
「現代人は無料に慣れ過ぎている」というのは、筆者の知り合いのとあるライターが言った言葉である。
確かに、我々現代人は毎日のように「無料の何か」を使っている。そうしたことが、製品の付加価値を実感する機会を奪っているのは一つの事実である。また、「完全無料」を謳いながら最終的には課金を要求するアプリやソフトウェアも少なくない現実も横たわっている。
つまり、我々は「良心的な無料製品」を探す努力をしなければならないということだ。この記事ではまさに偽りのない完全無料でありながら、ユーザーの期待を裏切らないであろうパフォーマンスを発揮する『Sonar』というソフトウェアについて解説していきたい。
雑音を消してくれるサウンド調整ソフトウェア『Sonar』
筆者自身、YouTubeでゲーム実況配信チャンネルを運営しているが、ライブ配信の際の雑音は非常に厄介だ。
これを消してくれるAIプラットフォームというものが、既に存在する。
たとえば、地域によっては上空を旅客機や軍用機がしばしば飛来する……ということがある。筆者は生まれこそ静岡県静岡市だが、育ちは神奈川県相模原市(いわゆる“里帰り出産”の子)。上空を飛ぶアメリカ軍の戦闘機の姿は、0歳から18歳までの間に何度も見てきた。そのジェット戦闘機の爆音の中で、果たしてライブ配信ができるのか……という問題である。
オーディオメーカーSteelSeriesが開発したサウンド調整ソフトウェアSonarを使えば、そうした問題も解決するという
他社製品でも問題なく使える!
Sonarは、より厳密に言えばSteelSeries GGというPC向けアプリの一機能である。
このSteelSeries GGのダウンロードは無料、そしてSonarを含めた諸機能の利用も永久無料という太っ腹具合で、しかも誰でも簡単に扱えるよう設計されている。ダウンロードからPCへのプラグインも非常に容易だ。
Sonarを開いてみると、「マスター」「ゲーミング」「チャット」「メディア」「AUX端子」「マイク」という項目に分かれていることが確認できるが、ここでは「マイク」のみの解説に徹したい。これを開いて下に少しスクロールすると「CLEARCAST AI NOISE CANCELLATION」という機能が出てくる。このつまみを一番右、つまりエフェクトを最大にしてみる。
なお、Sonarと紐付けするマイクは筆者がいつも使っているノートPCにデフォルト装備されている内蔵マイク。そう、このSonarはSteelSeriesの製品がなくても利用できる仕組みなのだ。
もちろん、製品によって反りが合う・合わないは存在するようで、またSteelSeriesの製品を使えばより良好なパフォーマンスを期待できることは確か。それでもノートPCにデフォルトのマイクでも何とかなる点は、大いに評価するべきだ!
ドライヤーの音も消去
マイクにSonarをプラグインした状態で、まずはテスト収録。このテストもSonarのプラットフォームからそのまま実施できる。
適当なペットボトルがたまたま身近に、それも2本あったので、両手にとって楽器のように激しく鳴らしてみる。同時に下手な歌をマイクにぶつけてみる。上述のCLEARCAST AI NOISE CANCELLATIONのツマミは、もちろん一番右にしている状態だ。
録音したものを聴いてみると、筆者の声だけが収録されているではないか。つまり、ペットボトルがガンガン打ち鳴らされる音はそっくりそのまま消えているということである。これは手拍子でも、机を激しく叩く音でも、ドライヤーの「ブウォォォォォ――――ン」というでも同様の結果だった。
このSonarは、PCに直接されるものだからYouTubeでのライブ配信のみならず、Zoom等のビデオ会議プラットフォームでもそのまま用いることができる。キーボードの打鍵音の消去は、Sonarにとっては簡単な仕事である。
AIプラットフォームは今やあらゆる作業や機能に転用されているが、その中でもノイズキャンセリング機能はAIの力を借りながら、近年特に目覚ましいパフォーマンス向上を遂げている。ほんの数年前までのノイズキャンセリング機能はあくまでも「何dB軽減」という範囲に留まっていたが、今やノイズそのものを完全に掻き消してしまうソフトウェアが出てきたのだ。
迫るAIスマホの足音
が、このSonarと同様のことは近いうちにスマホがしてくれるようになるのでは……と筆者は考えている。
いや、「考えている」どころか絶対にそうなるだろうと確信している。
AIのオンデバイス処理ができるようになったスマホの普及により、わざわざ外からソフトウェアをダウンロードしなくともスマホにデフォルト搭載された機能であらゆることができるようになっている。たとえば、ストリートミュージシャンを撮影した動画にギャラリーの声が入っているとする。その声だけを消去して、ストリートミュージシャンの歌声だけを動画に残す機能をデフォルト搭載したスマホが既に存在するのだ。
インプット、アウトプット両方のノイズを除去してくれるスマホは、間もなく登場するだろう。いや、単に愚鈍な筆者がチェックしていないだけで、そうした製品がもう存在するかもしれない。
AIの力を得た我々の文明は、恐るべき勢いで進化しようとしている。
文/澤田真一
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