
営業の現場では、ノウハウやスキルは営業担当者個人に蓄積されるため、組織全体で活用されにくいという課題がある。しかし、生成AIを活用することで、トップセールスの知識や経験を体系的に整理し、社内ナレッジとして蓄積、勝ちパターンとしてチーム全体で共有することが可能となる。今回は、ChatGPTを活用し、営業ノウハウを効率的にナレッジ化する方法について紹介する。
個人のノウハウを社内ナレッジとして蓄積
セールスパーソンは日々、顧客とのやり取りを通じて多くの知識を得ている。それらの情報はメールやチャット、商談中の会話などに散在しており、他者はトップセールスがどのようなトークや対応をしているのかを知ることは難しい。しかし、「ChatGPT最強の仕事術」の著者である池田朋弘氏によると、ChatGPTを活用し、過去の商談データや営業記録をQ&A形式に変換することで、社内ナレッジとして共有・蓄積できるようになるという。
■トップセールスの営業活動の記録を収集
まずはナレッジの元となる、トップセールスの営業活動の記録を収集する。これらは顧客と交わしているメールやチャット、商談中の動画などが対象となる。
■ChatGPTを使いQ&A形式に変換
ChatGPTに、「以下の内容から、Q&Aを作成してください」と、顧客とのやり取りをコピー・ペーストする。商談中の動画の場合は、商談内容を書き起こし、その内容を記載する。(書き起こしの際もAIツールを活用することを推奨)
■重複する情報を精査
重複する情報がある場合は統合する。この際、タグ付けやカテゴリ分類を行うことで、検索性も向上する。
大量の営業データを課題やケースごとに分類
大量の営業データから収集したナレッジを分類することで、課題やケースに合わせて活用しやすくなる。これにより、顧客との商談の場だけでなく、研修やカスタマーサポートなどへの横展開も可能になる。
<分類例>
● 顧客の反応別の分類:「価格交渉が難航したケース」「競合との比較を求められたケース」など、営業現場でよくある課題ごとに事例を整理。顧客の声やフィードバックをカテゴリ別に整理することで、改善点も素早く把握できる。
● 成功・失敗パターンの分析:「この対応で成約率が上がった」「この提案は失注につながりやすい」といったデータを蓄積し、改善策を考える材料に。
● 研修資料として活用:新人セールスパーソンの研修やロールプレイングのための資料やカスタマーサポートの部署への横展開も可能。
複数人で数週間かかる作業が、AIを活用すれば数日で完了
従来は個人に溜まっていたノウハウや勝ちパターンを体系化し、チームで共有することで、新人セールスパーソンでも短期間でスキルを習得できる環境を構築できる。チームとしては、人材育成業務に充てていた時間や労力の軽減ができるほか、顧客対応や決断におけるスピードと質の向上なども期待できる。
これまで、同様のデータ収集から体系化までを行う場合、ベテランのコンサルタントや営業経験者が多くの労力をかけて取り組む必要があった。しかし、AIを活用することで、データ収集後の処理はほぼ自動的に作業が完了できる。AIの力をうまく活用し、人にしかできないことに時間や労力を使うことで、これまで成し得なかった事にも手が届くのではないか。
【取材協力】
(株)Workstyle Evolution代表取締役 / 株式会社メンバーズ顧問
「ChatGPT最強の仕事術」(3.5万部突破)著者
リモートワーク研究所運営
https://www.youtube.com/channel/UCpUQnk6MaY4o3NdgJmv10cw
池田朋弘氏
文 / Kikka