仮説とは、ある現象を合理的に説明するために仮に立てる説のことです。 仮説は数学や経済学などの学問でも用いられますが、ビジネスにおいても仮説を立てることは重要とされています。 なぜビジネスで仮説を立てることが必要なのか、また、どのように仮説を立てればよいのかわかりやすくまとめました。ぜひご覧ください。
目次
仮説とは?押さえておきたい種類もご紹介
仮説とは、ある現象を合理的に説明するために仮に立てる説のことです。実験や観察などによって立てた仮説を検証し、事実と合致することが明らかになれば定説となります。
たとえば、テーブルの上に置いた写真立てが、朝起きるといつも倒れているとします。「猫が夜中にテーブルの上で遊び、写真立てを倒している」と仮説を立て、検証するためにテーブルをモニターで一晩中観察したとしましょう。
実際に猫がテーブルの上で遊び、写真立てを倒していれば、仮説は定説になります。しかし、モニター映像から、パートナーがテーブルの上に朝刊を置く際に、写真立てを引っかけて倒していることが判明するかもしれません。仮説が成立しないケースがあることが証明されれば、仮説は必ずしも真ではないと判断できます。
参考:デジタル大辞泉

■帰無仮説とは?
帰無仮説(きむかせつ)とは、仮説を検証するために立てる仮説です。通常は、否定されることを期待して立てられます。
たとえば、新しい投資戦略を構築した後で、「従来の投資戦略と比べ、期待できる収益率に差がない」という帰無仮説を立てたとしましょう。
一定期間で得られた投資成果を比較し、新しい戦略に基づいた投資のほうがより多くの収益を上げていることを証明できれば帰無仮説は棄却され、新しい戦略の有効性を示せます。
■対立仮説とは?
対立仮説とは、帰無仮説に対応するように立てられる仮説のことで、実証したい内容を含んでいることが特徴です。帰無仮説は否定することで証明したい内容が真であることを示しますが、対立仮説では肯定することで証明したい内容が真であることを示します。
たとえば、新しい投資戦略を構築した後で、「従来の投資戦略と比べ、期待できる収益率が大きい」という対立仮説を立てたとしましょう。
一定期間で得られた投資成果を比較し、新しい戦略に基づいた投資のほうがより多くの収益を上げていることを証明できれば、対立仮説は正しいと判断でき、新しい戦略の有効性を示せます。
仮説の検証においては、帰無仮説が棄却されると対立仮説が採択されます。対立仮説は実証したい内容に直接関わるため、研究の目的に沿い、なおかつ検証可能な形であることが必要です。
■理論仮説とは?
理論仮説とは、理論的に打ち立てた仮説のことです。理論は直接検証できないため、理論仮説も直接的な検証は難しく、結論は「推測」として導き出されることになります。
たとえば、ある調査により、Aという結論を導き出したいとしましょう。Aという結果を明らかにするために解決すべき疑問点を分析し、その疑問点の答えを推測したものを理論仮説として打ち立てます。
■作業仮説とは?
作業仮説とは、データにより検証可能な仮説のことです。理論仮説はあくまでも理論上の仮説であり、直接検証できないため、作業仮説を用いて理論仮説が真であることを証明します。
ただし、作業仮説が真と証明されたとしても、必ずしも理論仮説が真とはいえません。理論仮説から作業仮説に置き換える過程に間違いが生じることや、1つの作業仮説に複数の理論仮説が挙げられるケースも想定されるため、慎重に判断することが必要です。
一方、真と証明できないときも注意が必要です。理論仮説が偽であることが原因の可能性もありますが、理論仮説から作業仮説を導き出す過程に間違いが生じている可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
ビジネスで仮説が重要な理由

仮説が重視されるのは、研究の分野だけではありません。ビジネスにおいても仮説を立てること、検証することが重要です。
一般的に、仮説とは「もっとも確からしいと考えられる説」を指します。しかし、ビジネスでは仮説をより広く捉え、「命題に対する仮の答え」や「真・偽が決まっていないことに関する仮の説」と定義することが多いです。
ビジネスで打ち立てた仮説も、研究と同様、検証する必要があります。検証により真偽が証明された説は、クライアントへのアプローチや業務手順、意思決定などに活用でき、より効率的かつ生産的なビジネスの実現に寄与します。
■意思決定の精度と説得力が高まるから
検証した仮説に基づいて意思決定すれば、期待した成果を得やすくなります。また、意思決定の根拠が明確になるため、社内協議のときだけでなく取引先やクライアントへ説明する際にも説得力が高まり、同意を得やすくなるでしょう。
■するべきことや手順が明確化するから
仮説を導き出し、検証する際に、ビジネス上の課題や早急に取り組むことなどが明確になります。効率的な手順を発見でき、業務上の無駄を省けるようになるでしょう。
■ビジネスのスピードが加速するから
着手する業務や手順が明確化すれば、ビジネスのスピードが加速します。インターネット化が進み、地域による優越性が希薄化した現代社会において、いち早く対応することは成功を左右する重要な要素です。
無駄のない動きを実現するためにも、仮説に基づいた効率的な業務が求められます。ビジネスの課題を抽出し、課題から的確かつ妥当な仮説を導くことは、競争力強化のためにも不可欠な過程といえるでしょう。
ビジネスで仮説を立てる手順

業務効率を高めるためにも、経験や習慣ではなく仮説に基づいた理論的な行動が求められます。以下の手順で仮説を立て、効率的なビジネスを実践していきましょう。
- 課題を抽出する
- 定義を明確にする
- 他社の状況を分析する
- 仮説を立てる・検証する
なお、仮説を立てる過程にあまり時間を使うのでは、ビジネスの効率性が低下します。手順を理解し、時間をかけずに仮説立案まで進めてください。
■1.課題を抽出する
まずは、解決すべき課題を抽出します。ただし、課題があまりにも広範囲かつ漠然としているときは、検証難易度が高まり、業務に支障が生じることもあるため注意が必要です。
たとえば、「製品Aの売上が少ない」という課題では検証すべきポイントが多すぎ、かえって問題を複雑にしてしまいます。売上が少ない原因に注目し、「販売サイトの閲覧数が少ない」「来店者が少ない」「購入単価が低い」と範囲を狭めるようにしてください。
■2.定義を明確にする
課題の定義を明確にします。たとえば、「売上を伸ばしたい」といった課題では具体性がなく、目標を設定できません。「店舗での売上を月500万円に増やす」のように、どの分野の売上をどの程度に引き上げたいのか明確に定義します。
■3.他社の状況を分析する
課題に関する競合他社の状況を分析することで、具体的な目標を設定します。たとえば、店舗数や事業規模が類似した企業と比較すると、目標値を設定しやすくなります。
■4.仮説を立てる・検証する
課題と定義、他社の状況から、仮説を立てます。仮説検証により期待するような結果を得られないときは、課題や定義を見直すことからやり直しましょう。
仮説思考を持とう

ビジネスで課題を発見したときは、仮説立案と検証を習慣的に実施する「仮説思考」を持つことが大切です。意思決定の精度が高まるだけでなく、効率性の高いビジネスを実現しやすくなります。
構成/林 泉







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