
今年の4月から、「高年齢者雇用安定法」が改正され、すべての企業で「65歳までの雇用確保」が完全義務化となる。人生100年時代と言われる近年、この法改正を受けて65歳以降の高年齢者の働き手は今後増えていくことが予測される。
実際、65歳以降も働きたいと考えている60歳以上の人はどのくらいいるのだろうか。また、65歳以上の人と一緒に働くことについて、他の世代の人はどのように思っているのだろうか?
プロフェッショナルバンクのHR研究所はこのほど、現在働いている20~59歳の男女および、定年後(または勤務先が65歳定年)も働いている60~64歳の男女を対象に「高年齢者雇用」に関する意識調査を実施し、1,014人から有効回答を得た。
なお本記事では、20~59歳の男女を「現役世代」、60~64歳の男女を「シニア世代」と定義する。
60歳~64歳の雇用形態は役員クラスが約1割、正規雇用者が約4割、非正規雇用者が約5割という分布に
今回の調査に回答した定年後(または勤務先が65歳定年)も働いている60~64歳のシニア世代の現在の雇用形態は、「非正規雇用社員(再雇用)でフルタイムで働いている(34.0%)」が最多となった。以下、「正規雇用社員で非管理職として働いている(22.6%)」「正規雇用社員で管理職(部長・課長など)として働いている(17.5%)」「非正規雇用社員(再雇用)でパートタイムで働いている(14.7%)」「役員として働いている(11.0%)」と続いた。
「正規雇用社員」の割合が40.1%、「非正規雇用社員」の割合が48.7%となった。また、「役員」として従事するシニア世代は全体の1割に該当している。
「65歳以降も働きたい」と考えるシニア世代は約7割。理由は経済的な問題だけではなく健康維持や生きがいを感じるため
60~64歳のシニア世代に、65歳以降も働く意欲があるか質問したところ、「非常に意欲がある(27.5%)」「やや意欲がある(40.1%)」「あまり意欲がない(23.0%)」「まったく意欲がない(9.4%)」という結果になった。
「非常に意欲がある(27.5%)」「やや意欲がある(40.1%)」を合わせると、約7割のシニア世代が65歳以降も働く意欲があるとわかった。
また、「非常に意欲がある」「やや意欲がある」と回答したシニア世代に、65歳以降も働きたい理由について聞いたところ、「生活費を補うため(74.7%)」が最も多く、次いで「生活リズムを整え、健康を維持するため(51.2%)」「働くことに生きがいや楽しさを感じるため(34.3%)」となった。
多くのシニア世代が65歳を超えても就労を続けたいと考えており、経済的な理由が最も大きな要因となっているが、健康維持や生きがいを感じるために働きたいと考える方も多いことが示された。
シニア世代は65歳以降も「現在と同様に働きたい」が最多。約8割が現在の職場での継続就労を希望
引き続き、65歳以降の働く意欲について「非常に意欲がある」「やや意欲がある」と回答したシニア世代に、65歳以降の希望する働き方について聞いた。
最も多い回答は「現在と同様に働きたい(56.1%)」で、次いで「労働時間や出勤日数を減らして働きたい(41.0%)」となった。約6割の人が現状維持を望む一方で、負担を軽減した働き方を求める声も一定数見られた。
また、65歳以降も現在の職場で働き続けたいか聞いたところ、「はい(77.9%)」「いいえ(22.1%)」という回答結果になった。約8割のシニア世代が、現在の職場での継続就労を希望していることが判明した。
両世代ともに6割超が高年齢者の経営・管理職登用を前向きに捉える
ここからは、65歳以上の方の経営・管理職登用について、全対象者(現役世代とシニア世代)に聞いた。
65歳以上の人が経営者や管理職として携わることについてどう思うか聞いたところ、20~59歳の現役世代は「非常に良いと思う(11.1%)」「ある程度良いと思う(50.7%)」「あまり良くないと思う(28.3%)」「まったく良くないと思う(9.9%)」と回答した。
一方、60~64歳のシニア世代の回答は、「非常に良いと思う(11.2%)」「ある程度良いと思う(52.7%)」「あまり良くないと思う(25.7%)」「まったく良くないと思う(10.4%)」となった。
65歳以上の人が経営者や管理職として携わることについて、現役世代の約6割が前向きな回答であり、一定の支持があることが示された。また、シニア世代は当事者として組織に貢献する立場からも約6割が前向きに捉えていることがうかがえる。
65歳以上の人と働くメリットは「豊富な経験や知識の共有」が圧倒的多数で、現役世代とシニア世代で共通している
現役世代とシニア世代の双方に、65歳以上の人と働くメリットについて聞いたところ、20~59歳の現役世代は「豊富な経験と知識の共有(65.0%)」が最も多く、以下「異なる視点や考え方による職場の多様化(31.9%)」「即戦力として社内のリソース不足の解消(18.8%)」と続く。
そして、60~64歳のシニア世代も、「豊富な経験と知識の共有(67.4%)」が最も多く、次いで「異なる視点や考え方による職場の多様化(35.8%)」「即戦力として社内のリソース不足の解消(26.5%)」となった。経験や知識の共有が大きなメリットとしてどちらの世代からも認識されているようだ。
65歳以上の人と働く際の課題は「体力・健康面への配慮」がトップで、シニア世代の過半数、現役世代の4割超を占める
次に、65歳以上の人と働く際の課題について、現役世代とシニア世代の双方に聞いた。
20~59歳の現役世代の回答は上位4つの回答が約4割で拮抗した。「体力や健康面に配慮する必要がある(42.0%)」が最も多く、以下「社内の若い世代とうまくコミュニケーションがとれない可能性がある(39.8%)」「仕事の進め方に違いが出る可能性がある(36.6%)」「最新技術への対応においてサポートする必要がある(36.6%)」と続いた。
60~64歳のシニア世代の回答は「体力や健康面に配慮する必要がある(54.8%)」が最多で唯一過半数を超え、次いで「仕事の進め方に違いが出る可能性がある(31.4%)」「社内の若い世代とうまくコミュニケーションがとれない可能性がある(31.0%)」「最新技術への対応においてサポートする必要がある(31.0%)」と約3割で推移した。
体力・健康面への配慮が最も重要な課題であることがわかった。世代間のコミュニケーションについては、シニア世代よりも現役世代のほうが課題に感じている割合が多く、世代間の差が浮き彫りとなった。