筆している。

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