
COOという言葉の意味がよくわからず、困っている方もいるのではないでしょうか。COOとは、企業における最高執行責任者を指し、業務執行を統括することが主な仕事です。今回は、COOの定義やCEOやCFOなどの似たような肩書との違い、主な役割などを解説します。
目次
COO(Chief Operating Officer)とは、企業の業務執行を統括する最高執行責任者のことです。
CEOが経営戦略の策定を担うのに対し、COOはその戦略を現場で実行に移し、日々の業務を管理します。本記事では、COOの役割やCEOとの違い、必要とされるスキル、なり方までをわかりやすく解説します。
COOとは
COO(Chief Operating Officer)とは、企業の業務執行を統括する最高執行責任者のことです。主にアメリカの企業で導入されている役職で、日本では部門長や事業責任者に近い職務を担うことが一般的です。COOは策定された戦略を現場で実行し、組織の運営を円滑に進める役割を果たします。
COOの役職が生まれた背景には、企業の透明性向上を目的としたコーポレートガバナンスの強化があります。不正や不祥事のリスクを低減するためには、経営と業務執行の責任を分離する必要があり、健全な企業経営を実現するために導入されました。日本でも2000年以降、COOを導入する企業は増加傾向にあります。
参考:デジタル大辞泉
COOとほかの役職との違い
企業の業務執行を統括するCOO以外にも、企業にはCEOやCFO、CTOなど、組織運営には異なる役割を担うさまざまな役職が関与しています。
それぞれの役割や権限には明確な違いがあるため、混同しないように注意しましょう。ここでは、COOとそれぞれの役職との違いを解説します。
■CEOとの違い
CEOとは「Chief Executive Officer」の略であり、企業の最高経営責任者です。つまり、企業の経営方針を決定する役職であり、COOはCEOが策定した戦略が問題なく運用されるように内部のオペレーションを統制し、日々の業務が効率的に進行するよう管理します。
COOは、CEOによって策定された経営方針を深く理解することが不可欠です。しかし、CEOとCOOは、基本的にお互いの役割には干渉しません。
参考:デジタル大辞泉
■CFOとの違い
CFOとは「Chief Financial Officer」の略であり、企業の最高財務責任者です。CFOは企業の財務管理を担い、資金調達や経費管理、財務戦略の策定を主導する「企業の金庫番」ともいえる役割を担います。
COOとCFOはいずれもCEOをサポートする重要な役割ですが、COOは業務の執行、CFOは財務管理とそれぞれ異なる側面から企業を支えています。
参考:デジタル大辞泉
■CLOとの違い
CLOとは「Chief Legal Officer」の略であり、企業の最高法務責任者のことです。外資系企業ではゼネラルカウンセル(GC)と呼ばれることもあり、法的リスクの管理やコンプライアンスの強化、契約関連業務などを担います。法務担当者とは異なり、経営に近い立場で企業戦略に関与する点が特徴です。
COOが企業の業務執行を統括し、組織運営や事業成長を支える役割を担うのに対し、CLOは法律面から企業経営を支援します。
参考:デジタル大辞泉
■CTOとの違い
CTOとは「Chief Technology Officer」の略で、企業の最高技術責任者のことです。CTOは技術戦略の策定や最新技術の導入、研究開発の方向性を決定する役割を担い、企業の競争力を高めるための技術面の意思決定を行います。
一方で、COOは企業の業務執行全体を統括する役職であり、組織の運営や業務の効率化に重点を置いています。CTOが技術分野に特化しているのに対し、COOは事業全体の運営を監督し、技術部門を含む各部署が適切に機能するよう調整する立場にあることが両者の違いです。
日本企業では、CTOが単なる技術部門の責任者として位置づけられることもありますが、本来は企業の技術戦略を経営レベルで推進する重要な役職です。
■CMOとの違い
CMOとは「Chief Marketing Officer」の略であり、企業の最高マーケティング責任者のことです。CMOとの違いは、業務の範囲と責任領域にあるといえるでしょう。
COOは企業全体の業務執行を統括する役割を担う一方、CMOはマーケティング分野の最高責任者として、ブランド戦略や市場開拓、広告・プロモーションの最適化に特化しています。
■執行役員や代表執行役との違い
執行役員とは、会社の業務執行を担当する役員のことです。COOと業務領域が重なる部分はありますが、COOが企業全体の業務執行を統括するのに対し、執行役員は特定の分野やプロジェクトの責任を担うケースが多く、一般的に役割の範囲が限定的です。
また、COOと代表執行役では、法的な位置づけに違いがあります。代表執行役は、日本の会社法に基づいて定められた役職であり、株主や取締役会から正式な委任を受けて業務を遂行します。一方で、COOは会社法上の明確な定義がなく、その職務内容や権限は企業ごとに異なる点が特徴です。
COOの役割
COOが担う具体的な役割は、主に以下の3点です。
- 企業の業務執行
- 事業の課題分析・方針立案
- CEOのサポート
それぞれの内容を解説します。
■企業の業務執行
COOは、CEOが策定した経営戦略に基づき、計画的に業務を遂行する責任を負うポジションです。
業務の進捗を把握し、組織全体が円滑に機能するようマネジメントを行いながら、業務執行を統括する役割を担います。
■事業の課題分析・方針立案
企業の業務を円滑に進めるために欠かせない、事業の現状分析や課題の特定、業務の進行計画の立案も、COOが担う役割です。
CEOが策定した経営戦略を実行に移す際に市場環境や業界の変化を把握し、事業構造の変動が生じている場合は、その要因や今後の影響を分析することが求められます。
■CEOのサポート
COOは、CEOが掲げた経営方針を現場が実行するためのサポート役を担います。CEOが決定した戦略をすべての従業員が理解し、業務に反映できるよう発信することもCOOの重要な仕事です。
また、CEOと現場をつなぐ架け橋として、組織全体が同じ方向性で動けるよう調整も行います。
一般的に、CEOは長期的な視点で経営を考え、現場は短期的な目標を重視する傾向があるといえるでしょう。そのため、COOは両者の意見が食い違わないように現場の声を拾いながらも、経営方針に沿った形で組織全体をマネジメントする必要があります。
業務執行を通じてCEOの責務を支え、企業運営の安定化と成長を促進するのがCOOの重要な役割です。
COOの特徴
COOという役職の主な特徴としては、「業務範囲は流動的」と「CEOとは異なる視点を持つ」の2点が挙げられます。それぞれの内容を確認しましょう。
■業務範囲は流動的
COOは業務執行を統括する役職であるものの、その業務内容や担当範囲は、企業が手掛ける事業内容や経営のフェーズによって変動します。
そのため、COOの役割は特定されているわけではなく、流動的な側面が強いといえるでしょう。
■CEOとは異なる視点を持つ
企業のCOOとCEOは、それぞれが異なる視点を持っている傾向にあります。
CEOは、企業における最高経営責任者という立場上、数年先を見越した中長期的な視点で物事を捉えます。一方COOは、実際に戦略を実行する立場であることから、どちらかというと短期的な時間軸で動く傾向があるといえるでしょう。