
働き方改革法案の施行により、運送業界のドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されたことで生じた「2024年問題」。加えて人手不足や燃料費高騰など、厳しい状況が続く「道路貨物運送業」の倒産発生状況について、帝国データバンクでは独自の調査を実施。
結果をグラフにまとめて発表した。本稿では同社リリースをベースに、その概要をお伝えする。
道路貨物運送業の倒産、リーマン・ショック時に迫る水準へ
2025年2月の道路貨物運送業者の倒産は20件となり、2024年度(11カ月累計)では328件と、すでに前年度(317件)を超えた。
このままのペースで推移すれば、通年では360件前後の水準が見込まれ、リーマン・ショック時(2008年度)の371件に迫る、過去2番目の高水準となりそうだ。
背景には、「人手不足」「燃料価格の上昇」がある。人手不足を要因とした倒産(人手不足倒産)は、2024年度(11か月累計、全業種)で判明した308件のうち、道路貨物運送業者は38件で全体の12.3%を占めた。
また、物価高を要因とした倒産(物価高倒産)は、2024年度(同)で判明した841件のうち、道路貨物運送業者は116件で13.8%を占め、そのうち9割が、「燃料価格の上昇」を要因としていた。人手不足・物価高(燃料高)のダブルパンチが深刻化していることがわかる。
2025年1月16日からのガソリン補助金縮小もあって、2月25日時点での軽油小売価格は164.0円と極めて高い水準にあり、先行きとしては厳しい環境が続く。
リーマン・ショック時も現在も軽油価格の高騰によるコストアップと収益悪化は共通している。一方で、当時は急速な景気減速を背景として荷動きの停滞が生じ受注難が発生していたが、現在ではアフターコロナでの消費回復もあって、一定の物流ニーズがありながらも、人手不足から受注が確保できていないという違いがある。
長期トレンドでみた労働人口減に加え、ドライバーの高齢化、人手不足が続く他業界との人材確保競争などもあるため、これらの課題解消に向けた賃上げなど、さらなるコストアップ要因も加わり、今後も道路貨物運送業の倒産は高水準で推移する可能性が高い。
荷主と一体となった運送料金そのものの引き上げや、再委託構造の改善による価格転嫁率の上昇など、抜本的な対策が待ったなしの状況と言えるだろう。
調査概要
集計期間/2025年2月28日まで
集計対象/負債1000万円以上、法的整理による倒産
関連情報
https://www.tdb.co.jp/index.html
構成/清水眞希