
オリエンテーションとは、新しい環境に適応するための説明会のことをいいます。企業では、新入社員が自社理解を深め、ビジネスマナーの基本を習得することを目的として行われるのが一般的です。
目次
オリエンテーションという言葉は聞いたことがあっても、どのようなものなのか具体的には分からない人もいるでしょう。言葉を正しく理解して、ビジネスシーンに役立てましょう。
オリエンテーションとは?
まず、オリエンテーションの意味や、類似する用語との違いについて解説します。
■新しい環境に適応するための説明会や研修
オリエンテーションとは、もともと『方向付け』『適応』『順応』を意味する英語の『orientation』を由来とする言葉です。ビジネスの場では、新たな環境に適応するための説明会・研修として実施されています。
特に、新入社員がスムーズに組織になじみ、仕事を始められるようにすることを目的として実施されるのが一般的です。また、企業だけでなく、大学などの教育機関では新入生が学生生活に早く適応できるよう、履修登録の方法や施設利用案内などを行います。
医療現場では、看護職員の入職時や患者への手術前説明などにも、オリエンテーションという言葉が使われています。単なる説明会ではなく、新しい環境で主体的に行動するための方向性を示す重要な場といえるでしょう。
■オリエンテーションとガイダンスの違い
『オリエンテーション』と『ガイダンス』は、似た意味で使われることが多いのですが、実は明確な違いがあります。ガイダンスは『手引き』『案内』といった意味合いが強く、全く知識がない人でも理解できるような初歩的な内容を伝えることが中心です。
例えば、機械の操作方法を教えるための音声案内なども、ガイダンスに当たります。一方、オリエンテーションはある程度の基礎知識を持った人に対し、『なぜそうするのか』という背景を含めた説明になるのが特徴です。
知識・ノウハウの説明にフォーカスしているのがガイダンス、意識や感情にも働きかけるのがオリエンテーションといえます。
オリエンテーションの目的とは?
オリエンテーションは、受ける側だけでなく、実施する側にとっても重要な意味を持つ場です。ここでは、主に新入社員向けに実施される場合の目的を三つ挙げて解説します。
■企業文化や経営理念の理解
企業文化や経営理念の理解は、新入社員が会社の一員としてなじむための第一歩です。企業には独自の歴史や価値観、目指すべき方向性があります。これらを理解することで、社員は自分の業務が会社全体のミッションにどう貢献するのか、把握できるようになるでしょう。
日々の業務においても、企業価値を意識した行動ができるようになり、業務効率や生産性の向上につながります。単なる表面的な情報ではなく、文化が形成された背景や現在のビジネスにどう反映されているかまでを理解し、企業になじんでもらうことを目的としています。
■社員と企業の意識統一
経営理念や方針を共有し、社員と企業の意識を統一することも重要な目的の一つです。組織全体のパフォーマンスを向上させるためには、メンバーの意識を統一し、共通の目標に向かって協力することが欠かせません。
全員が同じゴールを掲げ、一致団結して努力することで、目標達成への道がより近づくからです。さらに、企業への愛着・帰属意識が高まることで社員のエンゲージメントが向上し、モチベーションアップ・離職率の低下といった効果も期待できます。
オリエンテーションは、単なる情報提供の場ではなく、社員が『企業の一員である』という自覚を持つための大切な機会といえるでしょう。
■人間関係構築
新しい環境での人間関係を、構築しやすくするという目的もあります。新入社員同士が早い段階で交流することにより、横のつながりが形成されやすくなるでしょう。
また、アイスブレイクや自己紹介を通じて上司・先輩社員と交流することで、組織へのなじみやすさが格段に向上します。職場での人間関係は、仕事を円滑に進めるための重要な要素の一つです。
自分から積極的に声をかけるのが苦手な人にとっても、同期や先輩社員と交流できる場になるでしょう。年齢・キャリアの異なる社員間の、コミュニケーションハードルを下げる効果も期待できます。
企業で実施されるオリエンテーションの種類
企業で実施されるオリエンテーションには、新入社員向け以外にもさまざまな種類があります。ここでは、企業内で行われる代表的なオリエンテーションの種類について見ていきましょう。
■中途採用者向けのオリエンテーション
中途採用者向けのオリエンテーションは、すでに社会人経験のある人が新しい環境に適応するために実施されるものです。組織によって文化・経営理念は異なるため、中途採用者にも転職先の企業を理解する場が必要です。
前職での業務内容と大きく変わる場合はもちろん、同じ職種だったとしても企業によって仕事の手順や習慣は異なります。具体的な業務の流れや社内用語を共有し、人間関係構築をサポートしながら、中途採用者に一日でも早く即戦力として活躍してもらうことが目的です。
■部署異動・昇進時のオリエンテーション
部署異動や昇進時にも、オリエンテーションを実施することがあります。部署異動は、当事者にとって心理的な負担となることが少なくありません。本人が納得できない異動の場合、ストレスの蓄積が休職・離職につながるなど、業務に支障を来す可能性もあります。
新しい部署に一日も早くなじめるよう、オリエンテーションによって異動に伴う不安を解消することが大切です。異動先の業務内容全般の説明やメンバーへの紹介などのほか、前任者からの引き継ぎが含まれることもあります。
適切なオリエンテーションによって、異動後も社員が自身のキャリアパスを明確に理解し、モチベーションを保ちながら新しい職場で活躍できるでしょう。
新入社員オリエンテーションで学ぶ基本的な内容
新入社員オリエンテーションでは、企業に関する知識や、社会人としての基本的なマナーを身に付けます。以下、具体的に学ぶべき内容を見ていきましょう。
■会社概要や就業規則
多くの場合、まず会社概要や就業規則などについての説明から始まります。企業文化を理解し、スムーズに職場に溶け込んでもらうことが目的です。
具体的には、企業理念や歴史、社内の組織構成といった会社の全体像が紹介されます。各部署が担う役割を知ることで、自分の業務が会社全体の中でどのような位置付けなのか理解しやすくなるでしょう。
また、会社の就業規則についても説明されます。企業の一員としての自覚を持ち、社内ルールを守りながら行動できるようになることが求められます。
■コンプライアンスに関する理解
昨今では、コンプライアンス教育に力を入れる企業が増えています。コンプライアンスの順守が徹底されないことにより、信頼度が大きく低下するなど、企業にとって大きな損失につながる可能性があるためです。
SNSの不適切な使用による情報漏えいや、企業イメージの悪化といった問題も少なくありません。法令や社内規定に関する知識だけでなく、違反した場合に起こり得るリスクについても説明されるでしょう。
また、ハラスメントに関する知識を身に付けておくことも重要とされています。被害を受けた場合の相談窓口のほか、ハラスメントに当たる行為や、加害者にならないための心構えなどについても理解しておくことが必要です。
■基本的なビジネスマナー
あいさつの仕方といった基礎的なことから、正しい敬語の使い方・電話での応対方法・名刺交換のマナーなど、日常業務に必要なビジネスマナーを学びます。
社会人として必要な基本的なマナーを身に付けることは、ビジネスの現場でスムーズに活躍するための第一歩です。実践的なスキルとして定着させるために、ペアワークやロールプレイングなどを実施する企業もあるでしょう。
ビジネスマナーの基本は、相手を尊重する気持ちです。その気持ちが伝わることで仕事が円滑に進み、信頼関係構築にもつながります。